ベトナムの看護師は日本とどう違う?資格、求人、給料も徹底解説!

nico〔ニコ〕
公開日:2020.04.15
更新日:2020.04.24

近年日本で働く人口が増加中のベトナム人。

看護師も例外ではなく、2020年3月までに89人のベトナム人が日本の看護師国家資格に合格しています。

今後も増えていくと予想されるベトナム人看護師への理解を深めるため、本記事ではベトナムの看護師の現状や、日本との違いを比較!

さらに、ベトナムで働きたい日本人看護師に向けて、ベトナムで働く方法も詳しく紹介していきます!

ベトナム人看護師についてもっと知りたい方や、ベトナムで活躍したい看護師は必見です!

ベトナムの看護師の現状

ベトナムでは看護師に関する情報発信はあまり行っておらず、外国人が得られる情報は多くありません。

ですが、それはまだベトナムの看護師という職業が発展途上だからだということが、日本の団体が行った研究ベトナムの法律から分かってきました。

各情報について詳しく見ていきましょう!

【歴史】「看護師」ができたのはたった40-50年前!?

日本ではもはや「いて当たり前」の看護師ですが、ベトナムではつい40-50年前まで看護師という仕事が認識されていませんでした。

ベトナムの看護は、ベトナム戦争(1960-1975)中に「応急手当」と「救急時ケア」への対応で発展し、看護師の役割は医療補助者として、薬剤の投与や傷の手当など 技術的な仕事に限られていた。(中略)1990年代に入りベトナム看護協会が発足し、ベトナムの看護師は看護の専門性、自主性を高めるために海外からの支援を受け共同で取り組んできた

(引用元:ベトナムにおける看護教育の現状と看護師の役割 -N看護大学での調査より-

この調査から、

  1. ベトナムで「看護」が認識され始めたのは1960年代
  2. ベトナム看護協会」が発足したのは1990年代

だと分かります。

1887年ごろに初めて「看護婦養成所」が設立され、1946年には「日本看護協会」が発足していた日本と比べると、ベトナムの看護師の歴史は比較的浅いとも言えます。

もちろん歴史の長さが必ずしも重要というわけではありません。

ですが、ベトナムで「看護師」は比較的新しい職業だと知っておけば、日本とベトナムの看護観に違いがあっても受け入れやすくなるはずです。

【資格】看護師の国家資格はない!

日本では准看護師試験や国家試験を受けることで准・正看護師になることができますが、ベトナムには「看護師の資格」というものがありません。

その代わり設けられているのが、「医療従事証明書(medical practice certificates)」です。

ベトナムの「診断と治療の法律(LAW ON MEDICAL EXAMINATION AND TREATMENT)」によると、医療従事証明書は以下の職業が取得対象になります。

  1. 医師
  2. 看護師
  3. 助産師
  4. 技術者
  5. ハーバリスト
  6. 家庭ハーブ療法の所有者

日本では医師免許と看護師資格は異なるものですが、ベトナムでは同じ証明書を取得することになっているのです。

ただし、医療従事証明書を取得するには

  1. 専門教育を修了する
  2. 9か月間の臨床研修を行う
  3. 医療従事証明書を保健省もしくは各省の保険局から交付してもらう

の3ステップを踏む必要があり、1の「専門教育」で医師と看護師は異なる教育を受けることになります。

では、ベトナムの看護師はどのような教育を受けているのでしょうか?

