英語は読めるのに話せない看護師へ|現場で口が動かない理由と、話せるようになる練習

HLCA編集部
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英語は読めるのに話せない看護師へ|現場で口が動かない理由と、話せるようになる練習
海仲由美
この記事の監修者
HLCA代表 / 校長 / 正看護師
正看護師として日本で4年半の臨床経験。2013年フィリピン・セブ島で英語留学。2015年4月に医療従事者向け医療英語スクールHLCAを設立。医療従事者の英語学習・海外キャリア・医療通訳を支援。「女性のためのフィリピン留学協会」理事、国際看護学非常勤講師。

英語の論文や添付文書は辞書を引きながらなら読める。学生時代の試験もそれなりに通ってきた。それなのに、外来で外国人の患者さんを前にすると口が動かない。頭の中に単語はあるのに、音になって出てこない。

この記事は、そういう「読めるのに話せない」状態にいる看護師の方に向けて書いています。結論から言うと、この状態は語彙不足が原因ではないことがほとんどです。読むときと話すときでは、脳が英語を扱う速度と手順がまったく違うために起きます。この記事では、口が動かなくなる仕組みを整理したうえで、現場で特に詰まりやすい場面と、語彙を増やす以外の練習方法を紹介します。読み終えたときに「明日から何を練習すればいいか」が具体的に決まる状態を目指します。

【この記事でわかること】
  • 読めるのに話せない状態が起きる仕組み
  • 看護の現場で特に口が止まりやすい3つの場面
  • 単語より先に固めるべき「型」の考え方
  • 1人でできる練習と、相手が必要な練習の分け方
  • 話せるようになるまでの期間の目安

読めるのに話せないのはなぜ起きるのか

読解と会話は、同じ英語を扱っていても使っている能力が違います。読むときは、自分のペースで戻ることができます。分からない単語があれば止まって考えられますし、辞書も引けます。時間の制約がありません。

一方、話すときには3つの制約が同時にかかります。

  • 時間制限:相手が待っているのは数秒です。考えている間に会話が進みます
  • 頭の使い方の違い:読むときは「英語を見て意味を考える」順番ですが、話すときは「言いたいことを先に決めて英語にする」逆の順番になり、後者のほうが難しくなります
  • 出力の運動:口や舌を動かして音にする作業が加わります

この3つ目が見落とされがちです。英語を話すことには、知識だけでなく運動の側面があります。頭で分かっていても、その音を実際に発した回数が少なければ、口はスムーズに動きません。楽譜が読めることと、その曲を演奏できることが別なのと同じ構造です。

「見て分かる」単語と、「自分から言える」単語は別のもの

単語には2つの層があります。見れば意味が分かる単語と、自分から取り出して口に出せる単語です。一般に、見て分かる単語のほうが、自分から言える単語よりかなり多くなります。

読解の学習を積んできた人ほど、この2つの差が開きます。医療系の英文を読み慣れていれば「見て分かる」単語は増えますが、その単語を声に出して使った経験がなければ「自分から言える」単語にはなりません。「知っているのに出てこない」という感覚の正体はここにあります。

つまり、話せない原因が語彙不足だと考えて単語帳を追加すると、「見て分かる」単語だけがさらに増えて、差はむしろ広がります。必要なのは、すでに知っている単語を「自分から言える」単語に移す作業です。

医療現場で特に口が止まる3つの場面

看護の現場では、一般的な英会話とは違う場所で詰まります。実際に相談として多いのは次の3つの場面です。

場面1:予想していない質問が返ってきたとき

「Do you have any pain?(痛みはありますか)」と聞くところまでは準備できていても、返ってきた答えが想定外だと止まります。

It’s not really pain, it’s more like pressure.
痛みというより、圧迫される感じです。

この「pressure」という返答に対して次の質問を組み立てられず、会話が途切れる。準備したフレーズは一往復で終わり、二往復目からが実際の会話だという構造がここにあります。

場面2:日本語の敬意表現を英語に訳そうとしたとき

「少々お待ちください」「失礼します」「恐れ入りますが」といった日本語の言い回しを、そのまま英語に置き換えようとして固まる場面です。日本語の丁寧表現には英語に一対一で対応しないものが多く、直訳しようとするほど言葉が出なくなります。

