神経内科では、頭痛・しびれ・麻痺・めまいといった症状を、いつから・どのように起きたかをていねいに聴き取ることが診療の出発点になります。なかには脳卒中のように一刻を争うものもあり、外国人の患者さんに対しては、その聴き取りと緊急度の見極めを英語で行う場面が出てきます。この記事では、神経症状の問診フレーム、緊急性の高いサイン(red flags)、神経内科でよく使う検査の説明、そして突然のしびれ・脱力を訴える患者さんへの通しのロールプレイまでをまとめました。
この記事のもくじ
神経内科で英語が必要になる3つの場面
神経内科で英語が必要になるのは、主に次のような場面です。それぞれで求められる英語が少しずつ違います。
- 問診:頭痛・しびれ・麻痺などが「いつから・どんなふうに」起きたかを聴き取る
- 緊急度の判断:突然の片麻痺やろれつが回らないなど、脳卒中を疑うサインを見逃さない
- 検査の説明:MRIや脳波などの検査を、不安な患者さんにわかりやすく伝える
神経症状を見逃さない英語問診|発症の様子をとらえるフレーム
神経症状では、「発症が突然か、徐々にか」がとても重要な手がかりになります。痛みの問診で使われる OPQRST(Onset 発症・Provocation 増悪寛解因子・Quality 性質・Region 部位や放散・Severity 強さ・Time 経過)を土台に、神経症状では特に onset(発症のしかた) と 症状の広がり・左右差 をていねいに確認します。
- When did the symptoms start?(症状はいつ始まりましたか?)
- Did it come on suddenly, or gradually?(突然始まりましたか、それとも徐々にですか?)
- Which part of your body is affected — one side or both?(体のどこに症状がありますか。片側ですか、両側ですか?)
- Is it getting better, worse, or staying the same?(よくなっていますか、悪くなっていますか、変わりませんか?)
緊急性の高いサイン(red flags)
次のようなサインは脳卒中などの緊急事態を疑うもので、英語圏では FAST(Face 顔のゆがみ・Arm 腕の脱力・Speech ことばのもつれ・Time すぐ救急要請(必要に応じ119番))という覚え方が知られています。これらに気づいたときは、自己判断で様子を見ず、すぐに医師に報告し救急対応につなげます。
- Sudden weakness or numbness on one side of the face, arm, or leg.(顔・腕・脚の片側に突然起こる脱力やしびれ)
- Sudden trouble speaking or understanding.(突然、話しにくい・理解しにくい)
- The worst headache of your life, or a headache that starts very suddenly.(人生で最悪の頭痛、または突然始まる激しい頭痛)
- Sudden trouble seeing, severe dizziness, or loss of balance.(突然の見えにくさ・強いめまい・バランスを失う)
緊急度の最終判断や指示は医師が行います。看護師・スタッフは、これらのサインを英語でも素早く把握し、正確に報告できることが大切です。
主な神経症状を英語で深掘りする
神経内科で頻度の高い主訴ごとに、もう一歩踏み込んで確認する英語表現です。
頭痛(headache)
- Where exactly is the headache?(頭のどのあたりが痛みますか?)
- Is it throbbing, pressing, or stabbing?(ズキズキ、締めつけられる、刺すような、どの痛みですか?)
- Do you also feel nauseated or sensitive to light?(吐き気や、光がまぶしく感じることはありますか?)
しびれ・麻痺(numbness / weakness)
- Can you describe where you feel the numbness?(しびれを感じる場所を教えてもらえますか?)
- Is it hard to move your arm or leg?(腕や脚を動かしにくいですか?)
- Did the weakness come and go, or has it stayed?(脱力は出たり消えたりしましたか、それとも続いていますか?)
めまい(dizziness)
- Does the room feel like it’s spinning, or do you feel lightheaded?(周りが回る感じですか、それともふらっとする感じですか?)
- Does it happen when you change position?(姿勢を変えたときに起こりますか?)
神経内科の検査を英語で説明する
神経内科では画像や電気生理の検査がよく行われます。検査の目的と流れを一言添えると、患者さんの不安がやわらぎます。
| English | 日本語・ひとこと説明 |
|---|---|
| MRI (magnetic resonance imaging) | MRI。強い磁石で脳や神経を撮影する検査(金属の持ち込みに注意) |
| CT (computed tomography) scan | CT。X線で脳の断面を撮る検査。出血の確認などに使われる |
| EEG (electroencephalogram) | 脳波検査。頭に電極をつけ、脳の電気活動を記録する |
| nerve conduction study | 神経伝導検査。神経の伝わり方を調べる |
| lumbar puncture (spinal tap) | 腰椎穿刺。背中から針で髄液を採取する検査 |
- We’d like to take an MRI of your brain to look more closely.(脳をくわしく見るために、MRIを撮りたいと思います。)
- The scan itself is painless, but please stay as still as you can.(撮影自体は痛みはありませんが、できるだけ動かないでいてくださいね。)
- Do you have any metal implants or a pacemaker?(体内に金属やペースメーカーは入っていますか?)
