「海外で看護師や薬剤師として働きたいけれど、英語の試験は何を受ければいいのか分からない」。渡航先の国や職種によって指定される試験も、必要なスコアも違うため、調べるほど混乱してしまう方は少なくありません。IELTSなのかOETなのか、TOEFLでも認められるのか。この記事は、そんな入口の疑問を整理したい方に向けて書きました。読み終える頃には、3つの試験の違いと、自分が目指す国・職種で求められる基準の調べ方が分かる状態を目指します。
- IELTS・OET・TOEFL iBTという3つの英語試験の設計の違い
- 公式情報で確認できたイギリス・ニュージーランド・カナダ・アメリカの職種別スコア要件
- 日本で受験する場合のIELTSとTOEFLの受験料
- 渡航先・職種・現在の英語力から試験を選ぶときの考え方
この記事のもくじ
海外で医療職として働くとき、なぜ英語試験のスコアが必要になるのか
海外で看護師や薬剤師として働くには、多くの場合、現地の免許登録機関(regulatory body)に対して一定の英語力を証明する必要があります。これは日本の資格を単純に海外へ持ち込めない仕組みと同じで、英語力の証明も登録要件の一部として扱われています。
証明の方法は国や機関によって異なりますが、共通しているのはIELTS・OET・TOEFL iBTのいずれかで一定スコアを取得し、その結果を登録申請時に提出する形です。学歴や実務経験の審査と並行して、英語力の基準を満たしているかどうかが確認されます。
スコアには有効期限が設けられている機関もあり、取得してから申請までの期間が空きすぎると再受験を求められることがあります。渡航までのスケジュールを立てる段階で、試験の受験時期と申請時期の間隔も併せて確認しておく必要があります。
この記事では、看護師・薬剤師・歯科医師を中心に、公式情報で確認できた国別・職種別のスコア要件と、3つの試験の違いを整理します。医師免許の試験制度は看護師・薬剤師とは別の枠組みで運用されているため、本記事では扱いません。
スコア要件が国ごとに異なる背景には、それぞれの登録機関が独自に安全基準を設けているという事情があります。同じ看護師や薬剤師という職種でも、患者と接する場面で求められる会話力の水準や、記録・申し送りといった文書作成力の水準は、国の医療制度や言語環境によって重視されるポイントが変わります。そのため「この職種ならこのスコア」という一律の基準はなく、申請先の機関ごとに個別に確認する作業が必要になります。
3つの英語試験の違い|IELTS Academic・OET・TOEFL iBT

海外の医療職登録で使われる英語試験は、主にIELTS Academic・OET・TOEFL iBTの3つです。同じ「英語力の証明」でも、試験が測ろうとしている内容には違いがあります。
| 試験 | 設計の特徴 | 測る技能 | 採用機関の傾向 |
|---|---|---|---|
| IELTS Academic | 進学・就労全般を想定した汎用アカデミック試験 | Listening・Reading・Writing・Speaking | イギリス・ニュージーランド・カナダなど英連邦系の機関で広く採用 |
| OET | 医療現場の実務会話・文書を題材にした職業特化型試験 | 職種別のListening・Reading・Writing・Speaking | 看護師・薬剤師・歯科医師などの登録機関で選択肢の一つとして採用 |
| TOEFL iBT | 大学レベルの学術英語力を測るアカデミック試験 | Reading・Listening・Speaking・Writing | アメリカ系の機関で採用されることが多い |
OETは医療現場を題材にしている点が特徴です。看護師であれば看護師向け、薬剤師であれば薬剤師向けというように、職種ごとに異なる問題が用意されているため、IELTSやTOEFLのような汎用アカデミック試験とは出題の作りが異なります。ただしOETそのものの出題形式や対策の進め方は範囲が広いため、この記事では試験選びの材料として位置づけにとどめます。OETの勉強法はこちらの記事で解説しています。
国別・職種別のスコア要件一覧(公式で確認できたもの)

スコア要件は国や機関ごとに個別に定められており、同じ国でも職種が違えば基準も変わります。ここでは公式サイトで本文を確認できた例を一覧にしました。表にない国・職種については、必ず自分が申請する機関の公式情報を確認してください。
