「ニュージーランドで薬剤師として働いてみたい」と考えたとき、気になるのが日本の薬剤師免許がそのまま通用するかという点です。オーストラリアの資格試験と混同されやすい情報や、Non-REQRという聞き慣れないルート名が出てきて、どこから手をつければいいのか分かりにくいところです。
結論から言うと、日本の薬剤師免許でそのままニュージーランドの薬局に就職することはできません。ただしPharmacy Council of New Zealand(ニュージーランド薬剤師登録機関)が定めるNon-REQRルートを踏めば、登録する道は開かれています。本記事では、Non-REQRルートの位置づけ、OPRA®とNZPLという2つの試験、英語要件、ビザ制度まで公式情報をもとに整理します。
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この記事のもくじ
日本の薬剤師免許はニュージーランドで使える?結論と登録ルートの全体像
薬剤師としてニュージーランドで働くには、Pharmacy Council of New Zealandへの登録が必要です(出典:Pharmacy Council of New Zealand公式・I want to register as a pharmacist)。日本の薬剤師免許を持っていても自動的に登録できるわけではなく、どの国の資格を持っているかで進むべきルートが変わります。
Pharmacy Councilが定める登録ルートは、大きく4種類に分かれています。
- New Zealand graduate route:ニュージーランドまたはオーストラリアのBPharm(薬学士)卒業生向け
- TTMRA route:Trans Tasman Mutual Recognition Agreement(豪NZ相互承認協定)にもとづく、オーストラリア登録薬剤師向け
- REQR:Recognised Equivalent Qualification Route。イギリス・アイルランド・アメリカ・カナダの登録薬剤師向け
- Non-REQR:オーストラリア・イギリス・アイルランド・アメリカ・カナダの5カ国以外で登録された薬剤師向け
日本の薬剤師資格は、このいずれの5カ国にも該当しないため、Non-REQRルートを通ることになります(出典:Pharmacy Council of New Zealand公式・Pharmacists from other countries)。次の章から中身を具体的に見ていきます。
日本の薬剤師はNon-REQRルート|4つの登録ルートとその分岐

Non-REQRルートは、公式には「訓練を受けた国で登録資格要件を満たしている、海外資格を持つ登録薬剤師」が対象です。日本の薬学部(6年制)を卒業し登録している人であれば対象になり得ますが、公式ページに国別リストや「日本」という国名の明記は見当たらず、個別審査で確認する必要があります。
そのため、日本の薬剤師がNon-REQRルートで進める前提として、まず次の予備審査を通過する必要があります。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①Preliminary Review (予備審査) |
Council online portalでアカウントを作成し、「My forms」内の「Preliminary Review Application」から申請。承認されるとNon-REQRルートで進めることが確定する |
| ②OPRA®とNZPL | Preliminary Review承認から2年以内に、OPRA®とNZPLの2試験に合格する(順不同) |
| ③登録 | 試験合格後、Pharmacy Council of New Zealandへ正式に登録申請を行う |
この3段階の中で押さえておきたいのが、②の「2年以内」という期限です。OPRA®とNZPLのどちらから受けても構いませんが、2年という期間を意識してスケジュールを組む必要があります(出典:Pharmacy Council of New Zealand公式・Pharmacists from other countries)。申請時には非返金の申請料の支払いが必要ですが、具体的な金額は公式ページ上に明記が見当たらないため、申請前に最新の案内で確認してください。
OPRA®とNZPL|Non-REQRで求められる2つの試験
Non-REQRルートで必要な2試験は、実施機関も内容も異なります。
OPRA®(Overseas Pharmacist Readiness Assessment)
OPRA®は、Australian Pharmacy Council(オーストラリア薬学会)が実施する試験で、Non-REQRルートで進む場合はOPRA®への合格が求められます。ニュージーランドの候補者向けの専用ページが用意されています(出典:Australian Pharmacy Council公式・New Zealand OPRA exam)。実施機関はオーストラリアの薬剤師登録と同じAustralian Pharmacy Councilですが、試験の仕様や合格結果がニュージーランド向けにどう扱われるかは別ページでの確認が必要です。この点は後述する「豪州ルートとの違い」でも関わってきます。受験料や出題形式の詳細は、公式ページで直前に確認することをおすすめします。
NZPL(New Zealand Pharmacy Legislation Course)
