イギリスで日本人が看護師になるには?資格や給料などを徹底解説!

nico〔ニコ〕
公開日:2020.05.02
更新日:2024.03.07

編集【2024年3月7日】

イギリスといえば英語留学で人気の地。

ナイチンゲールが看護の基礎を築いた国でもあり、イギリスで働きたい看護師も多いのではないでしょうか。

本記事では、イギリスで日本人が看護師になる方法や、日本の看護師との違いを解説していきます!

イギリスで看護師になるためにはどうすればいいのかが明確になりますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!

イギリスの看護師の背景

イギリスは看護の歴史が長い国です。

日本と比べると、国家資格がない勤務時間が長いけど残業がない有休が取りやすいといった違いも見られます。

具体的な内容について見ていきましょう!

【歴史】イギリスはナイチンゲールが看護の基礎を築いた国

「近代看護教育の母」といえば、ナイチンゲール。看護師でその名を聞いたことがない人はいないでしょう。

そのナイチンゲールが看護師として勤務していたのがイギリス・ロンドンの病院でした。

ナイチンゲールはクリミア戦争でイギリス従軍看護婦として従事したり、イギリスの病院分析に初めて統計学を用いるなど、看護学を確立させた人物です。

ナイチンゲールがクリミアで「クリミアの天使」と呼ばれたことが看護師の「白衣の天使」という呼び名の語源にもなっています。

そのナイチンゲールが活躍したイギリスは、私たちが行っている看護の始まりの地とも言えるのです。

【資格】国家資格はなし!NMCへの看護師登録が必要

イギリスの看護師は国家資格が必要なのでしょうか?

実は日本とは違い、イギリスには看護師の国家資格はありません

その代わり、NMC(=The Nursing and Midwifery Council/看護・助産審議会)への看護師登録が必要になります。

NMCとは、イギリス保健省の「看護助産規定2001(Nursing and Midwifery Order)」に基づき看護師の登録や教育の規範規定などを行っている機関です。

イギリスの看護師はNMCへの登録後も3年ごとに登録を更新しなければなりません。

NMCへ登録するには、大学で看護教育を3年間履修することが必要になります。

イギリスの看護教育で特徴的なのは、学生時代に専門領域を選択する点です。

  1. 成人看護(Adult)
  2. 小児看護(Child)
  3. 精神看護(Mental Health)
  4. 学習障害看護(Learning Disability)

(参考:イギリスにおける看護師の教育制度の変遷と看護職の現状

以上の4領域から自分の専門領域を選択します。

全領域をまんべんなく学ぶ日本の看護学生とは異なりますね。 さらに、イギリスには「Nurse Specialist」と呼ばれる各領域の専門看護師が存在します。

Nurse Specialistになるには、修士号実務経験があることが条件です。

日本の「専門看護師」も修士号と実務研修5年以上が必要なので、Nurse Specialistと近いかもしれません。

このほか、イギリスには以下のような看護師区分が存在します。

    1. Practice Nurse:一般医(General Practitioner)に雇われている看護師
    2. District Nurse:訪問看護師
    3. Health Visitor:保健師
    4. Nurse Prescriber:処方看護師
    5. Nurse Consultant:相談看護師

(参考:イギリスにおける看護師の教育制度の変遷と看護職の現状

イギリスではNMCへの登録で看護師資格が得られ、3年ごとに登録更新が必要というのがポイントですね。

【勤務体制】12時間勤務!?でも残業なし!有休ほぼ消化!

イギリスと日本の看護師の勤務体制にはどのような違いがあるのでしょうか?

ここでは実際にイギリスで働いている日本人看護師のブログやYouTube動画などから読み取っていきたいと思います。

勤務時間が長い!?

イギリスも2交代と3交代があるのは日本と同様です。

ここでは2交代についてお話ししていきます。

日本では大体8:00-17:00など8時間前後の勤務になるのが一般的ですが、イギリスでは8:00-20:00など、日勤が12時間以上であることも珍しくありません。 ある方の日勤はなんと14時間!

今回調べた看護師の中で最長の日勤時間でした。

こういったシフトは「ロングデーシフト」と呼ばれているそうで、休憩時間もお昼に30~45分程度、午前と午後はほぼ取れないなど、かなりハードなようです。

 

さらに夜勤も連続で入ることがあります。

朝8時に夜勤が終わり、その日の20時に次の夜勤がスタートするので、連続夜勤中はお酒も飲まずできるだけ睡眠確保

(引用元:イギリスでナース!

