年々難易度が増していると言われる日本の医学部受験。
偏差値は最低でも62~63必要で、偏差値63.3の金沢医科大学はなんと倍率89.2です。
その上、私立大の学費は年間数百万円と超高額。
学費が安い国立大では偏差値70前後が必要など、日本の医学部合格は非常に狭き門となっています。
そこで近年注目を集めているのが海外への医学部留学です。
日本の医師でも海外医学部卒業者が毎年増加しており、医学部留学の人気は高まっています。
本記事では、世界5ヶ国の医学部の教育制度をご紹介します!海外の医学部事情を知りたい方は必見です!
アメリカへの医学部留学
アメリカは世界のどの国よりも医療技術や薬の研究に積極的で、最先端医療に力を入れています。
世界トップレベルの医療を学びたいという人にはアメリカの医学部留学がおすすめです。
ただし、アメリカの医学部は卒業までに時間がかかる上、学費も日本の私立大学並みにかかります。
詳しく見ていきましょう!
アメリカ医学部の教育
正確に言うと、アメリカに「医学部」はなく、代わりに4年制の「メディカルスクール」を卒業する必要があります。
メディカルスクールの入学には大学の学士号が必要です。
つまり、アメリカで医師になるには
- 4年制大学を卒業して学士号を取得
- 4年制のメディカルスクールを卒業
という、最低8年間のプロセスが必要なのです。
日本の医学部は最低6年間で卒業できますので、長い道のりに感じますね。
アメリカ医学部への留学要件
日本の大学はセンター試験と大学の試験で合否を決定しますが、アメリカには全国統一の試験というものがありません。
アメリカの大学は以下の6つの要素から合格者を選定します。
- 学校の成績
- エッセイ
- 推薦状
- 課外活動
- テスト
- 面接
テストや面接も実施しますが、高校の成績や課外活動、自己PR文であるエッセイなど、総合的な面から「あなた」という人物を見て合否を判断します。
大学によって求めるレベルは異なりますが、講義についていけるだけの英語力は当然必須です。
アメリカに医学部留学するなら、高校1年生から戦略的に勉強していかなければなりません。
アメリカ医学部の学費
アメリカで医学部留学をするには、大学とメディカルスクールの両方を卒業しなければなりません。
大学には州立大学と私立大学があり、州立大学の方が学費が安いと言われています。
それでも、州外の人は年間約250万円の学費がかかります。
私立の場合は約350万円と言われていますので、州立大学の方がおすすめです。
メディカルスクールの学費は州立も私立も年間500万円前後が相場とされています。
これらを卒業年数に換算してみると、以下のようになります。
250万円×4年間+500万円×4年間=3000万円
非常に高額ではありますが、日本の私立大学でも同じぐらいかかる大学もあります。
私立大学に入ろうとしていて、英語にも自信があれば、アメリカの医学部留学も可能でしょう。
アメリカの医学部留学に使える奨学金
アメリカに関わらず、海外留学を目指す学生に対しては有名なのはなんといってもJASSO(日本学生支援機構)です。
採用人数は未定ですが、毎年45名程度の支援を行っています。
JASSO(日本学生支援機構)
・募集人員:未定(2021年は45名) ・金額:奨学金5万9000円~11万8000円/月、授業料250万円/年を上限とする実費額 ・期間:原則4年間 ・応募必要事項:調査書 (JASSO(日本学生支援機構))
また、アメリカの大学へ留学を希望する学生に特化した奨学金もあります。(参考:Education USA)
一例を紹介しますので、参考にしてみてください。
グルー・バンクロフト基金
・募集人員:奨学金合格者 3名 ・金額:5万米ドル(570万円)/年 ・期間:4年間 ・応募必要事項:学歴・家族構成・英語能力試験・スコア・小論文・調査書・推薦状
こちらのグルー・バンクロフト基金へは、過去2年は 78-95 名の応募があったそうです。
狭き門ではありますが、年500万円以上の奨学金が受け取れるのはかなり大きいですよね!
