OET(Occupational English Test)は、医療従事者向けの英語試験として世界的に認められていますが、 医師版のOETは看護師版とは異なる専門的な内容が出題されます。 特にWritingでは紹介状(Referral Letter)、Speakingでは医師としてのロールプレイが求められ、医師特有の臨床英語力が試されます。
この記事では、OET医師版の試験内容と、働きながら3〜6ヶ月でBグレードを目指す場合の一般的な学習の進め方を解説します(2026年3月時点の情報に基づきます)。
この記事の概要
- OET医師版の特徴(看護師版との違い)
- セクション別対策:Listening / Reading / Writing(紹介状)/ Speaking(医師ロールプレイ)
- Writing紹介状の書き方テンプレート
- IELTS vs OET どちらを選ぶべきか
- 働きながら3〜6ヶ月の学習スケジュール

OETの基礎知識や受験資格についてはOETとは?試験の概要・受験方法・活用できる国を解説をご確認ください。
この記事のもくじ
OET医師版の特徴:看護師版との違い
OETは12の医療職種ごとに試験内容がカスタマイズされています。ListeningとReadingは全職種共通ですが、 WritingとSpeakingは医師専用の内容が出題されます。
| セクション | 医師版 | 看護師版 |
|---|---|---|
| Listening | 共通(全職種同一) | 共通(全職種同一) |
| Reading | 共通(全職種同一) | 共通(全職種同一) |
| Writing | 紹介状(Referral Letter)が中心。他の医師宛に患者情報・診断・治療歴を伝える | 退院サマリーや転科連絡など看護の場面 |
| Speaking | 医師として患者に説明・Bad news伝達・治療計画の提示 | 看護師として患者ケアの説明・退院指導 |
つまり、WritingとSpeakingでは医師としての臨床判断力とコミュニケーション力が評価されます。看護師向けの教材だけでは準備として不十分です。
OET全体の概要についてはOET試験の勉強法とおすすめ参考書で詳しく解説しています。
セクション別対策:Listening
Listeningは全職種共通で、 Part A(Consultation Extracts)とPart B(Short Workplace Extracts)、Part C(Presentation Extracts)の3パートで構成されます。
医師が注意すべきポイント
- Part A:医療者と患者の会話を聞きながらノートを取る。キーワード(症状・検査結果・投薬名)を正確にスペルすることが重要
- Part B:短い会話から情報を抽出。選択肢の言い換え(paraphrase)を聞き取る力が必要
- Part C:講義やプレゼン形式。医学的内容の理解力が問われるが、医師には馴染みのある形式
対策のコツ:日常的に英語の医学ポッドキャスト(BMJ Talk Medicine、NEJM This Week等)を聞く習慣をつけましょう。 Part Cは医師にとって最もスコアを取りやすいセクションです。
セクション別対策:Reading
Readingも全職種共通で、 Part A(Expedited Reading Task)、Part B(Careful Reading of Short Texts)、Part C(Reading Comprehension of 2 Long Texts)の3パートです。
医師が注意すべきポイント
- Part A:4つの短いテキストから素早く情報を抽出するスキミング力が必要。時間配分が最重要
- Part B:6つの短い医療テキストに対する多肢選択。正確な読解力が求められる
- Part C:長文読解2題。医学論文の読解に慣れている医師にはスコアを取りやすい
対策のコツ:Part Aの時間配分が勝負の分かれ目です。 15分間で20問に解答するため、テキスト全体を読むのではなく、設問のキーワードを先に確認してからスキャンする練習を繰り返しましょう。
セクション別対策:Writing(紹介状の書き方)
医師のOET Writingでは、紹介状(Referral Letter)の作成が中心です。 患者のケースノートが提示され、それをもとに他の医師や専門家への紹介状を180〜200語で作成します。
紹介状の基本構造テンプレート
以下が紹介状の基本的な構造です。