日本では2交代だと夜勤明けとその次の日が休みのことが多いですが、イギリスでは夜勤明けの夜にまた夜勤ということもあるようです。

日本ではしばしば「夜勤は休みが多くて好き」という声もありますが、イギリスではそうもいきませんね。

残業は少なめ!

「サービス残業当たり前!」

「17時定時なのに気付いたら20時だった・・・」

日本の看護現場ではこんなセリフが当たり前のように飛び交っていますが、イギリスの看護師は残業が非常に少ないようです。

20時にロングデイシフト終了。

やり残したことがあっても、基本すべて次勤務帯に引き継ぐため、記録さえ終わっていれば残業することもないです。

(引用元:イギリスでナース!

残業代は必ず支払われます。 (引用元:イギリスでナース!

残業時間はゼロ~1時間程度で、日本に比べると非常に少ない印象です。

残業代もしっかりもらえており、「上司がOKを出さないともらえない・・」という職場がある日本に比べると線引きがハッキリしていますね。

有休はほぼ消化できる!

働き方改革が叫ばれている日本ですが、その有給取得率は先進国の中で最低レベル

エクスペディアの調査によると、2018年に世界19か国を対象に行った調査で日本の有給取得率は50%と最下位だったそうです。

それに比べ、イギリスは96%で2位でした。(参考:エクスペディア

もちろんイギリスの看護師もしっかり休めているようです。

有休年間28〜35日程度。申請すればほぼ確実に取得できます。

ちなみに病欠は有休から引かれたりしません。

(引用元:イギリスでナース!

イギリスの看護師ってお休みとれるの?

ずばり、とれます。

年休余るとかありえませんから!

(引用元:ナースなロンドン ~Nursing in London~

日本では「有休は余るのが当たり前」という認識さえありますが、イギリスでは消化できない方がおかしいのです。

勤務はハードにも感じますが、しっかりオフの時間も設けられているので頑張れそうですね!

退院が急!

日本では患者の退院は前日までに決まっていることがほとんどですが、イギリスでは当日の午前中に決まることがよくあるそうです。

イギリスの退院や転院って ほんとに急なんです! 日本じゃ朝の回診で突然 「じゃあ、経過もいいんで、今日退院ですね。」 とかありえなくないですか? せめて、翌日とかじゃない?

こちらではほんとその日の午後帰しますからね。 手術の翌日とかでも全然ありです。

(引用元:ナースなロンドン ~Nursing in London~

日本も早期退院を心がけてはいるものの、当日に退院というのはなかなかありません。

このスピーディーさがイギリス看護師のハードな勤務の一因にもなっているのでしょう。

【給与】全体と比較すると日本と同程度

では、気になるイギリス看護師のお給料はいくらなのでしょうか?

日本の看護師と比較してみましょう!

イギリスの看護師の平均年収:33,920ポンド=約510万円

イギリス全体の平均年収:31,461ポンド=約470万円

(引用元:The average salary (UK) for 115 different jobs)2021年

日本の看護師の平均年収:4,727,000円

日本全体の平均年収:4,673,000円

(引用元:看護師の年収国税庁

看護師の年収だけで見ると日本の看護師の方が高いように思えますが、全体で見ると日本もイギリスも看護師の年収は全体の平均年収より少し高め

看護師の年収は日本もイギリスもあまり変わらない、もしくは日本の方が少し高いと言えそうです。

日本との違いを比較!

それでは、ここまで確認してきたイギリスの看護師の特徴を表でまとめてみましょう!

イギリス 日本
免許 NMCに登録 国家資格もしくは准看護師免許
免許更新 3年ごとに登録更新 なし
教育 ・大学で3年間の履修

・学生時代に専門領域を決める

・専門学校、短大、4年大で履修

・学生時代に専門領域は決めない

業務 ・日勤が12時間以上のことがある

・夜勤明けでも夜勤が入る

・朝に退院が決まり午後に退院もある

・日勤は8時間前後

・夜勤明けは休みが多い

・隊員は前日までに決まっていることが多い

残業 少ない、残業代もしっかり入る 多め、サービス残業も多い
有休 ほぼ全て消化できる 消化できないことも多い
給料 3,784,597円(全体平均よりやや上) 4,673,000円(全体平均よりやや上)

イギリスで日本人が看護師として働くには?

それでは、日本人看護師はイギリスで働くことができるのでしょうか?