高等学校で1年間の専門教育を受ける「初級看護」、高等学校卒業後に2年間の専門教育を受ける「中級看護」、3年間の専門教育を受ける「高等看護」、4年間の専門教育を受ける「学士看護」がある。さらに、修士・ 博士課程の開設、内科・外科・産科・小児科の専門看護師養成課程の開設が進められている。

(引用元:ベトナムにおける看護教育の現状と看護師の役割 -N看護大学での調査より-

つまり、ベトナムでは履修した看護教育の年数で看護師の分類が変わるということです。

  1. 初級看護:高校で1年間
  2. 中級看護:高校卒業後2年間 ※日本でいう「専門学校」
  3. 高等看護:高校卒業後3年間 ※日本でいう「短大」
  4. 学士看護:高校卒業後4年間 ※日本でいう「大学」
  5. 修士看護:大学院で博士課程を修了

同調査によると、最も一般的なのは中級看護。

学士看護まで修得できると教育機関の教員や高次医療施設の幹部候補になることができ、いわゆるエリートとして就職できるそうです。

学校卒業後、実際に臨床で9か月の研修を行い、初めて医療従事証明を取得できます。

日本では試験に合格してから臨床に入るので、資格を得る前に臨床研修をするのは驚きですね。

ただ、教育カリキュラムや卒業試験、臨床研修の内容は各施設で異なります。

看護師の基礎教育制度は保健省と教育訓練省で定めているが,具体的カリキュラムや卒業試験の内容は各教育機関で定められている.また,卒業後の臨床研修も施設により差があり,看護師国家試験もない.看護の質保証の面で問題はあるが,ベトナム国内の地域の状況によって柔軟性が重要であるとの考え方もある.

(引用元:ベトナムにおける保健医療および看護の現状

地域ごとに柔軟な人材育成ができる一方、統一された基準がないことが問題視されているようです。

日本をはじめ、タイフィリピンといった近隣諸国も全国統一の国家試験があることを考えると、施設ごとに基準が異なるのはベトナムならではの特徴だと言えます。

【看護体制】ベトナムは圧倒的な看護師不足

「看護師不足」は日本でも叫ばれていますが、ベトナムはもっと深刻です。

ベトナムにおける2018年の看護師数:13人/人口1万人(引用元:経済産業省

これは、新宿区(人口33.76万人)に438人しか看護師がいない計算になります。

新宿には看護師だけで1,000人以上いる大学病院もあることを考えると、いかにベトナムの看護師が足りないかお分かりいただけるのではないでしょうか。

人材不足はベトナムの看護業務に大きな影響を及ぼしています。

国立病院は慢性的な人材不足で,看護体制も整備されておらず,看護学生も看護師の指示のもと現場業務を行っている.さらに,診療会計や物品資材の受注も看護師の業務である.

ベトナムでは家族が患者の身の回りの世話,点滴管理,経管栄養管理,排泄介助等をすることが一般的で,患者の安全性や家族への二次感染が問題視されている.

(引用元:ベトナムにおける保健医療および看護の現状

入院中に食事が提供されない医療機関が多く、家族が食事を準備し排泄や清潔等の世話もすべて家族が行っている。

(引用元:ベトナムにおける看護教育の現状と看護師の役割 -N看護大学での調査より

なんと、ベトナムでは看護師が足りな過ぎて

  1. 食事の準備
  2. 清潔介助
  3. 排泄介助
  4. 点滴管理
  5. 経管栄養管理
  6. その他身の回りの世話

を家族が行っているのです!

これって看護師の仕事のほぼ全てでは?」という気もしますが、会計業務や資材発注も行わなければならないベトナムの看護師は手が回らないのでしょう。

日本ではクラークさんや助手さんにお願いできることを考えると、ベトナムの看護師がいかに余裕のない状況か分かります。

家族への感染だけでなく、院内感染や患者の転倒など、リスク管理が行き届かない点は心配ですね。

今後人材が確保されて変わっていくと期待したいところです。

【給与】10年目の看護師で平均月給10万円!

そんなハードな状況で業務をこなすベトナムの看護師ですが、一体月にいくらもらえているのでしょうか?

日本の看護師と比較してみましょう!

ベトナムの看護師の平均月収:14,100,000VND≒65,000円(引用元:salaryexplorer

日本の看護師の平均月収:331,900円(引用元:年収ガイド

単純に比較すると、ベトナムの看護師の給与は日本の看護師の約5分の1となります。

これだけ聞くと非常に厳しい印象を受けますが、国全体の平均給与と比べるとどうなのでしょうか?