| 国 | 職種 | 機関 | IELTS | OET | TOEFL | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| イギリス | 薬剤師 | GPhC | 総合7.0・各技能7.0以上 | 各技能B以上(有効2年・1セッション) | – | GPhC公式 |
| イギリス | 看護師 | NMC | L7/R7/W6.5/S7 | L・R・S=B(350)/W=C+(300) | – | NMC公式 |
| ニュージーランド | 歯科医師 | DCNZ | 各技能7.0以上 | 各技能A・B(有効2年) | – | DCNZ公式 |
| カナダ(オンタリオ) | 薬剤師 | OCP | 総合7.0・各技能6.0以上 | – | 総合97(W25・S27) | OCP公式 |
| アメリカ | 薬剤師 | NABP | – | – | 指定あり(テストセンター受験・MyBest不可) | NABP公式 |
オーストラリアの看護師登録やアメリカの看護師登録にも英語要件はありますが、この記事では公式サイトで本文まで確認できた数値のみを掲載しています。数値を確認できなかった国・職種については、断定的な数字を書かずにここでは触れません。
上記の表からも分かるように、同じ薬剤師でもイギリスのGPhCとカナダのOCPでは指定される試験の組み合わせが異なり、アメリカのNABPのようにTOEFL iBTのみを受け付ける機関もあります。「薬剤師だからこの試験」と一律に決められるものではなく、渡航先の機関ごとに個別の確認が必要になる理由がここにあります。
看護師の国別要件をさらに詳しく知りたい方は、免許の書き換え手続きも含めてこちらの記事で解説しています。
要件は各国の登録機関の判断で改定されることがあります。この一覧を参考にしつつ、出願前には必ず最新情報を機関の公式サイトで確認してください。
受験料の比較|日本で受ける場合の費用

試験を選ぶ際は、スコア要件だけでなく受験料も判断材料になります。ここでは公式サイトで確認できた最新の受験料を掲載します。
| 試験 | 受験料 | 備考 |
|---|---|---|
| TOEFL iBT | US$195 | 2025年4月改定(ETS Japan公式) |
| IELTS Academic | 27,500円(税込) | IDP/JSAF経由の金額 |
| OET | 公式サイトで確認 | 運営団体・セッションにより変動するため本記事では金額を掲載しません |
IELTSの受験料は運営団体によって異なる場合があります。上記はIDP/JSAF経由の金額であり、他の運営団体では異なる可能性があります。受験料は改定されることがあるため、申し込み前に必ず各機関の公式サイトで最新の金額を確認してください。
受験料に加えて、会場までの交通費や再受験になった場合の追加費用も見込んでおくと、渡航準備全体の資金計画が立てやすくなります。特に地方在住の場合は、受験できる会場が限られることもあるため、申し込み前に開催地と日程を確認しておくと安心です。
どの試験を選ぶべきか|職種・渡航先・現在の英語力で決める
3つの試験にはそれぞれ向き不向きがあります。ここでは判断の軸を3つに分けて整理します。
1つ目は渡航先の国です。イギリスやニュージーランドの一部機関はIELTSとOETの両方を選択肢として提示していますが、アメリカの薬剤師登録のようにTOEFL iBTのみを指定するケースもあります。まずは自分が申請する機関がどの試験を認めているかを確認する必要があります。同じ国内でも州や地域によって登録機関が分かれている場合があり、その機関ごとに要件が個別に定められていることもあります。
2つ目は職種です。同じ国でも看護師と薬剤師で受け入れ試験の組み合わせが異なることがあります。前述の一覧のように、機関ごとに指定が分かれているため、職種を確定させたうえで該当する機関の要件を確認する流れになります。渡航先と職種が両方決まっていない段階では、複数の候補で要件を比較してから絞り込む方法もあります。
3つ目は現在の英語力とアカデミック英語の経験です。IELTSやTOEFLは学術的な文章や一般的な話題を扱うのに対し、OETは医療現場の会話や文書が題材になります。アカデミックな英語学習の経験が少ない場合、OETの医療特化型の題材のほうが取り組みやすいと感じる方もいます。逆に、大学受験や留学準備でIELTSやTOEFLに慣れている場合は、そのまま同じ試験形式で進める選択肢もあります。
