看護師向け!外国人患者とのコミュニケーションで必要な心がけとは?

nico〔ニコ〕
公開日:2020.08.28
更新日:2022.03.25

近年外国人が急増中の日本では、外国人患者も増えています。

看護師は外国人患者とどのようにコミュニケーションをとれば良いのでしょうか?

本記事では、都内病院で多くの外国人患者と接してきた元看護師の筆者が、外国人患者とのコミュニケーションをマニュアル化してみました!

外国人患者とうまくコミュニケーションをとりたい看護師は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!

看護師が外国人患者とコミュニケーションをとる機会が増加中!

近年、日本に訪問・在住する外国人の数が急増中です。

在留外国人数は、2005年の約190万人から2016年には230万人に増加、訪日外国人数は、2005年の約700万人から2016年には約2400万人に増加しています(法務省より)。

外国人患者も増えていると言われており、厚労省の調査では、2019年には全国の拠点的な医療機関のうち8割以上が外国人患者を受け入れていました。

看護師にとって外国人患者とのコミュニケーションは非常に身近なものとなっているのです。

看護師が外国人患者とコミュニケーションをとる方法

看護師が外国人患者とコミュニケーションをとる方法には、以下の4つがあります。

① 患者の母国語もしくは英語を話す

② 翻訳ツールを使う

③ 筆談をする

④ ジェスチャーで伝える

1番スムーズなのは、外国人患者の母国語でのコミュニケーションです。

しかし、日本人が患者の母国語を話せることはなかなかありません。

お互い英語が話せれば英語でコミュニケーションを取るのがベストでしょう。

英語が話せない場合は、Google翻訳などの翻訳ツールを使ったり、筆談したりする方法もあります。

ジェスチャーで伝えることも可能ですが、説明の精度や患者の安心感を考えると、言葉で伝えるのが1番です。

英語が話せなくても、いざ外国人患者が来たときに対応できるようにしておく必要があります。

よく使う診断名検査名説明を予め英語メモなどにして用意しておくようにしましょう。

外国人患者とのコミュニケーションで看護師に必要なこと

外国人患者とコミュニケーションをとる際、看護師には何が求められるのでしょうか?

「ICN(国際看護師連盟)看護師の倫理綱領」には、以下のように記載されています。

看護のニーズはあらゆる人々に普遍的である。

看護ケアは、年齢、皮膚の色、信条、文化、障害や疾病、ジェンダー、性的指向、国籍、政治、人種、社会的地位を尊重するものであり、これらを理由に制約されるものではない。

(引用元:ICN 看護師の倫理綱領

以上から、外国人患者であろうと、日本人患者であろうと、看護を必要とする人に変わりはないことが分かります。

実践すべき看護内容は、「日本看護協会」で以下のように定められています。

看護を必要とする人を、身体的、精神的、社会的、スピリチュアルな側面から支援する。

看護を必要とする人の意思決定を支援する。

看護を必要とする人が変化によりよく適応できるように支援する。

(引用元:看護業務基準/日本看護協会

これらを実践するために必要な力は、「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」で以下4つに定められています。

① ニーズをとらえる力

② ケアする力

③ 協働する力

④ 意思決定を支える力

(引用元:看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)

では、これら4つは具体的にどのような力を指すのでしょうか?

そしてそれを実践するにはどのようなコミュニケーションが必要なのでしょうか?

以下で詳しくみていきましょう!

看護1. 外国人患者のニーズをとらえるコミュニケーション

ニーズをとらえる力は、外国人患者の情報を把握し、その人に合った処置を決定することを指します。

問診診察において必要となる力です。

ニーズをとらえるために、外国人患者からは以下の情報を得なければなりません。

① 痛みの部位(Site)

② 痛みの始まり(Onset)

③ 痛みの性質(Character)

④ 痛みの広がり(Radiation)

⑤ 随伴症状(Associations)

⑥ 痛みの時間経過(Time course)

⑦ 憎悪因子(Exacerbating factors)

⑧ 痛みの強さ(Severity)

これらの項目は、英語の頭文字から「SOCRATES(ソクラテス)」と覚えておくことができます。

この他、既往歴アレルギーなどに関する情報も必要です。

英語などで直接コミュニケーションをとるか、翻訳ツール、筆談、ペインスケールなどで情報を集めましょう。

ニーズをとらえるコミュニケーションに使える英語

ニーズをとらえる際には、予め以下のような英語が話せるようにしておくと便利です。

What brings you here today?

(今日はどうされましたか?)

What is the pain like?

(どのような痛みですか?)

Where does it hurt?

(どこが痛みますか?)

When did it start hurting?

(いつから痛み始めましたか?)

How much does it hurt?

(どのぐらい痛みますか?)

How does does the pain get worse?

(その痛みはどのように悪化しますか?)

Do you have any other symptoms?

(他に何か症状はありますか?)

Do you have any allergies?

(アレルギーはありますか?)

Do you take any medicines?

(何かお薬は飲んでいますか?)

Do you have other experiences of any illness?

(何かご病気をされたことはありますか?)

Do you have experiences of any surgeries?

(何か手術をされたことはありますか?)

「5W1H」「Do you~?」だけでも十分対応可能なので、前もって練習したり、メモしたりしておくようにしましょう。

看護2. 外国人患者にケアをするコミュニケーション

看護師のケア内容は、外国人患者だろうと日本人患者だろうと変わりません。

ただし、外国人患者の場合は、相手が理解できるコミュニケーション方法で以下の内容を伝えなければなりません。

  1. これから行うケアの説明
  2. 患者への注意点や指示の説明

説明する内容自体は、患者が誰であろうとほとんど同じです。

予め説明内容を英語などに直して用意しておくと、いざ外国人患者が来ても説明に慌てずに済みます。

イレギュラーな対応が必要になったときのみ、翻訳機などを使うとスムーズでしょう。

ケアの際に使える英語

外国人患者への看護ケアで使う英語は、「This is~.」「will / can ~」で十分です。

以下の英語で、外国人患者とスムーズにコミュニケーションをとりましょう。

This is an antibiotic.

