旅行や出張などで空港を利用する際、その裏側で私たちの安心・安全を支えてくれている存在の一つが「空港看護師」です。
「空港にも看護師がいるの?」と驚く方もいるかもしれませんが、実は、空港には専用の医務室が設けられており、体調不良の旅客や職員への対応、感染症のチェック、応急処置などを行う看護師が常駐しています。
本記事では、そんな空港看護師の仕事内容から給料の相場、実際に働くうえでのメリット・デメリット、さらには求人の探し方まで詳しく解説します。
この記事のもくじ
空港看護師とは?どんな仕事?
空港看護師とは、空港内に設置されている救護室や医療センター、検疫所で勤務し、旅行者や空港職員の健康管理や緊急対応を行う看護師です。
国際的な人の往来が多い空港では、急な体調不良や感染症対応など、さまざまなケースに対応する必要があります。
病院勤務との違い
病院では診察や手術の補助、入院患者のケアなどが主な業務ですが、空港看護師は応急処置が中心になります。
また、設備が限定されていることから、即時の判断力と対応力が重視されます。
英語での問診や応対が必要になることも多く、語学力も重要なスキルのひとつです。
主な勤務場所
勤務場所は主に以下の3つです。
- 空港内クリニック(医療機関が併設されている)
- 空港救護室(急病者やけが人に対応)
- 検疫所(法務省・厚生労働省関連機関で感染症対策を実施)
国際空港では24時間365日の対応が必要なため、交代制勤務や夜勤も一般的です。
活躍する場面の具体例
- 海外からの帰国者が高熱を訴えた際の初期対応と検疫所への連携
- 空港職員のけがへの応急処置と記録作成
- 乗客の突然の胸痛や嘔吐への迅速な対応と救急車の手配
空港看護師の主な仕事内容
空港看護師の仕事は多岐に渡りますが、主な仕事内容は以下です。
救護室での応急処置
空港内でのけがや突然の体調不良に対して応急的な処置を施し、必要があれば救急搬送の手配を行います。
旅客や職員の安心を支える重要な業務であり、患者の症状を素早く見極め、限られた設備で最適な処置をする必要があります。
検疫や感染症対応
パンデミックや感染症の流行期には、検疫業務に従事する看護師も多くなります。
具体的には、海外からの渡航者に対する体温測定、問診、PCR検査の補助、感染症疑い患者の隔離対応などです。
感染症に関する知識と、厳格なマニュアル遵守が求められます。
旅客・空港スタッフへの対応
空港看護師は旅客だけでなく、空港スタッフの健康維持にも関わります。
過労やストレス、作業中の事故など、多様なケースに対応します。
保健指導や健康相談を通じて、予防医療の観点からもサポートする役割があります。
空港看護師の年収・給料
空港看護師のきになる年収・給料を紹介します。
勤務形態(正社員・派遣)別の給与相場
正社員の場合、月給25万円〜35万円が一般的です。
賞与や各種手当がつく場合もあり、年収ベースでは350万〜500万円程度になります。
派遣や契約社員の場合は、時給1,800円〜2,300円前後が相場で、勤務日数や時間によって月収は大きく変わります。
病院勤務との比較
病院勤務に比べると、夜勤が少ない場合は年収がやや低くなることもあります。
しかし、緊急性の高い対応や語学スキルが求められる点では、精神的なやりがいは大きく、労働時間の安定性を重視する人には魅力的な職場です。
夜勤やシフトの手当
空港は24時間稼働の施設であるため、夜勤や早朝・深夜勤務が発生します。
これらの勤務には手当が支給されることが多く、シフトによっては年収が上がる可能性もあります。
空港看護師になるには?必要な資格とスキル
空港で活躍する看護師には、医療の知識だけでなく、特殊な環境に適応する力も求められます。
空港看護師になるために必要な資格や、あると有利なスキル、未経験からのキャリアパスについて解説します。
必要な資格
空港看護師になるためには、以下の資格が必須です。
正看護師免許
空港での看護業務には国家資格である正看護師免許が必要です。
准看護師では応募できないケースが多いです。
臨床経験
特に救急外来や内科系での実務経験が求められることが多く、3年以上の経験を条件とする求人もあります。
あると有利なスキル
空港という国際的かつ多様な人々が行き交う場所では、次のようなスキルがあると採用や業務で有利になります。
英語力
外国人対応が必要になるため、英会話(日常会話~医療英語)ができると強みになります。
TOEICスコアがあると好印象です。
BLS・ACLSなどの救命講習修了
心肺蘇生や一次救命処置のスキルを証明する資格は、緊急対応力の高さをアピールできます。
感染症・検疫の知識
空港は感染症対策の最前線。
基本的な検疫や感染管理の知識があると即戦力として評価されます。
未経験から目指せる?