答えは、できます

NMCの規定によると、EU/EEA外の外国人がイギリスで看護師登録をするには、イギリスのLevel1の看護師と同等の資格英語スキルがあることが条件とされています。

イギリスにおけるLevel1の看護師とは、3年の看護教育を終え、かつ学士号を取得している看護師のことです。

英語スキルは、以下のいずれかで証明できます。

  1. IELTS:オーバーオールスコア7以上、ライティング6.5以上、リーディング・リスニング・スピーキング7以上
  2. OET:ライティングC+以上、リーディング・リスニング・スピーキングB以上
  3. 英語で教育・試験された看護資格がある
  4. 1年以上の英語圏での実務経験がある

以上を踏まえ、日本人がイギリスで看護師になる場合の流れを条件別にまとめてみました!

日本の看護資格あり×4年大卒の人

4年大を卒業して看護資格を取得している場合、既に学士号の取得と必要な看護教育は終えている状態です。

上記の英語スキルのいずれかを満たしていればNMCへの登録申請に進むことができます。

日本の看護資格あり×短大・専門卒の人

日本の短大・専門学校を卒業して看護資格を取得した人は、学士号の取得が必要です。 日本もしくはイギリスの大学で看護の学士号を取得した上で、英語の条件も満たしましょう。

学士号と英語スキルが揃えばNMCへの登録申請に進むことができます。

日本の看護資格なしの人

そもそも看護資格がない人は、看護教育を受けて学士号を取得し、英語スキルも習得しなければなりません。

日本もしくはイギリスで看護学科がある大学を探し、看護の学士号を取得しましょう。 既に英語が話せるのであればイギリスの大学に入るのがおすすめです。

まだ英語が話せない場合は日本で英語の勉強をしながら大学を卒業し、条件が揃ってからNMC登録に進みましょう。

イギリスのNMC看護師登録の流れ

上記の条件を全て満たした人だけがNMCの登録に進むことができます。

NMC登録は以下のような流れになっています。

①自己審査

NMCでは、登録申請の前に応募者にオンラインでの自己審査を義務付けています。 NMCのサイトで健康状態や人柄、英語レベル、資格に関する質問への回答と、書類提出への同意が必要です。

②能力審査1:CBT(Computer Based Test)

自己審査が通れば最初のテストに進むことができます。

審査1はコンピューターでの選択問題です。 こちらは10日以上間隔を空ければ3回まで受験することができます。

半年以内に合格する必要があり、半年以内に終わらないもしくは不合格の場合は自己審査からやり直しとなります。

③応募審査

CBTに合格した人には以下の書類の提出が求められます。

  1. 現在有効なパスポート
  2. 出生証明書(戸籍謄本)
  3. 応募条件を満たしていることを証明できるもの
  4. 自国での資格を証明できるもの(看護師免許など)
  5. 無犯罪証明書(イギリス在住者はDBS)

その他指定される書類をサイトからDLし、必要事項を記入してNMCへ送付しましょう。

NMCが書類を確認し不備がなければ次のステージへ進むことができます。

④能力審査2:OSCE(Objective Structured Clinical Examination)

OSCEはNMC登録の最終試験です。

イギリスのNMC承認の大学にて行われ、アセスメントや看護プラン、看護実施、評価の能力を問われます。

こちらも10日以上の間隔を空ければ半年以内に3回挑戦が可能です。 半年以内に終わらなければ自己審査からやり直しになります。

⑤看護師登録

OSCEに合格した人は、NMCへの最終申告と登録料を支払い、めでたく看護師登録が完了となります!

詳しくはNMCの公式ホームページをご覧ください。

まとめ:イギリスでも日本人看護師は働ける!英語スキルを磨いておこう!

イギリスの看護師は勤務時間が長く、休憩時間も短いなど日本よりハードな印象を受けます。

しかし、残業が少ない、有休をしっかりとれるなど、オンとオフの区切りがハッキリしているのが特徴です。

英語スキルさえあれば日本人看護師も活躍できますので、ぜひ英語を修得してイギリスの病院で働いてみてはいかがでしょうか?

HLCAのグローバル看護師育成コースでは、医療英語を学び、それを実際の医療現場で実践する機会があります。

実際にこの目で途上国の現場を見てみたい!

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この記事を書いた人
nico〔ニコ〕

大学卒業後、病院で3年間看護師として勤務し現在はベトナムに移住。医療従事者としての経験、海外居住の経験から日本人医療従事者も英語を学ぶべきと痛感。そのような経験からHLCA BLOGにて医療英語の必要性や海外の医療現場の情報を発信しています。