(これは抗生剤です)

You will have a blood test.

(採血をします)

It will take about 45 minutes.

(45分ほどかかります)

We will see if you need to be hospitalized after the test.

(検査をして入院が必要かどうか判断します)

You can walk around the hospital from tomorrow.

(明日から病院内を歩き回れます)

看護3. 協働して外国人患者を看護するコミュニケーション

看護に必要とされる「協働する力」は、他職種も含めたチーム全体で患者をサポートする力を指します。

外国人患者の治療をスムーズにするには、患者の文化をチーム全体で理解することが必要不可欠です。

外国人患者の文化アセスメントに必要な情報は、以下のようなものがあります。

  1. 民族
  2. 宗教
  3. 宗教上のルール
  4. 使用言語
  5. 発音
  6. 出生地
  7. 遺伝性疾患
  8. 時間感覚
  9. 家族の有無
  10. 家族の役割 etc…

(参考:外国人患者受け入れにおける診療や入院、治療に伴う対応

これらの情報は、問診や外国人患者とのコミュニケーションから収集可能です。

外国人患者が分かる言語で質問シートを作ったり、直接コミュニケーションをとって情報収集しましょう。

得た情報はチーム全体でシェアすることで、外国人患者にもスムーズな治療が提供できます。

外国人患者の情報収集に使える英語

外国人患者の文化的な背景情報を収集する際は、以下の英語が使えます。

情報収集で注意すべきなのが、差別的な意図はないと伝えることです。

世界では宗教や民族に関連したテロや殺人事件が数多く発生しており、差別意識がある人も残念ながらたくさんいます。

いきなり「あなたの宗教は何?」などと聞かれると、自分の宗教が何に影響するのか、警戒意識を持たれる可能性があるのです。

外国人患者に文化背景の情報を聞く際は、必ず「看護をスムーズに行うために聞かせてほしい」と前置きすることをおすすめします。

Let me ask you some cultural questions.

(いくつか文化的な質問をさせてください)

May I ask you some cultural questions?

(いくつか文化的な質問をしても良いでしょうか?)

It is to make our nursing better for you.

(あなたにとって我々の看護をより良くするためです)

What is your religion?

(あなたの宗教は何ですか?)

Do you have any religious rules for you?

(宗教上の何らかのルールはありますか?)

Is there any food that you can’t eat for your religion?

(宗教のために食べられないものはありますか?)

What can we do to help you follow your cultural rules?

(あなたが文化上のルールを守れるよう手伝うために、私たちは何ができますか?)

What language do you use?

(あなたは何語を使いますか?)

Are you married?

(あなたは結婚していますか?)

Where do your family live in?

(あなたの家族はどこに住んでいますか?)

看護4. 外国人患者の意思決定を支えるコミュニケーション

外国人患者の意思決定を支えるには、

  1. 外国人患者のニーズをとらえる
  2. 外国人患者にケアをする
  3. 協働して外国人患者を看護する

の中で患者の不安要素になっているものや、治療の妨げになっているものを取り除いていくことが大切です。

外国人患者とのコミュニケーションが一方的にならないよう、その都度質問がないか尋ねたり、不安なことがないか聞いてみるようにしましょう。

意思決定のサポートに使える英語

外国人患者の意思決定をサポートするには、

  1. 質問や不安要素を確認する英語
  2. 理解を示す英語
  3. 一緒に考えていく姿勢を示す英語

を覚えておくと便利です。

Do you have any questions?

(何か質問はありますか?)

Do you have any problems?

(何か問題はありますか?)

Is there anything you’re worried about?

(何か心配なことはありますか?)

I understand how you feel it.

(その気持ち分かります)

It must be tough.

(大変ですよね)

Let us know anytime if you have a problem.

(問題があればいつでも私たちに教えてくださいね)

Let me confirm that.

(確認させてください)

看護師と外国人患者のコミュニケーションには英語習得がおすすめ!

外国人患者は、日本語が話せないことも多いです。

英語メモを用意しておくのも良いですが、時にはメモにはないコミュニケーションも求められます。

その度に翻訳ツールを利用していては時間がかかり、看護の質が落ちかねません。

円滑なコミュニケーションで外国人患者に良質な看護が提供できるよう、看護師も英語を習得しておくのがおすすめです。

全ての外国人患者が英語を話せるとは限りませんが、2019年時点で、世界で最も使われている言語は英語というデータもあります。

英語は、外国人患者とコミュニケーションが取れる確率が1番高い言語なのです。

とりあえず英語を話せるようになっておけば、その都度英語を調べる手間も減り、精神的なストレスも軽減されます。

外国人患者にスムーズに対応したい看護師は、ぜひ英語を習得してみましょう。

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良質なコミュニケーションで外国人患者にも安心・安全な看護を!

外国人患者の看護では、

  1. ニーズの把握
  2. ケアの実施
  3. チームでの協働
  4. 意思決定のサポート

を可能にする良質なコミュニケーションが必要不可欠です。

英語や、外国人患者の母国語を使って、必要な情報を把握し、正確な説明ができるようにしておきましょう。

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この記事を書いた人
nico〔ニコ〕

大学卒業後、病院で3年間看護師として勤務し現在はベトナムに移住。医療従事者としての経験、海外居住の経験から日本人医療従事者も英語を学ぶべきと痛感。そのような経験からHLCA BLOGにて医療英語の必要性や海外の医療現場の情報を発信しています。