3試験の使い分けをさらに詳しく知りたい場合は、医療英語の試験全般を扱ったこちらの記事もあわせて参考にしてください。
要件を満たすまでの学習の進め方
スコア要件が分かったら、次は学習の進め方です。ここで意識したいのは、試験対策と現場で使う医療英語は目的が異なるという点です。試験対策は決められた出題形式でスコアを取ることが目的であるのに対し、現場の医療英語は患者や同僚との実際のやり取りで通じることが目的です。
試験のスコアを満たすことは登録の必須条件ですが、スコアを取った後に現場で困らないようにするには、問診・申し送り・記録など実務に即した英語表現の学習を並行して進めておくことが役立ちます。試験対策だけに時間を使い切ってしまうと、いざ現場に立ったときに会話のスピードや専門用語のニュアンスで戸惑うケースもあります。
学習の順番としては、まずスコア要件を満たす学習に集中し、目処が立った段階で現場英語の学習を並行させる進め方と、最初から両方を少しずつ進める進め方があります。渡航までの残り期間や現在の英語力によって最適な配分は変わるため、自分の状況に合わせて計画を組み立てる必要があります。留学準備やアカデミック英語の学習経験がすでにある場合は、試験対策にかかる時間を短縮できることもあります。
どの順番で何を学べばよいか整理したい方や、渡航までのスケジュールを一緒に考えたい方は、無料カウンセリングで具体的な学習計画を相談できます。
まとめ
海外で医療職として働くための英語試験は、IELTS Academic・OET・TOEFL iBTの3つが中心です。試験ごとに設計の目的が異なり、渡航先の国や職種によって指定される試験とスコア基準も変わります。本記事では公式サイトで確認できた範囲の要件と受験料を一覧にしましたが、これらは各機関の判断で改定される可能性があるため、出願前には必ず最新情報を公式サイトで確認してください。
試験選びに迷ったときは、まず渡航先の機関がどの試験を認めているかを確認し、そのうえで自分の英語学習の経験と照らし合わせて選ぶと判断しやすくなります。スコア要件を満たすための学習と、現場で使える医療英語の学習は目的が違うため、両方を視野に入れて計画を立てる進め方をおすすめします。
本記事で扱ったのは看護師・薬剤師・歯科医師の一部であり、対象国や職種によって要件は大きく異なります。自分の状況に近い例が見つからない場合も、申請先の機関の公式サイトを確認する手順自体は同じです。
HLCAの無料カウンセリングでは、目指す国・職種に応じた試験の選び方や学習計画について相談できます。渡航までの見通しを立てたい方は、お気軽にご相談ください。
医療英語の学び方全体を体系的に知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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よくある質問
Q. IELTSとOET、どちらか一方だけ受験すればよいですか。
A. 申請先の機関が両方を選択肢として認めている場合は、どちらか一方の基準を満たせば申請できます。ただし機関によってはTOEFL iBTのみを指定する場合や、逆にOETを求めない場合もあるため、必ず申請先の公式要件を先に確認してください。
Q. スコアには有効期限がありますか。
A. 機関によって有効期限が定められている場合があります。本記事で紹介したイギリスのGPhCやニュージーランドのDCNZの例のように、一定期間内の受験が条件になっているケースもあるため、公式サイトで有効期限の記載を確認してください。
Q. 一度取得したスコアが要件未満だった場合はどうすればよいですか。
A. 再受験して基準を満たすスコアを取得する必要があります。試験ごとに出題形式が異なるため、自分の弱点技能を把握したうえで学習計画を立て直すことが再受験の近道になります。
Q. 医師の場合も同じ試験・スコアが使えますか。
A. 医師の英語要件および試験制度は、看護師・薬剤師・歯科医師とは別の枠組みで運用されています。本記事は看護師・薬剤師・歯科医師を対象とした内容のため、医師を目指す場合は別途、目指す国の医師登録機関の公式情報を確認してください。
最終更新日:2026年10月1日
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