覚えておきたい神経内科の英単語・略語
カルテや申し送りでよく出てくる神経内科の用語です。略語は施設や文脈によって使い方が異なることがあるため、迷ったときは正式名称で確認します。
- stroke:脳卒中 / CVA (cerebrovascular accident):脳血管障害
- TIA (transient ischemic attack):一過性脳虚血発作
- seizure:けいれん発作 / epilepsy:てんかん
- numbness:しびれ / weakness:脱力 / paralysis:麻痺 / tremor:ふるえ
- dizziness:めまい(回転性・ふらつき・失神しそうな感じを広く含む)/ vertigo:回転性めまい
結果説明と生活上のアドバイス(英語)
検査結果や今後の方針は医師から説明されるのが基本です。看護師・スタッフは、その内容をやさしい英語で補足し、不安に寄り添う役割を担います。診断や治療方針の断定は避け、「医師から」「一般的には」という枠で伝えます。
- The doctor will go over the results with you in detail.(結果については、医師がくわしくご説明します。)
- In general, it helps to get enough rest and take your medication as prescribed.(一般的には、十分に休み、処方どおりにお薬を飲むことが大切です。)
- If the symptoms come back or get worse, please contact us right away.(症状が再び出たり強くなったりしたら、すぐにご連絡ください。)
- If you have sudden weakness, trouble speaking, or a severe headache, call emergency services immediately.(突然の脱力・話しにくさ・激しい頭痛があるときは、すぐに救急要請してください。)
ロールプレイ|突然のしびれ・脱力を訴える患者への初期対応
片側の脱力を突然訴えた患者さんに対し、発症の様子を確認し、緊急性を見極めて医師につなぐまでの流れです。
Nurse: What seems to be the problem today?
(今日はどうされましたか?)
Patient: My right arm suddenly went weak about thirty minutes ago.
(30分ほど前に、急に右腕に力が入らなくなりました。)
Nurse: Did it come on suddenly? Can you smile for me and raise both arms?
(突然でしたか? 笑ってみて、両腕を上げてもらえますか?)
Patient: My right arm won’t go up, and my words feel slurred.
(右腕が上がらなくて、ことばももつれる感じです。)
Nurse: Thank you. These are signs we need to act on quickly. I’ll get the doctor right away and start our emergency response — please stay seated.
(ありがとうございます。すぐに対応すべきサインです。すぐ医師を呼び、院内の救急対応を始めますので、座ったままお待ちください。)
このあと医師への報告では、Sudden onset of right arm weakness and slurred speech (dysarthria) about 30 minutes ago.(約30分前に突然の右腕の脱力と構音障害)のように、発症時刻と症状を簡潔に伝えます。発症時刻は治療方針を左右するため、必ず確認・記録します。
よくある質問
「突然」と「徐々に」を英語でどう聞き分けますか?
Did it come on suddenly, or gradually?(突然ですか、徐々にですか)が基本の聞き方です。神経症状では発症のしかたが緊急度の大きな手がかりになるため、suddenly(突然)か gradually(徐々に)かを最初に確認します。「いつから」は When did it start? で、可能なら具体的な時刻まで聞いておくと、医師への報告に役立ちます。
脳卒中を疑うサインは英語で何と伝えればよいですか?
英語圏では FAST(Face 顔のゆがみ・Arm 腕の脱力・Speech ことばのもつれ・Time すぐ救急要請(必要に応じ119番))という覚え方が広く知られています。Sudden weakness on one side(片側の突然の脱力)や trouble speaking(話しにくさ)といった表現で状況を伝えられます。緊急度の判断と指示は医師が行うため、サインに気づいたら速やかに報告することが大切です。
まとめ
神経内科の医療英語では、発症が突然か徐々にか、症状が片側か両側かといった「神経症状ならではの聴き取り」と、脳卒中を疑う緊急サイン(FAST)を英語で素早くとらえることがカギになります。診断や治療方針は医師が担うものとして、看護師・スタッフは正確な聴き取り・報告と、患者さんへの寄り添いに徹すると安心です。実践的に身につけたい方は、オンライン医療英語スクールの無料カウンセリングでご相談ください。
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