奨学金情報は日々更新されていますので必ずご自身で最新の情報をチェックしてください。
アメリカの医師免許取得法
アメリカで医師免許を取得するには、メディカルスクール卒業後United States Medical Licensing Examination(USMLE)という国家試験に合格しなければなりません。
USMLEはStep1~3までの試験からなります。
Step1. 基礎医学試験8時間(日本のPCから受験可)
Step2 CK. 臨床医学試験9時間(日本のPCから受験可)
Step2 CS. 模擬問診・診察の面接試験
Step3. 臨床医学試験2日間
(参考:USMLE)
これら全てに合格するとアメリカの州から医師免許を交付されます。
イギリスへの医学部留学
「ナイチンゲール」が看護の基礎を築いた国として知られるイギリスですが、医師には国家試験がありません。
学生のうちから臨床への対応力が求められ、実技を含めた卒業試験に合格すると医師の資格が得られます。
イギリス医学部ついて、詳しく見ていきましょう!
イギリス医学部の教育
イギリスの医学部は5年制もしくは6年制で、半分が基礎医学、残り半分が実習に充てられます。
実習では、対患者の臨床推論に非常に力を入れているそうです。
ポリクリはとても実践的で、医学生もレジデントと同じように扱われます。どの科を回っても、問診と身体診察を上級医にプレゼンしなければなりません。 「鑑別疾患を挙げて」「検査は何をするのか」「なぜその検査をしたいのか」「もし陰性であればどうするのか」と、一連の臨床推論をひたすらやらされます。
学生のうちから基礎的な臨床推論を学ばせることはイギリスの教育理念であり、医療に携わる者として、「Patient-centered Health Care(PCHC):患者中心の医療」と、それを実現するための「コミュニケーション能力」を養うことが一貫しています。
(引用元:イギリスで家庭医として働く(2)医学部時代 編)
学生のうちから研修医扱いされるのは、「患者中心の医療」を徹底しているイギリスならではでしょう。
イギリス医学部を卒業すれば、1年目からでもすぐ臨床で力を発揮できる医師になれそうです。
イギリス医学部への留学要件
イギリスでは、大学入学資格としてAレベル(Advanced Level)の試験を受けることが義務付けられています。
日本でいうセンター試験のようなもので、イギリスの学生は高校1・2年生でAレベルを受験します。
留学生の場合はAレベル対策を行っている学校に通ってからAレベル受験となります。
Aレベルの成績はA+~Eで判定され、医学部は科学や生物学などで3つ以上のAを取得していることが条件になるようです。
最近ではAレベルではなく国際バカロレアの試験を用いる学校も増えているので、大学の入学要件をよく確認しましょう。
この他、医療施設でのボランティア経験や、イギリスの国民保健NHSへの理解度、IELTSの成績も重視されます。
英語力はもちろん、イギリスの医療事情への理解をよく深めておくことが重要です。
イギリス医学部の学費
イギリスの大学は、バッキンガム大学を除いて全て国立大学です。
ですが、学費は最大年間120万円程度と、年間50万円程度である日本の国立大学に比べて高く設定されています。
外国人留学生の場合はこの2~3倍の学費がかかると言われており、年間240~360万円程度はかかると予測されます。
仮に360万円だとすると、6年制大学の学費は以下のようになります。
360万円×6=2160万円
イギリスの医学部留学も、日本の私立大学と同程度の値段といえそうです。
イギリスの医学部留学に使える奨学金
イギリスの医学部留学に使える奨学金を紹介します。
異文化間交流の促進を目的とした奨学金制度です。
大学・大学院へ留学される学生を対象に、日本から4名選出し、300,000円を学費補助として支給します。
こちらは、入学の際に求められる英語力をIELTSで証明することが必要です。 (British Council Japan IELTS 奨学金 2021)
ちなみにこの奨学金はイギリス以外の国への留学でも使えることができます。
IELTSで英語力の証明をする方にはおすすめの奨学金です。
イギリスの医師免許取得法
イギリスには医師の国家試験がなく、各大学が行う卒業試験が国家試験にあたります。
試験は筆記試験と実技試験で構成されています。
私の感覚ですが、筆記試験では知識を問うというよりも、「あなたは医師として安全に医療を行えるか」をテストしていると思いました。
私自身も帰国して昨年(2018年)日本の医師国家試験を受けましたが、本当に難しいなと思いました(笑)。イギリスで医師になって10年余り、それなりの経験を積み知識を習得してきたつもりですが、日本の医学生は医療知識でいえばかなりのレベルを求められていると感じました。
(引用元:イギリスで家庭医として働く(2)医学部時代 編)
イギリスの試験は臨床での対応力、日本の国家試験は医療知識力を重視していると言えそうです。
オーストラリアへの医学部留学
国民は医療費が無料など、高水準の医療制度を持つオーストラリア。
日本の大学1年生が習う項目は高校生のうちに修了しているなど、教育水準も高いです。
そんなオーストラリアの医学部留学について調べてみました!
