国際学会への参加が決まったものの、「受付で何と言えばいいのか」「ポスターの前で来訪者にどう説明すればいいのか」「質問されたときに答えられなかったらどうしよう」と不安を感じている薬剤師の方は少なくありません。発表スライドの作り方や抄録の書き方は準備できても、当日その場でとっさに交わす会話への備えは後回しになりがちです。
結論から言うと、国際学会で薬剤師に求められる英語は、専門的な内容を伝える場面でも、まずは「受付・ポスター前の会話・質疑応答・懇親会」という決まった場面ごとの定型フレーズを土台にすると、落ち着いて対応しやすくなります。この記事では、学会当日に実際に交わされる会話を場面ごとに分け、受付での基本表現からポスターセッションでの声かけ、質疑応答の型、聞き取れなかったときの切り抜け方、懇親会での関係づくりまでを英文と日本語訳つきで整理します。あわせて、渡航前2〜3か月でできる準備の進め方も紹介します。
この記事のもくじ
薬剤師が国際学会に参加するときに英語が必要になる場面
薬剤師が国際学会に参加する目的は、研究発表・情報収集・海外の薬剤師や研究者とのネットワーキングなどさまざまですが、いずれの場合も英語での会話が必要になる場面は共通しています。主な場面を整理すると次のとおりです。
- 会場受付での本人確認・登録手続き
- ポスターセッションで来訪者に研究内容を説明する
- 口頭発表・ポスターセッションでの質疑応答
- セッション中に内容を聞き取れなかったときの聞き返し
- 休憩時間や懇親会での名刺交換・雑談
これらの場面は事前に想定できるため、フレーズをある程度パターン化して準備しておくことで、当日の負担を大きく減らせます。専門的な議論の深さよりも、「決まった型を落ち着いて使えるかどうか」が最初のハードルになります。
受付・登録・会場で使う英語フレーズ
学会当日、最初に英語を使う場面は会場の受付です。ここでは名前の確認、参加証(バッジ)の受け取り、会場案内の依頼など、シンプルなやり取りが中心になります。
I’m here to register for the conference. My name is [name], from [affiliation].
学会の登録に来ました。名前は[名前]、所属は[所属機関]です。
Could you tell me where the poster session is being held?
ポスターセッションはどちらで開催されていますか。
Is there a place where I can leave my bag or coat?
荷物やコートを預けられる場所はありますか。
What time does the next session start?
次のセッションは何時に始まりますか。
受付で聞き取りづらいことがあれば、遠慮せずゆっくり話してもらうよう頼んで構いません。「Could you say that again, a little more slowly?(もう一度、少しゆっくり言っていただけますか)」という一言があるだけで、その後のやり取りがスムーズになります。
ポスターセッションで来訪者と話すときの英語|声かけ・要点の説明・お礼
ポスターセッションは、薬剤師にとって国際学会で最も英語を使う時間が長い場面の一つです。来訪者への声かけから、研究の要点を短く説明する場面、質問への対応、立ち去る来訪者へのお礼まで、一連の流れをフレーズとして持っておくと安心です。
来訪者への声かけ
Hi, thank you for stopping by. Would you like me to walk you through the poster?
こんにちは、お立ち寄りいただきありがとうございます。ポスターの内容をご説明しましょうか。
Please feel free to ask if you have any questions.
ご質問があればお気軽にどうぞ。
研究の要点を1分程度で説明する
ポスター前での説明は、来訪者の時間を考えて要点を短くまとめることが重要です。例えば服薬指導への介入研究であれば、次のような流れで話すことができます。
This study examined the association between pharmacist-led medication counseling and patients’ medication adherence.
この研究では、薬剤師による服薬指導と患者さんの服薬アドヒアランスとの関連を調べました。
Our main finding was that [briefly state your main finding].
主な結果として、[自分の研究の主な結果を一言で伝える]という点が挙げられます。
Would you like more details on the methods?
