医師のキャリアアップの選択肢として注目される「海外留学」。しかし気になるのは、やはり費用面ではないでしょうか。
「海外留学が気になるが、実際いくらかかるのか」「給与は出るのか」——この記事では、医師の海外留学にかかる費用を留学のルート別に整理します。
あわせて、留学中によくあるお金の悩みと解決法、そして費用と同じくらい重要な「英語の準備」についても解説します。
この記事のもくじ
医師の留学は3ルート|臨床留学・研究留学・医療英語留学の比較

医師の海外留学は、従来「臨床留学」「研究留学」の2つで語られてきました。ただし近年は、その前段として、あるいは国内で外国人患者に対応するために「医療英語留学」を選ぶ医師が増えています。
費用の話に入る前に、この3つを並べて整理します。目的も期間も費用構造もまったく異なるためです。
| 臨床留学 | 研究留学 | 医療英語留学 | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 現地で診療に携わる | 研究室で研究する | 診療で使う英語を習得する |
| 期間 | 3〜5年程度 (レジデンシー+フェローシップ) |
1〜3年程度 | 1ヶ月〜 |
| 必要な資格 | USMLE・ECFMG Certificate等 (国ごとの医師ライセンス) |
原則不要 (博士号を求められることが多い) |
不要 |
| 英語要件 | 必須(試験に実技あり) | 明確な基準はないが必要 | 不問(初級から可) |
| 給与 | ライセンス取得後は発生 (準備期間は無給のことも) |
出る場合と無給の場合がある | なし(学ぶ側) |
| 費用の主な内訳 | 試験・申請費+数年分の生活費 | 渡航費+数年分の生活費 | 授業料+滞在費+渡航費 |
なお、医学部の在学生が対象となる交換留学・海外臨床実習は、大学が学年を指定して募集するもので、卒業後の医師が参加できる枠組みとは別です。
医師が留学を希望する理由

医師が海外留学をすると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、医師が留学を希望する理由のTOP3を紹介します。
最新医療を学ぶ
海外留学をすることによって、日本ではなかなか触れることができない最新医療に出会うことができます。
日本は医療先進国ではあるものの、分野によっては海外の医療先進国と比較して遅れをとっている領域があります。研究留学先として人気を集めるアメリカでは、日本では実施が難しい研究に携われることもあります。
また、珍しい症例など、日本では経験しにくい臨床現場に立ち会うことも可能です。症例数の多い施設であれば、日本で長い年月をかけて経験する症例に、より短い期間で触れられるケースもあります。
医師として成長したい、最新の医療を現場で知りたいという人が、海外留学を選んでいます。
キャリアアップ
日本国内で長年経験を積むのも、医師としての実績につながります。ただ、大学病院など大きな施設になると、海外経験を持つ医師も少なくありません。
海外で身につけた知識や経験を活かして実績を積めば、活躍の場が広がります。また、難しい疾患ほど日本では症例数が少なく、目的としている研究結果を得にくいケースもあります。そのため、症例数が多い海外へ留学して経験を積みたいと考える医師がいます。
医師としての自信がつく
日本以外の医療を学ぶ経験は、医師としての自信につながります。日本の医療やシステムから離れ、異なる文化や症例と向き合う中で、新しい視点が加わります。
臨床留学・研究留学の費用|内訳と目安の考え方

医師が海外留学をする際にかかる費用は、留学先の国・期間・給与の有無によって大きく変わります。一般に語られる目安としては、100〜300万円程度、国によっては500万円前後というケースもあります。
ただし、この金額だけを見ても判断はできません。重要なのは費用の構造です。
| 費目 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 試験・申請費 | USMLE等の受験料、ECFMG申請料、ビザ関連 | 臨床留学で発生。渡航前に必要 |
| 渡航費 | 航空券、保険 | 期間に関係なくほぼ固定 |
| 生活費 | 居住費・光熱費・食費 | 月10〜30万円程度が目安。期間に比例 |
| 家族の帯同費 | 住居の広さ、教育費 | 帯同する場合に大きく増える |
留学期間として多い3年を基準にすると、生活費だけで年間120〜360万円かかる計算になります。加えて、臨床留学か研究留学かによって、給与が出る場合と出ない場合があります。
臨床留学の場合
臨床留学では、国ごとに定められた医師ライセンスを取得しなくてはなりません。研修医として現地で受験に必要な経験を積んでいる最中は、給与が発生しないケースもあります。この期間を無収入で乗り切れるだけの資金を、渡航前に確保しておく必要があります。
医師ライセンス取得後は給与が発生することがほとんどですが、日本での医師の給与水準と比べると低くなる傾向があります。想像していたよりも給与が低かった、という声もあります。希望している留学先の条件をしっかり把握して、留学中に安心して暮らせるよう準備をしておきましょう。
研究留学の場合
研究留学では、留学先が給与を支払うケースがあります。ただ、生活できる程度の給与であることがほとんどで、無給という場合もあります。そのため、留学中の生活費をまかなえる程度の、ゆとりある貯金が必要です。
留学に向けて貯金をするために、僻地で勤務をしたり、非常勤でも勤務をしたりする医師もいます。また、費用を工面するのが難しいという人へ向けて、奨学金や補助金などの制度があるので、上手く活用していきましょう。
医師の留学で必要な英語力と準備の順番