オーストラリア医学部の教育
オーストラリアの医学部には、UEP(高卒入学:Undergraduate-entry Program)とGEP(学士入学:Graduated-entry Program)の2つのプログラムがあり、それぞれ教育年数が異なります。
UEP:高校を卒業してすぐ医学部へ入学した人の教育カリキュラムで、教育年数は5-6年
GEP:既に3-4年制の大学で学士号を取得している人の教育カリキュラムで、教育年数は4-5年
UEPであれば最低5年で卒業できますが、GEPは一旦学士号を取得しなければならない分卒業に時間がかかり、最低7年はかかるということになります。
大学によってどちらのプログラムを採用しているかは異なり、双方採用している大学もあります。
最近では医学部入学者に求める教育水準が高まっており、GEPのみを採用する大学も増えているようです。
オーストラリア医学部への留学要件
日本の高校を卒業してオーストラリアの医学部に入学する場合は、ファウンデーションコースと呼ばれる大学進学準備プログラムに1年間通う必要があります。
オーストラリアには3年制の大学が多いですが、それは日本の大学生が1年生で習う基礎的項目を高校生のうちに修得しているからなのです。
ファウンデーションコースは、そういった教育ギャップを埋めることを目的としています。
ファウンデーションコース入学には試験はありませんが、高校の成績と英語力が審査されます。
学業はもちろん、英語の勉強も必須です。
オーストラリア医学部の学費
オーストラリアの医学部に留学する際は、ファウンデーションコースの学費+大学の学費が必要となります。
ファウンデーションコースの学費は180~220万円あたりが相場のようです。
大学の学費は大体年間200万円が相場ですが、医学部は約500万円近くすることもあります。
UEPで5年で卒業できた場合と、GEPで7年で卒業できた場合の学費を見てみましょう。
UEP 5年間
①ファウンデーションコース 200万円×1年=200万円
②医学部 500万円×5年=2500万円
①+②=2700万円
GEP 7年間
①ファウンデーションコース 200万円×1年=200万円
②学士号取得 200万円×3年=600万円
③医学部 500万円×4年間=2000万円
①+②+③=2800万円
UEPもGEPも、最短で卒業できればあまり学費に差はなさそうです。
卒業年数が長くなればなるほど学費も高くなりますので、できればUEPで最短の5年で卒業したいところです。
オーストラリアの医学部留学に使える奨学金
オーストラリアの医学部留学に使える奨学金には、Destination Australia Scholarshipがあります。
地方都市キャンパスを対象としたオーストラリア政府の奨学金です。
・募集人員:各大学ごと ・金額:15,000ドル(約170万円)/年 ・期間:4年間 ・応募必要事項:学歴・家族構成・英語能力試験スコア・小論文・調査書・推薦状
こちらは2019年委発表された比較的新しい制度です。
行きたい大学が対象となっていれば是非受けたい奨学金ですね!
オーストラリアの医師免許取得法
オーストラリアには医師の国家試験はありません。
オーストラリアの医学部カリキュラムは、日本の医師会にあたるAustralian Medical Council(AMC)が認証をしているため、卒業をもって水準をクリアしていると見なされるのです。
大学卒業後1年間の研修を行うことで医師登録ができ、晴れて医師になることができます。
中国への医学部留学
中国では積極的に外国人留学生を受け入れる医学部が増えており、日本語での授業を行っている大学もあります。
学費も日本の国立大並みに安いのが大きな魅力です。
教育体制を詳しく見ていきましょう!
中国医学部の教育
中国の医学部は5-6年制で、外国人留学生を受け入れている大学としては北京大学が有名です。
授業カリキュラムに鍼灸学が取り入れられており、中国ならではの東洋医学も学ぶことができます。
基本的に授業は中国語で行われますが、中国医科大学のように日本語・英語で授業を行う大学もあります。
こういった大学は外国人留学生を積極的に受け入れているので、世界各国の生徒との交流も良い刺激となるでしょう。
中国医学部への留学要件
授業が中国語で行われる北京大学の場合、中国語検定(HSK)6級の取得が条件です。
その上で留学生対象の試験に合格することで入学が認められます。
基本的には語学力と試験の成績が重要となりますので、中国語で問題を解けるよう対策しておきましょう。
中国医学部の学費
中国の医学部の学費は大変安く、年間約90万円が目安となっています。
6年間で卒業した場合の学費は以下のようになります。
90万円×6=540万円
日本の国立大並みの学費で済むのは、中国の医学部の大きな魅力です。
中国の医学部留学に使える奨学金
中国の医学部留学に使える奨学金には、 JASSO協力の中国政府奨学金があります。
中国政府奨学金 ・募集人員:奨学金合格者 学部・修士・博士過程など合わせて110名 ・金額:学費・大学寮・総合医療保険料免除、生活費2,500元/月(約45000円) ・期間:4~7年間 ・応募必要事項:学歴・語学能力の成績証明書
学費と大学寮が免除なうえ生活費までもらえるなんて、至れり尽くせりですね!
