医療英語学校HLCAでは、英語を学びたい医療者のためのオンラインレッスンを提供しています。
今回は、社会福祉士、精神保健福祉士の石村さんへのインタビューです。
大学病院勤務中「福祉の専門家として、医師や看護師とは違う視点での外国人サポートが必要」と感じた石村さん。
医療通訳としての資格取得にチャレンジし、ハルカのレッスンを受けながら医療通訳技能認定試験(専門)に合格されたそうです。
今回は、福祉分野での医療英語の必要性と、医療通訳になるための学習についてお聞きしました。
社会福祉関係や医療事務の方、医療通訳を目指す方はぜひ参考にしてみてください。
※追加 (2023.10)
このインタビューから1年後、病院の医療通訳へ応募し、合格されました。
本業に支障のない範囲で、医療通訳(副業)としてご活躍されているそうです!
- 名前:石村さん
- 年代:50代
- 職種:社会福祉士、精神保健福祉士
- 開始時の英語レベル:英検2級、TOEIC740点、中級者
- レッスン受講頻度:96チケットで週2回
この記事のもくじ
社会福祉士の視点から「医療英語が必要」と実感し、学習をスタート
ーーー今日はインタビューに応じていただきありがとうございます。簡単に自己紹介をお願いします。
石村と申します。
HLCA受講者の中では異色かもしれませんが、私は福祉の専門職で社会福祉士、精神保健福祉士の国家資格を持っています。
医療通訳を目指して、HLCAで医療英語の学習を始めました。
ーーー石村さんが医療英語を学ぼうと思った理由について教えてください。
以前、大学病院に勤めていたとき、インバウンド効果で外国人の患者さんが多くなりました。
地域のクリニックから「大きな病院であれば、外国人患者さんを診てくれるだろう」「大病院なら英語が通じるだろう…」と、外国人の患者さまが紹介されてきます。
また、三次救急なので重症な患者さまも多く、治療終了後の自国への転退院調整など、ドクターやナース以外のサポートが必要になってきました。
例えば、旅行保険はあるのか、旅行代理店のサポートはあるのか、ビザの有効期間、家族や親類と連絡はつくのか、支払いはどうするのかなどです。
こういった場合、英語ができる人が求められます。
もともと英語が好きな私は、外国人対応をよく任されていました。
社会福祉士は、医師からの退院指示で転院や退院調整をします。
医師から病状説明や治療方針の説明、転退院に向けての説明があるのですが、当時の私は臓器や薬の名前などもわからず、日本と医療システムの異なる外国人患者さまへの説明、外国の保険会社への対応などに苦慮していました。
そこで必要に迫られて医療英語を学習をしようと思いました。
ーーー患者さまの社会的サポートをする立場だからこそ、英語でのコミュニケーションが必要なのですね。
そうですね。最近は、スマホアプリなどの翻訳機能も向上していますが、細かいニュアンスが伝わらないことが多いと感じています。
医療英語のレッスンで、そういった微妙な言い回しも含めて学んでいます。
医療英語のレッスンで、日本の医療システムや受診援助の通訳について学習
ハルカのテキスト(例)
ーーー石村さんは、ハルカでどのようなレッスンを受けているのですか。
病名や臓器、医療機器などの医療用語をはじめ、日本の医療システムや転退院について、外国の方にわかりやすく伝える方法について学びました。
ーーー英語レッスンのスケジュールについて教えてください。
毎週土曜日に2レッスン連続、1ヶ月あたり8レッスン入れています。
初めは、講師の言っていることはわかるのですが、こちらの言いたいことが上手く伝えらず、とても歯がゆい思いをしました。レッスンが終わるとゲッソリ疲れていました。
そんな時は文法を気にせず、とにかく体当たりで、言葉を並べて伝えてみました。
講師か”So,do you want to say 〇〇?”と言語化してくださるので、何度もそのやりとりを繰り返し、最終的に相手に少しは伝えることができていました。
慣れると2時間があっという間に感じるようになりました。
ーーーレッスンの予習復習はどのように取り組んでいますか。
仕事をしていると学習時間を取るのも一苦労です。
毎週あっという間に土曜日が来て、朝起きてから一通り家事や用事などやるべきことをやった後、授業開始の1時間くらい前に宿題に取り組んだり、テキストを読んだりしています。
事前準備はあまりしていません(できませんでした)。
ハルカの医療通訳向けテキスト(例)
ーーーレッスン全体を通して、印象に残っている話はありますか。
フィリピンの病院や医療システムの話は印象的でした。
例えば、国民皆保険ではないこと、病院に消灯時間がないことや、家族が帰宅すべき面会時間がないこと、食事の持ち込み制限がないことなどです。
日本では21時消灯の病院が多いことを伝えると「信じられない!」と言われたこともあります。