研究方法について、さらに詳しくお話ししましょうか。
来訪者へのお礼
Thank you very much for your interest and your questions.
ご関心とご質問をいただき、ありがとうございました。
Here’s my contact information if you’d like to follow up.
もし後日ご連絡いただく場合は、こちらが連絡先です。
| 場面 | 目的 | 使うフレーズの型 |
|---|---|---|
| 声かけ | 来訪者を迎え入れる | Would you like me to walk you through…? |
| 要点説明 | 研究内容を短く伝える | This study examined… / Our main finding was… |
| 質問対応 | 詳細を補足する | Would you like more details on…? |
| お礼 | 関係を次につなげる | Thank you for your interest. Here’s my contact information. |
質疑応答で使う英語|質問する側・答える側の定型フレーズ
質疑応答は、国際学会の英語対応の中でも特に緊張しやすい場面です。質問する側・答える側それぞれの定型フレーズをあらかじめ持っておくと、当日のやり取りが格段に進めやすくなります。
質問する側のフレーズ
Could I ask a question about your methods?
研究方法について質問してもよろしいですか。
How did you control for confounding factors, such as polypharmacy?
ポリファーマシーのような交絡因子は、どのようにコントロールされましたか。
What was the rationale behind choosing this particular outcome measure?
この評価指標を選んだ理由を教えていただけますか。
答える側のフレーズ
That’s a good question. Let me explain our approach.
良いご質問ですね。私たちのアプローチをご説明します。
We addressed that by adjusting for the number of concomitant medications.
その点については、併用薬剤数で調整することで対応しました。
We acknowledge that as an important limitation.
それは重要な限界点として認識しています。
調剤過誤防止の研究であれば、次のようなやり取りも想定できます。
How did you identify near-miss events in this study?
この研究では、ヒヤリハット(ニアミス)をどのように特定しましたか。
We used a voluntary reporting system combined with pharmacist review.
薬剤師によるレビューを組み合わせた任意報告制度を用いました。
質問の意図がすぐに掴めない場合でも、無理に即答しようとせず、次章で紹介する切り抜けのフレーズを使って時間を確保する方が、結果として落ち着いた受け答えにつながります。
聞き取れなかった・答えられないときの切り抜け方
国際学会では、アクセントや会場の音響、緊張などが重なり、質問を一度で聞き取れないことは珍しくありません。ここで大切なのは、聞き取れなかったことを正直に伝え、落ち着いて確認することです。
聞き取れなかったとき
I’m sorry, could you repeat the question, please?
すみません、もう一度質問を繰り返していただけますか。
Could you rephrase that? I want to make sure I understand correctly.
別の言い方で言っていただけますか。正確に理解したいので。
Just to confirm, are you asking about the sample size or the follow-up period?
確認ですが、サンプルサイズについてのご質問でしょうか、それとも追跡期間についてでしょうか。
すぐに答えられないとき
That’s a great point. I don’t have the exact data with me right now, but I can follow up by email.
とても良い指摘です。今手元に正確なデータがありませんので、後日メールでお答えします。
I’m not the best person to answer that in detail, but I’ll check with my co-author.
その点を詳しくお答えする立場ではないので、共著者に確認します。
「分からない」とだけ答えて会話を終わらせるのではなく、「後で確認して連絡する」「別の視点から補足する」という一言を添えることで、誠実な対応として受け止められます。聞き取れなかったときに焦って適当に答えるより、確認の一言を挟む方が誤解を避け、誠実に対応しやすくなります。
懇親会・名刺交換で関係をつくる英語
学会の懇親会は、発表や質疑応答とは異なり、リラックスした雰囲気で会話をする場面です。専門的な内容だけでなく、自己紹介や研究テーマについての軽い会話、名刺交換のやり取りがよく使われます。
Hi, I don’t think we’ve met. I’m [name], a pharmacist from [affiliation].
