こちらの記事では医療通訳に興味のある方に向けて、医療通訳になるためにはどんな資格の選択肢があるのかをご紹介します。
資格なしで働く方法や医療職で医療通訳を目指す場合についても紹介していきますのでぜひ参考にしてみてください。
この記事のもくじ
医療通訳とは?
医療通訳は、外国人患者と医療従事者の間に立ち、医療用語を含む専門的な内容を正確に伝える役割を担います。
業務は病院・クリニック・保健所・自治体の健康相談窓口など、多岐にわたります。
単に語学力ではなく、医療現場ならではの緊急性・倫理・判断力も必要とされる、非常に専門性の高い職種です。
海外の方との通訳にあたり、医療用語の習得の他、患者さんの文化背景などにも注意を払う必要があります。
患者の命を預かる医療現場で、言語の橋渡しを担うやりがいあるプロフェッショナルな仕事です。
医療通訳に必要な資格は?
まず結論として、医療通訳に必須となる国家資格は日本には存在しません。
しかし、下記のような民間資格や自治体の研修修了証を取得しておくことで、就職・業務委託の場面で評価されやすくなります。
なぜなら、雇用側は「一定のスキルがあることを証明するもの」を求める傾向があるからです。
英語のスキルを知るためにTOEICや英検が履歴書で重視されることがあるのと同じように、通訳資格があることで「どの程度通訳としての医療英語が話せるのか」という内容が雇用側に伝わりやすいという傾向にあります。
そのため、目指す勤務先・キャリアプランに応じて適切な資格を選ぶことが重要です。
代表的な医療通訳資格の一覧と特徴
先ほど医療通訳の資格取得は、現場での採用・信頼性・キャリアアップの観点から有利になるということをお伝えしてきました。 ここでは、日本国内で特に信頼性が高く、実務で役立つ3つの主要資格をご紹介します。
✅ ICM認定 医療通訳士(国際臨床医学会)
- 発行団体:国際臨床医学会(ICM)
- 資格名:ICM認定 医療通訳士®
- 特徴:
- 日本で最も権威ある医療通訳資格とされ、国際基準にも準拠している。
- 試験合格のほかに、ICM指定の講習を修了する必要がある
- 医療通訳の倫理・逐次通訳技術・専門知識を網羅的に評価される。
- 取得方法(2パターン):
- 試験合格者認定:ICM認定試験に合格し、指定講習を修了
- 実務者認定(移行措置):経験者は講習と実績提出で認定申請が可能
1つ目の方法は未経験で1から勉強、資格取得したいという方に特におすすめの方法です。
試験合格→講習会への参加→医療通訳育成カリキュラムの受講という流れで進んでいきます。
ICM認定の試験団体は3つあり、まずはそのなかのどれかに合格する必要があります。
2つ目の実務者認定については、医療機関等での通訳の実績をもとに試験などが免除になる制度のため、既に医療通訳として働かれている方にお勧めの方法です。
資格取得までのステップが最も多い資格になるので「本格的に医療通訳として働きたい」「将来的に国際現場も視野に入れている」方に特におすすめです。
✅ 医療通訳技能認定試験(日本医療教育財団)
- 発行団体:一般財団法人 日本医療教育財団
- 資格名:医療通訳技能認定試験(基礎/専門)
- 特徴:
- ICMと連携している団体が主催。ICM認定のための登竜門的試験
- 厚労省モデルに準拠した民間試験。筆記+実技のバランス型評価。
- 「基礎(初級)」「専門(中級〜実務)」の2区分があり、自分のレベルに合わせて受験可能。
- 日本全国の医療機関や通訳派遣会社でも一定の評価あり。
- 検定料
- 【1次試験】 11,000円(税込)
- 【2次試験】 17,500円(税込)
こちらの資格は先ほどお伝えしたICM医療通訳士の試験団体でもあります。
こちらの試験に合格すると「医療通訳専門技能者」・「医療通訳基礎技能者」の認証も得られるので履歴書等にもおすすめです。
「まずは基礎から始めたい」「まず資格取得の勉強から始めて、それからステップアップするか考えたい」という方におすすめです。
✅ 医療通訳技能検定試験(日本医療通訳協会)
先ほど紹介した試験と名前がとても似ていますが、別団体が実施している別の資格です。
- 発行団体:日本医療通訳協会(MIAJ)
- 資格名:医療通訳技能検定試験(1級/2級)
- 特徴:
- ICMと連携している団体が主催。ICM認定のための登竜門的試験。
- 段階的にスキルを身につけられる設計で、学習中・実務初心者にも適している。
- 1級では高度な逐次通訳スキルと医療判断が問われます。
- 検定料
- 一次試験:7,700円(税込み)
- 二次試験:18,700円(税込み)
こちらの資格も先ほどお伝えしたICM医療通訳士の試験団体でもあります。
→ 「最終的にICM認定を目指したい」「段階的にステップアップしたい」方におすすめです。
✅ 番外編 医英検 (日本医学英語検定試験)
医療通訳の資格ではないのですが、医療英語についての資格のため番外編として紹介します
- 発行団体:公益財団法人 日本医学英語検定協会
- 資格名:日本医学英語検定試験(医英検)
- 特徴:
医療従事者・医療通訳を目指す人向けに、医療英語の知識と運用能力を客観的に証明できる検定です。 1級~4級までレベルが分かれており、自分の実力に応じて段階的に挑戦できる仕組みです。
履歴書の資格欄に書ける実績として一定の評価があります。
「医療英語力を客観的に証明したい」「通訳試験の前に英語力を確認したい」方におすすめです。
レベル、ご経歴別:最適な学習ステップ
① 医療従事者で英語初心者の場合
必要な勉強
- 医療英単語・フレーズの習得(例:解剖用語・症状表現など)
- 逐次通訳の基礎訓練(短い英文→即時訳出の練習)
- ロールプレイで現場想定練習(患者×医師×通訳役)