- Opening:紹介の目的と患者の基本情報(”I am writing to refer Mr/Ms [Name], a [age]-year-old [gender], for your assessment and management of…”)
- Background:関連する病歴・既往歴・アレルギー
- Current presentation:現在の症状・検査結果・診断
- Treatment to date:これまでの治療内容と反応
- Request:紹介先に求めること(”I would appreciate your expert opinion on…” / “I would be grateful if you could…”)
- Closing:感謝と連絡先
紹介状(Referral Letter)作成の5つのポイント
- 全情報を詰め込まない:ケースノートの情報を取捨選択し、紹介先に必要な情報のみを記載する
- 適切な時制を使う:過去の病歴は過去形、現在の状態は現在形、今後の依頼は未来形・丁寧表現
- 語数を守る:180〜200語が目安。少なすぎても多すぎても減点
- 段落分けを論理的に:上記の構造に沿った段落構成で、読みやすさを確保する
- フォーマルな表現を使う:“I am writing to refer” “I would appreciate” “Please do not hesitate to contact me” 等
セクション別対策:Speaking(医師ロールプレイ)
OET Speakingは2つのロールプレイで構成され、各約5分間です。医師版では、医師として患者と面談する場面が設定されます。
医師版で頻出するロールプレイのパターン
- 患者への診断結果の説明:検査結果を分かりやすく伝え、今後の治療方針を提示する
- Bad newsの伝達:がん・慢性疾患の告知。感情面への配慮が評価される
- 治療計画の提示と合意形成:手術・投薬の選択肢を説明し、患者と一緒に決める(shared decision making)
- 生活指導・患者教育:禁煙・食事療法・運動指導を患者のライフスタイルに合わせて提案する
- 不安や懸念への対応:治療への不安・副作用への懸念に共感的に対応する
ロールプレイで意識したいポイント
OET Speakingは言語基準(Linguistic Criteria)と臨床コミュニケーション基準(Clinical Communication Criteria)の2軸で採点されます。 Bグレードには、言語基準で5/6、臨床コミュニケーション基準で2/3が目安です。
- オープニング:“Hello, I’m Dr [Name]. Thank you for coming in today.” で始め、面談の目的を明確にする
- 共感の表現:“I understand this is concerning for you” “That must be worrying” を自然に使う
- 情報の構造化:“I’d like to discuss three things with you today” と最初にアジェンダを示す
- 確認:“Does that make sense?” “What questions do you have?” で理解度を確認する
- まとめ:面談の最後に次のステップを要約する
実際にOETスピーキングの対策に取り組み、目標のグレードに届いた医師の体験談も、準備の進め方を考える参考になるかもしれません。
IELTS vs OET:医師はどちらを選ぶべきか
オーストラリアのAHPRA登録では、IELTSとOETの両方が認められています。医師の場合、どちらが有利なのでしょうか。
| 項目 | IELTS Academic | OET |
|---|---|---|
| AHPRA要件 | Overall 7.0(各セクション7.0、Writing 6.5) | 全セクションBグレード(350点)以上(2026年4月23日以降に受けた試験はListening 350・Reading 360・Writing 350・Speaking 360以上) |
| Writing | エッセイ(一般トピック) | 紹介状(医療トピック) |
| Speaking | 面接形式(一般トピック) | ロールプレイ(医師として患者対応) |
| 医師にとっての難易度 | Writingのエッセイが苦手な医師が多い | 臨床経験をそのまま活かせる |
| 試験頻度 | ほぼ毎週 | 月1〜2回 |
| 受験料(AUD) | 約395 | 約587 |