こんにちは、初めまして。[所属]の薬剤師の[名前]です。
What area of pharmacy do you work in?
どの分野の薬剤師業務に携わっていらっしゃいますか。
I really enjoyed your presentation earlier. Could I ask you a bit more about it?
先ほどのご発表、とても興味深く拝見しました。もう少し詳しくお伺いしてもよろしいですか。
Here’s my card, if you’d like to stay in touch.
こちらが私の名刺です。よろしければ今後もご連絡ください。
It was great talking to you. I hope we can collaborate in the future.
お話しできて良かったです。今後、何か一緒にできる機会があれば嬉しいです。
懇親会での会話は、専門知識よりも「自己紹介がスムーズにできるか」「相手の話に興味を持って質問を続けられるか」が重要です。難しい単語よりも、シンプルな相槌や質問のフレーズを増やしておく方が実践的です。
渡航前2〜3か月でできる準備と学習の進め方
国際学会での会話は、発表内容そのものよりも「その場でのやり取り」に不安を感じる方が多い分野です。渡航前の2〜3か月で、次のような準備を進めておくと当日の負担を減らせます。
- 自分の研究テーマについて、1分・3分の2パターンで要点を説明できるように準備する
- 想定される質問リストを作り、答える側のフレーズを声に出して練習する
- 聞き取れなかったときの切り抜けフレーズを、反射的に出てくるまで繰り返し練習する
- 懇親会用の自己紹介・雑談フレーズを準備する
- 可能であれば、同僚や講師とのロールプレイで本番に近い形で練習する
特に効果的なのが、質疑応答のロールプレイです。想定問答を一人で読むだけでは、当日の緊張下でとっさに言葉が出てこないことがあります。相手役に質問してもらい、実際に声に出して答える練習を重ねることで、本番でも同じパターンの会話にスムーズに対応しやすくなります。
服薬指導の場面で使う具体的な英語表現は
で扱っています。学会での会話練習と並行して、日常の服薬指導表現も整理しておくと、英語での説明全般に自信が持ちやすくなります。学会に限らず薬剤師としての英語学習の進め方は もあわせてご覧ください。薬剤師の学会英語についてよくある質問
Q. 発表スライドの英語表現や抄録の書き方も教えてもらえますか。
この記事では受付・ポスター前の会話・質疑応答・懇親会という「話す場面」に限定して扱っています。スライド作成や抄録執筆といった文章表現は本記事の対象外です。
Q. 質問の意図がまったく分からないときはどうすればいいですか。
無理に推測して答えるより、「Could you rephrase that?」のように別の言い方をお願いする方が確実です。それでも分からない場合は、共同発表者に確認する、後日メールで回答するといった対応で問題ありません。
Q. 英語に自信がなくても学会発表はできますか。
発表内容や質疑応答の型をあらかじめ準備しておくことで、流暢さよりも「落ち着いて対応できるかどうか」が重要になります。決まった場面のフレーズを繰り返し練習しておくことが、当日の安心材料になります。
Q. 練習相手がいない場合、どう準備すればいいですか。
オンライン英会話や医療英語に特化したレッスンでロールプレイを行う方法があります。想定問答を声に出して答える練習を、本番前に一定回数重ねておくことをおすすめします。
まとめ|『質問の型』と『切り抜けの一言』を持って参加する
国際学会での英語対応は、専門的な議論の深さよりも、受付・ポスター前の会話・質疑応答・懇親会という決まった場面での定型フレーズをどれだけ準備できているかが鍵になります。特に質疑応答では、質問する側・答える側それぞれの型を持っておくこと、そして聞き取れなかったときや即答できないときの切り抜けフレーズを用意しておくことで、当日の不安を大きく減らせます。
渡航前の2〜3か月で、自分の研究テーマの説明・想定問答・懇親会用の自己紹介を準備し、可能であればロールプレイで声に出す練習を重ねておくと安心です。HLCAでは薬剤師向けの医療英語レッスンを提供しています。
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