NZPLは、University of Auckland(オークランド大学)が実施するコースです。ニュージーランドの薬事に関する法律・倫理・専門職としての責任を扱う内容で、OPRA®が「薬剤師としての知識・実務能力」を評価する試験であるのに対し、NZPLは「ニュージーランドという国の制度・ルールを理解しているか」を確認するものという位置づけです(出典:Pharmacy Council of New Zealand公式・Pharmacists from other countries)。順不同で受験できますが、いずれもPreliminary Review承認から2年以内に合格する必要がある点は共通です。受講費用は公式ページ上で明記が確認できなかったため、University of Aucklandの案内で直接確認してください。
英語要件|IELTS・OETで満たす基準

Pharmacy Council of New Zealandは、英語要件として次の2つの試験と基準スコアを定めています(出典:Pharmacy Council of New Zealand公式・English language requirements)。
| 試験 | 必要スコア |
|---|---|
| IELTS(Academic) | Listening・Reading・Writing・Speakingの4技能すべてで7.0以上 |
| OET | 4技能すべてでAまたはB |
いずれのスコアも申請日から2年以内に取得したものが対象です。オーストラリア・カナダ・アイルランド・イギリス・アメリカでの登録者は英語要件の提出が免除されますが、日本の資格保有者は免除対象外のため、IELTSまたはOETのいずれかで基準スコアを満たす必要があります。
1技能だけ基準に届かなかった場合の救済として、IELTS One Skill Retake(1技能のみの再受験)が用意されています。受験日から60日以内に1回に限り受理される制度です(出典:同上)。OETは医療現場に近い場面設定が特徴で、IELTSは汎用性が高い一方、対策とは別に医療現場の語彙・表現の練習が必要です。
Preliminary Reviewから登録までの流れ
登録までの流れを整理すると次のとおりです(③④の順序は一例で、OPRA®とNZPLはどちらから受けても構いません)。
- Council online portalでアカウントを作成し、Preliminary Reviewを申請する
- Preliminary Reviewの承認を受ける(Non-REQRルートで進めることが確定)
- OPRA®(Australian Pharmacy Council実施)を受験する
- NZPL(University of Auckland実施)を受講・合格する
- IELTSまたはOETで英語要件を満たす(申請日から2年以内のスコア)
- Pharmacy Council of New Zealandへ登録を申請する
見落としやすいのが、②から③④の合格までの「2年以内」という期限です。両方の合格がこの期限内に収まるよう逆算して準備しましょう。制度は改定されることがあるため、最新の内容はPharmacy Council of New Zealandの公式ページで確認してください。
Green List Tier 1|ニュージーランドのビザ制度上の優位性

ニュージーランドでの薬剤師就労を考えるうえで、他国の記事にはあまり出てこない重要な要素が、ビザ制度上の位置づけです。薬剤師はImmigration New Zealandが定めるGreen List Tier 1に含まれており、対象となるANZSCOコードはHospital Pharmacist(251511)・Industrial Pharmacist(251512)・Retail Pharmacist(251513)です(出典:Immigration New Zealand公式・Green List occupations)。
Green List Tier 1は「Straight to Residence」と呼ばれる区分で、就労を始める前の段階で居住権(レジデンス)を申請できるという特徴があります。登録要件としては「Pharmacy Council of New Zealandへの登録」と「Bachelor of Pharmacy(薬学士)」が明記されています(出典:同上)。日本の6年制薬学部の学位がこの要件を満たすかどうかは公式ページ上で明言されておらず、個別に確認が必要です。
また、Health New Zealand(Te Whatu Ora)が病院薬剤師向けに登録費用の払い戻し等を含む移住支援を行っている場合があるという情報もありますが、公式サイト上での詳細確認ができていないため、対象条件や支援内容は求人ページや公式サイトで個別に確認してください。
豪州ルートとの違い|実施機関は同じ、登録先とビザが違う
ニュージーランドの登録プロセスは、オーストラリアの薬剤師登録情報と混同しやすい面があります。OPRA®という試験名はオーストラリアの登録でも使われており、実施機関のAustralian Pharmacy Councilも共通しているためです。ただし試験の仕様や合格の扱いがニュージーランドと豪州で同一とは限らない点には注意が必要です。両国のルートを比較しておきます。
| 項目 | ニュージーランド | オーストラリア |
|---|---|---|
| OPRA®実施機関 | Australian Pharmacy Council | Australian Pharmacy Council |