外国人患者の増加で「福祉の資格だけでは足りない」と感じ、医療通訳を目指すことを決意
ーーー病院で社会福祉士として働いていたとのことですが、そこから医療通訳を目指そうとした理由を教えてください。
病院で英語を話す役割を担うことが多かったのですが、医療専門の内容を話すには福祉の国家資格だけでは足りません。
そこで、医療通訳の試験を受けることにしました。
他国で病気やケガをした時の心細さは世界共通だと思うので、そういうところで少しでも自分の英語力が役に立てばと考えています。
ーーー奉仕精神が旺盛でいらっしゃいますね! 医療通訳になるためには資格や試験が必要なのでしょうか。試験について簡単に教えてください。
医療通訳の民間認定試験は今のところ3つあります(日本医療教育財団、通訳品質評議会、日本医療通訳協会)。
これらが国際臨床医学会認定通訳士(ICM)の医療通訳試験実施団体として認定されているようです。
外国人患者対応のニーズが高まる中で、2020年に「医療通訳士」という認定資格ができました。
国家資格ではありませんが、一定のレベルに達した人に資格を与えるということで作られたものだそうです。
「医療通訳」は大切な職業だと思うのですが、これだけで食べていくのは難しいです。
私たちの活躍が認められる中で、HLCAの卒業生からも医療通訳を目指す方が増え、どの病院でも当たり前に外国人対応ができる時代になれば理想的ですね。
通訳は「医師や患者さんの言葉に余計なことを足さない・引かない」「病気だけでなく患者さん本人のことも理解する」「相手がおっしゃることを正確に理解してから通訳する」など専門的なスキルが必要になります。
医療通訳での実務経験が足らない私は、医療通訳技能認定試験の受験資格を得るために、1年間の医療通訳養成講座を受講する必要がありました。
内容としては、医療通訳の概要や医療知識全般、多言語コミュニケーションなどです。
養成講座の授業の中で、実際の通訳場面を想定したロールプレイがあります。
これが実技研修となりますが、1人あたりの練習時間は2,3分のみで実際の現場で役立つスキルを身につけるには全然足りないんです。
ーーーそうなると、講座以外でスピーキングの時間が必要ですね。
そうですね。講座内の練習時間だけでは足りなかったです。
ロールプレー以外にも、医療通訳サービス会社を見学する機会があり、リモートで病院と通訳者を繋いでの医療通訳の場面も拝見させていただきました。
見学をする中で、通訳者はいつでも正確な通訳を求められること、言い間違いが訴訟問題にもなり得ることなども知りました。
ーーーそのほか、試験に備えてどのように学習したのですか。
医療通訳養成講座で使用したテキストを活用して和語→英語への英訳をして、講師に添削してもらいました。
また、医療場面のフレーズなどのCDを聞いて、耳で覚えました。
例えば「〜の検査を始めます」「検査の結果〜でした」「〜の治療をします」などですね。
初診から治療、観察など、30診療科にまつわる医療英単語や検査なども覚えました。
そのほか、テキストに書いてあったことをハルカのレッスンで活用しました。
ーーーハルカで学んだ医療通訳の英語はどうでしたか?
日本語のテキストにある言い回しのうち、実際の外国人は使わない表現と言われたものがあります。
例えば「腫れて熱をもっている」という表現は、hotnessではなくwarm and swallen、薬を保管すると言いたいときは、keepでなくstore、涼しくて湿気のない場所はcool and dry、などです。
ーーー実際の現場で役立ちそうな表現を学習されていますね。
通訳をするにあたり、ハルカの講師からはいつも『layman’s terms(素人でも分かる言葉)で』を使うように言われていました。
医療者としての専門用語に加え「一般の患者さんはどんな言葉を使うと理解しやすいのか?」を学べました。
講師は、日本人である私にどう説明すればより私が理解できるのかを考えてレッスンを進めてくださっています。
弱点を把握してくれることにも長けていると感じました。
その日の学習トピックや私の答えから更に話題を広げてくれることもありました。
ーーー英訳した教材はどのように使っていたのでしょうか。
前もって英語で送ったものを、レッスン中に添削してもらいました。
肺機能検査であれば「息を吸って、吐いて」などを英語に翻訳し、それが正しいかフィリピン人講師にみてもらいます。
そのほかは、医療通訳テキストのエッセイを読んだ感想を英語でA4用紙1枚にまとめ、添削してもらったこともあります。
修正点は多いですが、非常に勉強になりました。
文章表現、適切な言葉の選び方など、なるほど!と思うことばかりです。
ーーー通訳の学習をするにあたり、英語のみを話す(日本語を話せない)講師とのレッスンはいかがでしたか?