- 資格講座・試験の受験(JMIやMILSなど)
医療従事者の場合、日本語での疾患の説明などが可能な場合が多いため、通訳自体の練習や英語そのものの勉強が必要になります。
また医療通訳は「医療従事者の言ったことをそのまま伝える」ということが重要です。
そういった通訳と医療従事者としての経験を分けて考えるトレーニングも必要になります。
📘 おすすめ学習法
- 弊社のような医療英語特化スクールで英語でのコミュニケーションを学ぶ
- YouTubeの医療英語チャンネル(例:TedMedなど)
- 医療英語辞書アプリ
おすすめの医療英語アプリについては下記記事で紹介しております。
② 英語上級者で医療初心者の場合
医療業界初心者の方の場合は、どんな病気がどんな臓器で発生するのかという医療そのものの知識や、医師や看護師が使う用語についての理解が日本語英語ともに必要になってきます。
✅ 学習ステップ
- 病院で使われる医療表現を学ぶ
- ケーススタディを通じて状況理解(糖尿病指導・救急対応など)
- 逐次通訳とメモテクニックの習得
- 資格取得+ボランティア経験で実績を積む
今まで培ってきた英語が医療現場でも同じように使えるのかどうかということを学習する中で確かめていくことも重要です。
📘 おすすめ学習法
- 弊社HLCAのような医療英会話スクールでの勉強
- 書籍『やさしい医療英語』
- 現場の見学や医師・看護師との勉強会参加
HLCAでは医療従事者のフィリピン人がレッスンを提供していますので、実際に勉強した医療英語が自然な言い回しかどうかを直接確かめることができます。
資格なしでも医療通訳として働ける?
実は、メジャーなやり方ではないものの、「資格なし」で医療通訳の仕事に就いている人もいます。
たとえば:
- 自治体や病院の通訳ボランティアから実績を積んで採用される
- 実務経験を重視する病院やクリニックでトライアルを経て採用
- 一般通訳として登録後、医療現場への派遣に参加
- 医療従事者の場合:英語が分かる医療従事者として勤務
- 通訳経験者の場合:製薬会社の通訳、医学系学会通訳として働く
看護師さんであれば英語が話せる看護師の求人もたくさんありますし、無資格であったとしても英語が話せる医療受付、医療コンシェルジュとして働くということもできます。
とはいえ、医療現場は、患者の命に関わる現場である以上、医療の前提知識や倫理教育がないままではリスクもあります。 可能であれば、最低限の研修や講座を受けておくことをおすすめします。
実践力を高めるには?スクール・講座選びのポイント
スクールや講座を選ぶ際には、以下の観点を確認しましょう:
チェックポイント | 解説 |
医療現場のロールプレイあり | 通訳としての即応力を養えるかどうかが重要です。 |
医療従事者の講師が在籍 | 現場目線の表現・対応力が身につく |
オンライン受講可 | 忙しい社会人でも継続しやすい |
個別サポート体制 | モチベーション維持・フィードバックが得られる |
実践の場がどれくらいあるかということは、就職後のことを考えてもとても大切です。
資格は資格スクールで、そのあと実践の練習を重点的に行うという方法もあります。
以下で実際に通訳資格取得後HLCAで学習をされた方の事例を紹介しています。
✅ 弊社スクールの特長
- 医療英語に特化したオンライン学習
- 実務経験豊富な医療従事者が講師
- ロールプレイ形式でリアルな現場練習(双方英語)
- 初心者でも安心のステップ別カリキュラム
ご自身に合う学び方を、まずは無料で相談してみませんか?
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よくある質問(FAQ)
Q1. 英語力に自信がなくても医療通訳を目指せますか?
はい、大丈夫です。英語初級者向けの医療英語講座や段階的に学べるスクールもあります。 少しずつスキルを積み上げていけば、しっかりと通訳を目指せますよ。
Q2. 医療通訳の仕事はどこで見つけられますか?
主な就職先は、病院、通訳派遣会社、自治体、NPO団体などです。
最近ではオンライン通訳のニーズも増えています。
一般的な求人サイトの他に、医療通訳の派遣団体への登録で仕事が見つかることも多いようです。
Q3. 英語が得意なら医療の勉強は独学でもいけますか?
理論的には可能ですが、医療現場では独特の言い回しや倫理的配慮が求められるため、 やはり講座や研修などで体系的に学ぶことをおすすめします。
Q4. 医療通訳にはどんな英語力が必要ですか?
実際には医療英語の実践的なコミュニケーション能力が求められるので一概には言えないのですが、一般英語のスキルで表すのであればTOEICなら800点以上、英検なら準1級以上がひとつの目安になります。 ただし現場では試験スコアよりも「伝える力」「対応力」が重視されることも多いので医療英語の勉強経験や資格が評価の対象になります。
Q5. 医療通訳は副業でもできますか?
はい、可能です。派遣型やフリーランス型の通訳業務では、副業から始めて経験を積む方もたくさんいます。
Q6. 翻訳と通訳ってどう違うんですか?
通訳は「話された言葉をその場で口頭で訳す」仕事、翻訳は「文書を文字で訳す」仕事です。 医療通訳はまさに“その場”での判断と対応力が求められる分野です。
参考リンク
https://kokusairinshouigaku.jp/activities/authentication/m-interpreter/auth/auth00.html
https://www.jme.or.jp/exam/sb/outline.html
監修:海仲由美
医療英語を学べる語学学校HLCA代表。看護師として勤務後、セブに留学。その後HLCAを立ち上げ医療英語のスクール講師教育や教材作成にも自ら関わる