費用と並んで見落とされやすいのが、英語の準備にかかる時間とコストです。渡航してから英語で苦戦し、本来の目的である臨床や研究に集中できないという話は珍しくありません。
ルート別に、求められる英語力の性質が異なります。
- 臨床留学——USMLE等の試験には患者とのコミュニケーションを想定した内容が含まれます。知識を英語で処理する力に加え、問診や説明を英語で行う力が必要です
- 研究留学——明確な基準は設けられていないことが多いものの、ラボでのディスカッションや学会発表は英語で行われます
- オーストラリア等で医師として働く場合——OET(医療者向け英語試験)で一定のグレードを求められることがあります。詳しくは医師のOET対策で解説しています
準備の順番としては、①診療科で使う頻出表現の洗い出し、②問診・症例プレゼンの型づくり、③リスニング、という流れが現実的です。試験対策から入るより、日々の診療内容を英語に変換する訓練を先に置いたほうが、結果的に試験にも効きます。
海外で働くまでの全体像は日本人医師が海外で働くには?国別ルート・必要な英語力・費用で整理しています。
1ヶ月から始める医療英語留学という選択肢
数年単位の臨床留学・研究留学に踏み切る前に、まず英語を仕上げるという選択肢があります。医療英語留学は1ヶ月から参加でき、短期休暇や有給を使って動く医師もいます。
費用構造は前述の2ルートとは異なり、授業料・滞在費・渡航費が中心です。渡航費は期間に比例しないため、1日あたりの費用に直すと短期のほうが割高になる点は押さえておきましょう。
大学が実施する海外臨床実習との違いや、出発前の英語準備の進め方など、短期留学の具体的な検討ポイントについては、あらためて詳しく解説する予定です。
医師の留学でお金に困らないようにするポイント

多くの人の悩みになるのが、留学中の生活費です。臨床や研究に専念するには、渡航前に資金計画を固めておく必要があります。
奨学金・助成金を活用する
医師の海外留学を支援するための、奨学金や助成金を扱っている団体があります。支給額は制度によって幅があり、年間300万円程度のものが多く見られます。支給期間は2〜3年間のところがほとんどです。
奨学金と助成金はどちらも支給条件が異なるため、自分が当てはまるものを選んで応募します。採用枠があらかじめ決まっているものや、病院からの推薦状が必要になるケースが多く見られます。年齢制限や専門の診療科目が指定されている場合もあるため、募集要項の確認と、締切に余裕をもった準備が必要です。
生活費が安いところを選ぶ
留学中、給与が出る場合もありますが、出ないこともあります。その場合、貯金を切り崩しながらの生活になります。
調整の余地があるのは生活費です。渡航先の家賃・食費の相場を事前に調べ、月あたりの支出を見積もっておきます。物価が安い留学先を選ぶという判断もあります。生活費を比較する際は、都市ごとの物価を比較できるサイトを使うと、日本との違いを一覧で確認できます。
準備期間の収入を確保する
臨床留学の場合、試験対策の期間も含めると準備に数年かかります。この期間の収入をどう確保するかも、渡航後の資金繰りに直結します。常勤を続けながら準備する、非常勤を組み合わせる、といった選択を早めに検討しておきましょう。
医師の海外留学についてよくある質問
Q. 医師の海外留学は結局いくらかかりますか?
ルートと期間で大きく変わります。一般的な目安として100〜300万円、国によっては500万円前後とされますが、生活費が月10〜30万円かかることを踏まえると、期間が長いほど総額は膨らみます。給与の有無でも実質負担は変わります。
Q. 留学中は給与が出ますか?
臨床留学ではライセンス取得後に給与が発生することがほとんどですが、準備期間は無給のこともあります。研究留学は出る場合と無給の場合の両方があります。
Q. 奨学金はどのくらいもらえますか?
制度によりますが、年間300万円程度のものが多く見られます。支給期間は2〜3年が中心で、推薦状や年齢・診療科の条件が設けられている場合があります。
Q. 英語の準備にはどのくらい時間が必要ですか?
目標によって異なります。試験のスコアが必要な場合は数ヶ月から年単位、診療英語の型を作るだけであれば数ヶ月から着手できます。渡航後に英語で苦戦しないよう、渡航前に一定の水準まで上げておくことをおすすめします。
Q. 医学生の交換留学とは違うのですか?
別のものです。大学が実施する海外臨床実習・交換留学は在学生を対象に学年を指定して募集されるもので、卒業後の医師が参加する留学とは枠組みが異なります。
まとめ|費用を把握したうえで英語準備から始める
医師が海外留学する際の費用について紹介しました。留学にかかる費用は、目安として100〜300万円、国によっては500万円前後かかるところもあり、物価もそれぞれ異なります。
給与が出る留学先と無給の留学先があり、準備期間とあわせて現地での生活費を工面しなくてはなりません。奨学金・助成金の活用と、渡航先の物価を踏まえた支出の見積もりが、資金計画の2本柱になります。
また、ほとんどの海外留学では英語力が求められます。特に臨床留学の場合、患者とのコミュニケーションをする上でスムーズにやりとりできる英語力が必要です。費用の計画と並行して、英語の準備を早めに始めておくことをおすすめします。
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