・ベトナムの平均月給:17,400,000VND≒80,000円(引用元:salaryexplorer

・日本の平均月収:389,4000円(参考:国税庁

こうして比べて見ると、ベトナムも日本も看護師の平均月収は全体平均のやや下で、国全体で見ればあまり変わらないことが分かります。

ベトナムの看護師も日本の看護師と同様、経験年数に応じて給与が上がっていくことが多いようです。

  • ・0~2年目:8,560,000VND≒40,000円
  • ・2~5年目:10,500,000VND≒48,000円
  • ・5~10年目:14,900,000VND≒69,000円
  • ・10~15年目:17,400,000VND≒80,000円
  • ・15~20年目:19,100,000vnd≒88,000円
  • ・20年目以上:20,200,000vnd≒100,000

(引用元:salaryexplorer

大体10年目で全体の平均月収を上回っていくようですね。

日本の看護師の場合、全体の平均年収を上回るのは50代に入ってからというデータがあります。

・50~54歳男性看護師の平均月収:387,400円

・50~54歳女性看護師の平均月収:362,200円

(引用元:年収ガイド

男性看護師はここからさらに給与が上がるのに対し、女性看護師は362,200円がピークで、以外にも全体の平均月収は超えていませんでした。

結婚・妊娠などでキャリアが途切れることも影響しているのかもしれません。

国全体で見るとベトナムの看護師の給与はあまり悪くない印象を受けますが、圧倒的な人材不足なので、業務量と給与が見合っているかは疑問が残るところです。

日本との違いを比較!

ベトナムと日本の看護師の違いをまとめると、以下の表のようになります。

ベトナム 日本
看護協会ができた年 1990年代 1946年
資格 医療従事証明書(medical practice certificates) 国家資格もしくは准看護師免許
資格取得する時期 臨床に出てから 臨床に出る前
資格取得の基準 地域や施設で差がある 全国で統一されている
看護師の種類 初級看護、中級看護、高等看護、学士看護、修士看護の5種類 正看護師、准看護師の2種類
看護業務 看護師が圧倒的に不足しており、業務の大部分を患者の家族が行っている 看護師不足は叫ばれているが、患者の家族に業務を任せることはない
会計業務 看護師が行う 医療事務が行う
資材発注 看護師が行う 看護師もしくは助手が行う
給与 約80,000円/月(全体の平均給与よりやや下) 389,4000円(全体の平均給与よりやや下)

ベトナムの看護師は、日本とは全く違う基準のもと業務を行っていることを理解する必要がありますね。

ベトナムで看護師として働くには?

ベトナムでは、外国人がベトナム国内で医療従事証明書を取得する方法について「診断と治療の法律」の第18、19、23条で定めています。

要約すると、

  1. ベトナム国内で付与もしくは認められた医療専門の卒業証書を所有している
  2. ベトナム語が堪能もしくは施設に通訳者が設置されている
  3. 犯罪歴がない
  4. 労働許可証(ワーキングビザ)を取得している