I’ll be right back.
すぐに戻ります。(「少々お待ちください」の場面で使える)

Let me check that for you.
確認してまいります。

英語では、丁寧さは長い言い回しではなく「Could you」「Would you like」といった型と、声のトーンで表現します。日本語の敬語を訳すのではなく、その場面で英語話者が使う型に置き換えるほうが早く口が動きます。

場面3:相手の言葉が聞き取れなかったとき

聞き取れなかったこと自体より、聞き返し方が分からずに固まってしまうケースです。黙ってしまうと相手は「伝わった」と判断して先に進んでしまい、状況がさらに分からなくなります。

I’m sorry, could you say that again more slowly?
すみません、もう少しゆっくり言っていただけますか。

You mean the pain started this morning, is that right?
今朝から痛みが始まった、ということでよろしいですか。

2つ目のように、自分が理解した内容を言い直して確認する方法は、医療現場では特に有効です。聞き返しであると同時に、認識のずれを防ぐ確認にもなります。

話すために必要なのは単語より「型」

会話が止まる場面を分解すると、足りないのは単語ではなく「文をどう始めるか」であることが多くなります。文の出だしが決まれば、そこに知っている単語を入れるだけで文が完成します。逆に、出だしが決まらないと、単語を知っていても組み立てられません。

看護の現場でよく使う型は、実はそれほど多くありません。主なものを整理します。

目的 型 例
状態を尋ねる How is / How are …? How is the pain now?
有無を尋ねる Do you have …? Do you have any allergies?
依頼する Could you …? Could you roll up your sleeve?
これからの行為を伝える I’m going to … I’m going to take your blood pressure.
許可を求める May I …? May I check your temperature?
確認する You mean …, is that right? You mean it hurts when you breathe in?

上の表の6つの型があれば、バイタル測定から問診の入り口までの会話はかなりの部分が組み立てられます。ここに、自分の担当領域の単語を入れ替えていく形になります。

型を身につける利点は、考える負荷が下がることです。文の構造を毎回ゼロから組み立てるのではなく、決まった枠に単語を入れるだけになるため、限られた数秒でも言葉が出やすくなります。

1人でできる口を動かす練習

相手がいなくてもできる練習には、次のようなものがあります。いずれも共通しているのは、黙読で終わらせず必ず声に出す点です。

  1. 音読:教材の会話文を声に出して読む。1日5分から始められます
  2. シャドーイング:音声を聞きながら、少し遅れて同じ音を追いかけて発声する
  3. 独り言実況:自分の業務動作を英語で言葉にする(I’m going to check her IV line.)
  4. 型の置き換え練習:上の表の型1つを選び、単語を変えて10文作って声に出す

この中で最も現場に効きやすいのが4つ目です。「Could you …?」の型で、腕を上げてもらう・口を開けてもらう・体を横に向けてもらう、と自分の担当領域で10文作って声に出すと、その型を自分から言える形に近づけられます。単語帳を1ページ進めるより、同じ型を10回使うほうが口は動くようになります。

逆に効果が出にくいのは、新しい単語帳を追加することです。見て分かる単語を増やす作業になるため、話せない状態の解決には直結しません。医療英語の単語そのものを整理したい場合は

で扱っていますが、話す練習とは別の作業として切り分けて取り組むことをおすすめします。

相手がいるときにしかできない練習

1人での練習には限界があります。実際の会話では、自分が話した後に返ってくる言葉が予測できません。この「予測できない返答に対応する」部分は、相手がいないと練習できません。

相手がいる練習で得られるものは主に3つあります。

  • 二往復目以降の経験:想定外の返答に対して次の質問を出す訓練になります
  • 沈黙の耐性:言葉が出ないときにどう間を埋めるかを身につけられます
  • 通じたかどうかの確認:自分の発音や表現が相手に伝わったかを検証できます

特に3つ目は1人では判断できません。自分では正しく言えているつもりでも、相手に伝わっていないことがあります。この確認は、実際に誰かと話す以外に方法がありません。

練習相手の選択肢としては、院内の外国人スタッフとの会話、オンラインでのマンツーマンレッスン、医療英語に対応した学習サービスなどがあります。選ぶときの基準は「自分が話す時間がどれだけあるか」です。グループ形式では1人あたりの発話時間が短くなるため、口を動かす目的なら発話量を確保できる形式のほうが向いています。