| スコアの合算 | 2回の受験を12ヶ月以内に合算可能(2025年〜) | 2回まで合算可(12ヶ月以内・各回4技能受験) |
※OETの合算(同じ試験を12ヶ月以内に2回まで・各回で4技能すべてを受験)と2026年4月23日以降の最低スコアは、Australian Health Practitioner Regulation Agency「Accepted English language tests」(確認日2026-10-22)に基づいています。IELTSとOETなど異なる試験どうしのスコアは合算できません。最新の要件は必ず公式サイトで直接ご確認ください。
結論:臨床経験が豊富でWritingのエッセイが苦手な医師にはOETが有利です。 一方、全セクション一気に高スコアを取りにくい場合は、IELTSやOETのスコア合算制度(同じ試験を12ヶ月以内に2回まで)を活用する戦略も有効です。
IELTSの対策については看護師・医師のIELTS対策ガイド、AMC試験の全体像についてはAMC試験ガイドをご覧ください。 AMC試験に必要な医療英語の対策は「AMC試験の医療英語対策」で解説しています。
働きながら3〜6ヶ月で取り組む場合の学習の目安
フルタイムで働きながらOET対策に取り組む場合の、一般的な学習の進め方の例です。
1〜2ヶ月目:基礎固め期間
- OET公式サンプルテストで現在の実力を把握する
- 弱点セクションを特定する
- 毎日30分:英語の医学ポッドキャスト(Listening対策)
- 週2回:紹介状の練習(Writing対策)
- 週1回:ロールプレイ練習(Speaking対策)
3〜4ヶ月目:実践演習期間
- 毎週1回:フルテスト形式での模擬試験
- Writingは第三者にフィードバックをもらう
- Speakingは録音して自己評価 + 模擬面接
- Reading Part Aのタイムマネジメントを重点練習
5〜6ヶ月目:仕上げ期間
- 弱点セクションに集中投資
- 試験2週間前にフルテストを2回実施
- 試験直前は新しい教材に手を出さず、復習に徹する
医師向けの医療英語プログラムの内容は、医師のための医療英語オンラインスクールで詳しく紹介しています。
よくある質問(FAQ)
Q: OETのWritingで紹介状以外が出ることはありますか?
A: 医師版のWritingでは紹介状(Referral Letter)が最も一般的ですが、 退院サマリー(Discharge Summary)や転院依頼(Transfer Letter)が出題されることもあります。 いずれも基本構造は同じで、患者情報・経過・依頼事項を簡潔にまとめる力が問われます。 紹介状の練習を中心にしつつ、他のレター形式にも慣れておきましょう。
Q: OETのBグレードはIELTSの何点に相当しますか?
A: 公式にはOET Bグレード(350点)はIELTS 7.0〜7.5に相当するとされています。 ただし、OETは医療トピックに特化しているため、臨床経験のある医師にとっては、一般的なIELTS 7.0よりも取りやすいと感じる方が多いです。
Q: OETのスコアの有効期限はどのくらいですか?
A: AHPRAの登録申請では、申請日から2年以内のスコアが有効です。OETを早めに受験する場合は、有効期限切れに注意してください。
まとめ:医師の医療英語力はHLCAのレッスンで底上げできる
OETは医師にとって、IELTSよりも臨床経験を活かしやすい試験です。 特にWritingの紹介状とSpeakingのロールプレイは、日常の診療で行っていることを英語で表現する力そのものです。
- Writingは日頃の臨床業務で使うReferral Letterの型に慣れておく
- SpeakingはBad news・治療説明・患者教育の場面を英語で話す練習を重ねる
- ListeningとReadingは医学的な内容そのものには馴染みがある分、形式に慣れれば対応しやすいセクション
- 働きながらでも計画的に取り組めば3〜6ヶ月が一つの目安
HLCAのオンラインレッスンは、医療英語そのものを英会話を通して身につけることを目的としたレッスンです。医療系のバックグラウンドを持つ講師との会話練習の中で、紹介状の内容を英語で説明したり、実際のOETの試験問題を使って、試験を想定したロールプレイを行うこともできます。 スコアや合格を確約するものではありませんが、試験本番で使う医療英語そのものを鍛えることができます。 HLCAで何ができるかは、無料カウンセリングでお気軽にご相談ください。
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