空港看護師は専門性の高い業務が多いため、いきなり未経験での採用は難しいケースが多いですが、以下のような方法で目指すことは可能です。
まずは臨床経験を積む
救急外来、内科、外来部門などでの勤務経験を3年ほど積んでおくと安心です。
英語や救命対応のスキルを身につける
TOEICスコア取得やBLS講習を受けるなど、事前準備が有利に働きます。
派遣や非常勤から始める
空港によっては派遣会社経由で看護師を募集していることもあり、非常勤でのスタートも可能です。
空港看護師のメリット・デメリット
空港看護師として働くことには、病院勤務とは異なるメリット・デメリットがあります。
それぞれ紹介します。
メリット
空港看護師ならではの魅力や働きやすさについて紹介します。
安定した勤務体制
空港看護師は多くの場合、交代制シフトで勤務時間が明確に決まっているため、夜勤が少なめ、あるいは日勤のみの職場もあり、生活リズムを整えやすいという利点があります。
医療行為より観察・判断力が求められる
空港では重篤な処置を行う機会は少なく、応急処置や体調不良者の対応が中心となるため、落ち着いて判断を下す力が活かされます。
グローバルな環境で働ける
外国人旅行者の対応などを通じて、異文化に触れる機会が多く、英語力や国際的な視野を広げたい人にとっては刺激的な環境です。
感染症や公衆衛生の最前線に関われる
新型コロナウイルスの影響以降、空港は感染対策の最前線でもあります。 検疫対応やスクリーニングなど、公衆衛生に関する知識と経験を積むことができます。
医療機関とは違ったチームで働ける
医師だけでなく、保健所職員、検疫官、空港スタッフ、航空会社の職員など、多職種連携が求められるため、広い視野と協調性が身につきます。
デメリット
空港看護師として働く際に考慮すべきデメリットを紹介します。
医療行為が制限されることが多い
病院と違い、医師が常駐していないことが多いため、医療行為よりも観察・判断・対応の比重が大きくなります。
手技を積みたい人や医療処置を中心に働きたい人には物足りなさを感じることもあります。
突発的な対応が多い
旅客の体調不良やケガなど、予測できないケースが多く、迅速で柔軟な対応力が求められます。
プレッシャーの中で判断を下すことに不安を感じる人にはストレスになる可能性もあります。
英語対応に苦労する
外国人の利用者が多い空港では、英語での応対が必要な場面も多くあります。
医療英語に不安がある場合、コミュニケーションに苦労することも考えられます。
一人勤務・少人数体制の職場が多い
空港医務室では、看護師が1人もしくは少人数で勤務することが多く、孤独感を感じやすい職場でもあります。
困った時にすぐに相談できる相手がいないこともあるため、高い自己判断能力が求められます。
キャリアアップの道が限定されやすい
専門病院のようにスキルアップや昇進のチャンスが多いわけではないため、将来のキャリアパスを明確にしておくことが大切です。
空港看護師の求人はどこで探せる?
空港看護師の求人は、病院勤務のように数が多くはありませんが、タイミングと探し方次第で見つけることが可能です。
医療系転職サイト
ナース専科、看護roo!、ナースではたらこなどの大手転職サイトでは、「空港」「企業」「施設内救護室」などのキーワードで求人が掲載されます。
「産業看護師」「治験コーディネーター」と一緒にチェックすると見つかることもあります。
派遣会社(医療系派遣)
空港の医務室や救護室は、派遣看護師を活用していることも多く、メディカル・コンシェルジュ、MCナースネット、パソナメディカル などで募集される場合があります。
短期や単発、スポット勤務の求人もあるため、柔軟に働きたい人にもおすすめです。
空港運営会社や関連企業の採用ページ
成田国際空港や関西エアポート、ANA・JAL系列の子会社などが、自社サイトで医務室看護師の求人を出すこともあります。
「空港名+採用」「企業名+求人」で検索するとヒットしやすいです。
ハローワークや自治体求人
一部の空港では、地域のハローワークや自治体が管理する公的な求人サイトに掲載されることもあります。
特に地方空港などでは、地元密着の求人情報をチェックすると見つかることがあります。
検疫官・検疫業務スタッフ(期間雇用)
厚生労働省や検疫所が、感染症対策スタッフとして看護師を募集するケースもあります。
期間限定・契約職員としての採用が多いですが、空港勤務の実績を積むチャンスです。
空港で働く看護師の仕事とは?のまとめ
空港看護師は、旅客や空港職員の体調不良やケガに対応するだけでなく、感染症対策や健康相談など、幅広い役割を担う重要な職種です。
病院とは異なる落ち着いた環境で働ける一方で、判断力や柔軟な対応力が求められます。
空港看護師は、医療の現場で働いてきた経験を活かしつつ、グローバルな環境で活躍したい方にとって非常に魅力的なキャリアの一つです。
「臨床は少し疲れたけど、看護の仕事は続けたい」「語学や国際的な分野にも関心がある」という方は、ぜひ一度「空港」という新しいフィールドに目を向けてみてはいかがでしょうか?