| 登録先機関 | Pharmacy Council of New Zealand | Pharmacy Board of Australia(AHPRA) |
| NZ固有の追加試験 | NZPL(University of Auckland)が必要 | 該当なし |
| ビザ区分 | Green List Tier 1(Straight to Residence) | 豪州側の技術職ビザ制度(本記事の対象外) |
この比較のとおり、OPRA®の実施機関そのものは共通していますが、登録する機関、追加で必要な試験(NZPL)、ビザ制度は別物です。TTMRA(Trans Tasman Mutual Recognition Agreement)は、すでにオーストラリアで登録済みの薬剤師がニュージーランドへ登録する際の相互承認ルートです。これは冒頭の「TTMRA route」に該当する話で、Non-REQRルートとは別の道であり、OPRA®に合格しただけでTTMRAの対象になるわけではありません。豪州登録後に、TTMRAルートでのNZ登録手続きを確認できるという位置づけです。
すでにオーストラリアでの登録を検討している場合は、「先に登録してからニュージーランドでの登録手続きを確認する」という二段構えのキャリアも選択肢に入りますが、これは自動的な移行ではなく、TTMRAルートの手続きを別途踏む必要があります。どちらの国から始めるかは希望地域によって変わるため、両国の制度を比較して検討することをおすすめします。
英語要件と試験対策を両立する学習の進め方
OPRA®・NZPLの学習と、IELTS・OETのスコア対策は別の準備が必要です。試験でスコアを取ることと、実際に薬局・病院で患者さんに服薬指導ができることは求められる力が異なります。
現場で薬剤師に求められる英語には、処方内容の説明、副作用への対応、併用薬やアレルギーの聞き取りなどの場面があります。
Please take this tablet twice a day, after meals.
このお薬は1日2回、食後に服用してください。
OETは医療現場の場面設定を試験に取り入れているため、対策がそのまま現場での実践練習にもつながりやすい試験です。IELTSのような汎用的な試験を選ぶ場合は、対策とは別に医療現場で使う語彙・表現の練習を並行して進める必要があります。
服薬指導で使う具体的な英単語やフレーズは薬剤師の医療英語をまとめた記事で例文とあわせて整理しています。あわせてご覧ください。
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薬剤師のニュージーランド就労についてよくある質問
Q. 日本の薬剤師免許があれば、そのままニュージーランドで働けますか?
いいえ、そのままでは働けません。Pharmacy Council of New Zealandへの登録が必要で、日本の資格保有者はNon-REQRルートを通ることになります。
Q. OPRA®とNZPLは、どちらから受験すればよいですか?
順不同で受験できます。ただしPreliminary Reviewの承認から2年以内に両方に合格する必要があるため、スケジュールを逆算して準備することが大切です。
Q. オーストラリアで薬剤師として登録していれば、ニュージーランドでも同じ試験が必要ですか?
オーストラリアで登録済みの薬剤師は、TTMRA(Trans Tasman Mutual Recognition Agreement)という相互承認ルートを通ることができます。ただしOPRA®合格だけで自動的に対象になるわけではなく、Non-REQRルートとは異なる手続きになるため、詳細はPharmacy Council of New Zealandの公式ページで確認してください。
Q. 英語のスコアはIELTSとOET、どちらを選べばよいですか?
どちらも基準を満たせば有効です。OETは医療現場に近い場面設定が特徴で、IELTSは汎用性が高い試験です。
Q. 費用や所要期間はどれくらいかかりますか?
Preliminary Reviewの申請料、OPRA®の受験料、NZPLの受講料など複数の段階で費用が発生します。具体的な金額や標準的な所要期間は公式ページで明記が確認できなかったため、最新案内で直接確認してください。
まとめ|Non-REQRルートを理解し、英語要件から準備を始める
日本の薬剤師免許でそのままニュージーランドの薬局に就職することはできませんが、Non-REQRルートに沿ってPreliminary Review・OPRA®・NZPL・英語要件を満たせば、働く道は開かれています。特にOPRA®とNZPLの合格には「Preliminary Review承認から2年以内」という期限があり、見落とさずに準備を進めることが重要です。
ニュージーランドは薬剤師がGreen List Tier 1に指定されており、就労前に居住権を申請できるという制度上の優位性もあります。オーストラリアでの登録経験がある場合は、TTMRAルートによるニュージーランドへの登録手続きという選択肢も視野に入りますが、これは自動的な移行ではなく別途手続きが必要です。英語要件はIELTS・OETいずれかで基準スコアを満たす必要があり、試験対策と現場で使う英語力は別の課題として両方を準備しておく必要があります。
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最終更新日:2026年8月30日
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