希望としては、実際の医療通訳の現場に近い形で、英語を話す講師と私ともう1人、合計3人体制で授業ができればさらによかったかとは思います。
とはいえ、ネットで調べればだいたいのことは分かります。
レッスン中は、日本語のテキストよりもリアリティーのある英語表現を学べたのでとても助かりました。
ーーー医療通訳技能認定試験の専門に合格したと他のスタッフから聞いています。基礎と専門があるようですが、より難易度の高い専門コースに合格されたのですね。おめでとうございます!
医療通訳養成講座を2019年から1年間受講した後、ハルカで英語学習をするかどうか非常に迷いましたが思い切ってチャレンジしました。
受講にあたり、まとまったお金を出すのは勇気がいりました。
でも、少しずつ学習を続け、3年越しで夢が叶いましたね。
医療通訳技能検定試験を受験する方は少なく、ネット上に体験談もなく、自分が合格できるかどうかは未知数でしたが、やるからには落ちるのは嫌だなと思って全力集中しました。
医療通訳試験へ合格後、福祉災害派遣チームDWATへ登録
ーーー試験へ合格するため、かなり努力されたのですね! 英語はいつ必要な時がくるかわからないですよね。
そうですね。ですが、合格をきっかけに、福祉職の災害派遣チーム”DWAT”に登録することができました。
医療者の方は、災害救援医療チームのDMAT(Disaster Medical Assistance Team)を知っていると思います。
これの福祉版がDWAT(Disaster Welfare Assistance Team)です。
DWATには、社会福祉士のほか、介護福祉士、理学療法士、福祉系の施設で慢性期のケアをする看護師などが入ることがあります。
有資格者によるチームとして、熊本地震の時は体育館の中でリハビリをする、介護予防体操などの取り組みがありました。
こういったチーム内では、英語のできる社会福祉士という立場で、一般避難所で長期化する避難生活の中でリハビリをや介護予防体操、生活相談の支援をします。
今後は、医療通訳や災害時の英語対応ができる社会福祉士として活躍したい
ーーーハルカで学習した医療英語はどのように継続していかれる予定ですか。
災害時に招集されたら、語学ボランティア兼社会福祉士という立場で、外国人向けのサポートもできるのではないかと考えています。
そのためにもまずは、語学力を維持することが課題です。
これまでは週に2時間、HLCAで学習の機会を確保していましたが、今後は、ハルカの講師に勧められたVOA(Voice of America English News)のニュース記事やNHKの英会話を使い、日常生活の中で英語の時間を確保していこうと思っています。
ーーー石村さんは、医療英語を長期に渡り学習されたかと思います。これから医療英語を学習したい方におすすめの学習法があれば教えてください。
簡単にできることは、日本語で思いつくフレーズを英語に置き換えてみることでしょうか。
例えば「肩が痛い」「コンタクトで目にキズができた」、バスで円背の高齢者を見たら「”円背”って英語でなんというんだろう?」など。
ネットで検索するといろいろな言い方が出てくるので、それを覚えるだけでも言い回しは増えます。
あとは、そこで学習した英語をアウトプットする場としてオンライン英会話を活用するとよいと思います。
ーーー最後に、ハルカで学んだ英語を活用して今後どのようなことに挑戦したいですか。
ボランティアで活躍するとしたら、医療通訳や、災害時の避難所に来る外国人の健康管理サポートなどができたらと考えています。
立場的には、看護師や保健師がメインで問診すると思いますが、そこに「医療英語」を使って関われたらと思います。
福祉の専門家として、医療英語を生かして活躍の幅を広げていきたいですね。
ーーー今回は貴重なお話をありがとうございました! 社会福祉士視点での医療英語の必要性、通訳の学習方法など、多くの話を聞くことができました。今後のご活躍を心より応援しています!