110名と募集人数も多いので申し込みの価値ありです。
中国の医師免許取得法
中国も日本と同様、医師になるには医師国家試験に合格しなければなりません。
ただし、合格率が日本とは大きく異なります。
日本の医師国家試験の合格率は95%であるのに対し、中国の合格率は30%程度。
非常に難易度が高いのです。
大学卒業後に中国で医師免許を取ろうとする人には、かなりの覚悟が求められます。
ハンガリーへの医学部留学
日本ではあまりメジャーな国ではないハンガリーですが、近年ハンガリーに留学する医学部生が急増中。
その理由は何と言っても手頃なコストと、日本より難易度が低いと言われる入学試験です。
果たしてハンガリーの医学部事情はどのようになっているのでしょうか?
ハンガリー医学部の教育
実はハンガリーの医療教育は世界的にも優れています。
アメリカで国外の医療教育機関のレベルを査定している機関NCFMEAは、1997年、ハンガリーの医療教育がアメリカの医療教育に相当すると決定づけました。(参考: U.S. Department of Education Office of Postsecondary Education)
ハンガリーの医療教育は国際的にも十分通用するレベルだと認められているのです。
医学部は6年制で、テストは教官からの口頭試問で行われます。
口の上手さがすごく大きくて(中略)試験を受けるのは口語なので教授の方に気に入られるなりやっぱり「この子分かってるな」って思わせる喋りをすると受かったりする時もありますね
(引用元:【ハンガリー医学部の光と闇】入学までの流れから留年・進級のリアルまで現役医学部生が全てを語ります。【Part.1】)
20〜30分かけて教授にかなり深いところまで突っ込まれるので、学生にとっては厳しい面もある。だが相当勉強した上で合格、進級できることになるので、卒業生の質は確実に向上するのではないだろうか。
(引用元:ハンガリー医学部生のブログ)
自分の口でしっかり説明しなければならない上、教官との相性もあるので、進学は簡単ではありません。
ただし、細かく理解しておかなければならない分、学びはかなり深まりそうです。
ハンガリー医学部への留学要件
ハンガリーの医学部に入学するには、直接大学入試を受けるか、入試前に半年~1年間予備コースに通ってから受験に臨む2つの方法があります。
大学受験の審査はおおよそ以下のようになっています。
一次審査:書類審査、筆記審査、面接審査(日本語受験可)
二次審査:筆記試験、作文、口頭試問
日本語受験ができる上、筆記試験は英語と、生物・科学・物理の中から2科目を選択するのみなので、日本の医学部受験よりはかなりハードルが低い印象です。
ただし、二次試験からは全て英語となりますので、英語での受験対策は必須。
不安な人は予備コースで対策をしてから受験に臨むことをおすすめします。
ハンガリー医学部の学費
ハンガリーの医学部の学費は年間300万円前後、予備コースは年間190万円前後です。
予備コースに1年間通い、医学部に6年間通った場合の学費は以下になります。
190万円+300万円×6=1910万円
日本の国立大よりは高いものの、日本の私立大や諸外国の医学部に比べると比較的安いと言えそうです。
入学の難易度や学費面を考えると、ハンガリーの医学部も魅力的ですね!
ハンガリーの医学部留学に使える奨学金
ハンガリーの医学部留学に使える奨学金には、ハンガリー政府Stipendium Hungaricum奨学金があります。
ハンガリーの医師免許取得法
ハンガリーでは大学卒業前に医師免許試験が行われます。
この試験に合格しなければ大学も卒業できません。
試験は英語で行われ、合格すればハンガリーだけではなくEU諸国で医師になることが可能です。
合格と同時にEU諸国で働けるようになるのは嬉しいですね!
医学部留学は学費、教育面などを考えてベストな選択を!
費用が高いことが多い医学部留学ですが、日本の私立の学費と同じくらいか、それより安いこともあります。
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