ということが取得の条件になります。

ベトナムで看護資格を取得する場合

診断と治療の法律」とベトナムの看護教育体制を踏まえると、ベトナムで看護資格を取得する場合は

① ベトナム語を習得する

② 外国人を受け入れている学校を見つけ、学生ビザで入学

③ 卒業後に労働許可証を申請

④ 9か月の臨床研修を行う

⑤ 医療従事証明書を取得

という流れになると予想されます。

ただし、実際にベトナムで医療従事証明書を取得した日本人は見つけられませんでした

ベトナム語習得の必要性や看護資格の統一性などを考慮すると、日本で看護資格を取得するのがおすすめです。

日本の看護資格がある場合

ベトナムで働く全ての外国人は労働許可証を取得しなければなりません。

それには以下の条件を満たす必要があります。

管理者、代表取締役社長、専門家若しくは技術的な労働者であること。

(引用:ベトナムで就労する外国人労働者に関する労働法の一部条項の詳細規定の政令

このうち、看護師は「専門家」に属すると考えられます。

3. 専門家とは、次のいずれかの場合に該当する外国人労働者をいう。

a) 外国機関、組織、企業が専門家であると認定した証明書を有する場合

(引用元:ベトナムで就労する外国人労働者に関する労働法の一部条項の詳細規定の政令

労働許可証申請時に

  1. 無犯罪証明書
  2. 大学卒業証明書や職務履歴書など、資格を証明できるもの

を必要書類と併せて提出することで、先述の

  •  ベトナム国内で付与もしくは認められた医療専門の卒業証書を所有している

という項目も満たすことになり、ベトナム国内で看護師として働けるようになるのです。

ベトナム語は施設によって通訳を設置していることもあり、必ずしも必須ではありません。

日本の資格を使って働けるのはうれしいですね。

ベトナムにはどんな看護師求人がある?

では、ベトナムには実際どんな看護師求人があるのでしょうか?

ベトナムの看護師求人例

とある求人サイトに載っていた看護師求人をご紹介します。

(引用:Learn 4 Good

この求人では、以下が主な条件です。

  1. 学士号を所有している
  2. 最低3年の看護師経験がある
  3. 公立病院での勤務経験があると好ましい
  4. ベトナム語と英語でスムーズな会話が可能
  5. 日本語もしくは韓国語が話せる

具体的な勤務先は掲載されていませんが、英語が条件であることを考えると、おそらく外資系の病院です。

日本語スキルが条件であることは日本人にとってアドバンテージですが、ベトナム語や英語は別でマスターする必要がありますね。

日系の病院も求人を出しています。

(引用:CAREER MARKET VIETNAM

言語不問で給与も2,400USDなど、なかなか好条件の求人です。

ベトナムで看護師をしてみたい人は、日系の病院を探してみるのも良いでしょう。

看護師ボランティアも求められてる!

ベトナムでは看護師インターンやボランティアの需要もあります。

世界50か国以上に活動拠点を持つProjectsAbroadでは、ハノイの総合病院を中心に以下の活動を行っています。

・医療現場での視察を通した学習

・外科手術前の準備~術後の看護の補助

・地域各所での国際医療支援活動

・医療ワークショップでの学習

(引用元:ProjectsAbroad

インターンシップなのであくまで「看護の補助と学習」というイメージですが、ベトナムの看護を学び、看護師を助けるという意味では有意義な活動になるでしょう。

goecoという団体はホーチミンの病院でボランティア活動を行っています。

具体的なタスクとしては、

  1. 血圧測定
  2. 患者の観察
  3. 患者の状態の観察、記録、分析
  4. 病棟での手伝い

が挙げられています。

こちらでは「看護師」としての業務を実践できますね。

ベトナムの看護に貢献したいという人はボランティアを利用するのもおすすめです。

まとめ:看護が発展途上のベトナムでは日本の看護師が大きく貢献できる!

ベトナムの看護師の仕事はまだまだ発展途上で、日本とはギャップが大きいかもしれません。

ですが、その分日本の看護師として共有できる知識や技術も多いはずです。

日本で働くベトナム人看護師に対してさらに理解を深めるのはもちろん、ベトナムなら日本人でも看護師として働くことができます。

多くの病院で必要とされる英語をマスターして、ベトナムで看護師経験を積んでみてはいかがでしょうか?

HLCAのグローバル看護師育成コースでは、医療英語を学び、それを実際の医療現場で実践する機会があります。

実際にこの目で途上国の現場を見てみたい!

また、医療英語のスキルを身に着けて医療通訳として働いてみたい!という方は、是非一度お問い合わせください!

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この記事を書いた人
nico〔ニコ〕

大学卒業後、病院で3年間看護師として勤務し現在はベトナムに移住。医療従事者としての経験、海外居住の経験から日本人医療従事者も英語を学ぶべきと痛感。そのような経験からHLCA BLOGにて医療英語の必要性や海外の医療現場の情報を発信しています。