話せるようになるまでの目安と進め方

「どのくらいで話せるようになるか」は個人差が大きく、一律の期間を示すことは難しい部分です。ただし、目標を細かく分けると進み方が見えやすくなります。

段階 できるようになること 主な練習
第1段階 準備したフレーズが口から出る 音読・型の置き換え練習
第2段階 想定内の一往復の会話ができる ロールプレイ(相手あり)
第3段階 想定外の返答にも対応できる 自由会話・指導者の立ち会いのもとでのロールプレイ

読解ができている方は、第1段階の土台をすでに持っています。必要なのは、その知識を音にする回数を積むことです。第1段階と第2段階では練習の種類が違うため、1人での音読だけを続けても第2段階には進みにくくなります。

進め方としては、まず1日5〜10分の音読と型の置き換え練習を2〜3週間続け、口が動く感覚が出てきた段階で相手のいる練習を加える流れが取り組みやすいでしょう。看護の現場で使う英語全般の学習の進め方は

でも整理しています。

読めるのに話せない状態についてよくある質問

Q. TOEICのスコアを上げれば話せるようになりますか。
TOEICのListening & Readingは読解と聴解を測る試験で、発話は測定範囲に含まれません。スコアが上がっても話す力が同じだけ伸びるとは限らないため、話す練習は別に必要になります。

Q. 発音が悪いと通じませんか。
母語話者のようなアクセントである必要はありません。ただし、薬剤名・数値・左右の別・アレルギーなど、取り違えの影響が大きい情報については、明瞭に発音することが安全に直結します。そのうえで、相手に伝わったことを復唱で確認し合う手順を持っておいてください。

Q. 単語帳はもう使わないほうがいいですか。
使わないほうがよいということではありません。ただし、話せない状態の解決には直結しにくいため、単語学習と発話練習を別々の目的として並行させる形をおすすめします。

Q. 現場で使う機会がない場合はどうすればいいですか。
独り言実況のように、自分の業務動作を英語で言葉にする練習であれば機会は自分で作れます。二往復目以降の会話に慣れる部分は、レッスンなど相手のいる場を別に確保する必要があります。

Q. 学習した英語だけで患者対応を進めてよいですか。
アレルギーの確認、薬剤名と用量、検査や処置の同意、退院時の説明、緊急を要する症状など、誤解が重大な結果につながる場面では、学習した定型表現だけで進めないでください。聞き取った内容を復唱して確認する、書いて示してもらう、院内の規定に沿って医療通訳や上位者の確認を求めるといった手順を併用してください。語学の練習と、実際の患者対応における安全確保は別のものとして扱う必要があります。

まとめ|単語を足す前に、知っている英語を音にする

読めるのに話せない状態は、語彙不足ではなく、知っている単語が「使える形」になっていないことから起きます。読解で積み上げた「見て分かる」単語を「自分から言える」単語に移すには、新しい単語を追加するのではなく、すでに知っている型を声に出して使う回数を増やすことが近道になります。

まずは6つの基本の型から1つ選び、自分の担当領域の単語で10文作って声に出すところから始めてみてください。1人での練習で口が動く感覚が出てきたら、想定外の返答に対応する練習として相手のいる場を加えると、現場で使える段階に近づきます。

とはいえ、どの型からどの順番で進めればいいか、今の自分の課題がどこにあるかは、1人では判断しづらい部分でもあります。HLCAでは医療従事者向けの医療英語レッスンを提供しており、全レッスンがマンツーマン形式のため、発話の時間を確保しやすい設計になっています。無料カウンセリングでは、今の英語力と課題を確認したうえで、その人の課題やレベルに合わせた個別の学習プランをご案内しています。自分の英語がどの段階にあるのか、次に何を練習すればよいのかを整理したい方は、まずご相談ください。

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この記事を書いた人
HLCA編集部

医療英語スクールHLCAの編集チーム。 医師・看護師・薬剤師・受付スタッフなど、医療従事者向けの医療英語学習を支援するメディアとして、現場で使える医療英単語・フレーズ・ロールプレイを発信しています。 記事制作では、医療現場でのコミュニケーション、患者対応、多職種連携の観点を重視し、医療英語を初めて学ぶ方にも分かりやすい内容を心がけています。