「海外で看護師として働いてみたい。でも、イギリスってどんな資格が必要なんだろう」と感じている方もいるのではないでしょうか。
イギリスは英語留学でも人気の国で、近代看護教育の母・ナイチンゲールが看護の基礎を築いた国でもあります。
この記事では、日本人がイギリスで看護師になる方法と日本の看護師との働き方の違いを、あなたの今の状況(大卒・短大専門卒・資格なし)別に分かりやすく解説します。
読み終える頃には、自分が次に何をすればいいかが明確になっているはずです。
この記事のもくじ
イギリスで日本人が看護師になるには?
結論から言うと、日本人でもイギリスで看護師として働くことはできます。
NMC(Nursing and Midwifery Council)の規定によると、EU/EEA外の外国人がイギリスで看護師登録をするには、イギリスのLevel1の看護師と同等の資格(3年の看護教育を修了し、学士号を取得していること)と英語スキルの証明の2つが条件になります。
自分がどのルートに当てはまるか、まずは次の表で確認してみましょう。
| あなたの状況 | 学士号 | 次にやること |
| 日本の看護資格あり×4年大卒 | 取得済み | 英語試験(IELTS・OETなど)に合格すればNMC登録申請へ進めます |
| 日本の看護資格あり×短大・専門卒 | 未取得 | 日本もしくはイギリスの大学で看護の学士号を取得してから、英語試験を受けます |
| 看護資格なし | 未取得 | 看護系の学士号取得(イギリスの大学なら英語力もあわせて伸ばせます)と英語試験の両方が必要です |
学士号と英語スキルの2つが揃った人だけが、NMCへの登録申請に進めます。登録の具体的な流れと英語試験の要件は、次の見出しで詳しく解説します。
イギリスの看護師に必要な資格と登録の流れ(NMC登録)

イギリスの看護師には、日本のような国家資格はありません。その代わり、NMC(=The Nursing and Midwifery Council/看護・助産審議会)への看護師登録が必要です。
NMCとは、イギリス保健省の「看護助産規定2001(Nursing and Midwifery Order)」に基づき看護師の登録や教育の規範を定めている機関です。登録後も3年ごとに更新しなければなりません。
イギリスの看護教育では、学生時代に次の4つの専門領域から1つを選択する点が日本と異なります。
- 成人看護(Adult)
- 小児看護(Child)
- 精神看護(Mental Health)
- 学習障害看護(Learning Disability)
また、修士号と実務経験を積むと「Nurse Specialist」という各領域の専門看護師になる道もあります。日本の「専門看護師」(修士号+実務研修5年以上)と近い位置づけです。
英語スキルの証明方法
NMC登録に必要な英語スキルは、以下のいずれかで証明できます(2026年9月時点・NMC公式ページで確認)。
| 試験 | 必要スコア |
| IELTS(アカデミック) | Listening 7/Reading 7/Writing 6.5/Speaking 7 |
| OET(医療従事者向け英語試験) | Listening B(350以上)/Reading B(350以上)/Writing C+(300以上)/Speaking B(350以上) |
このほか、英語で教育・試験された看護資格を持っている場合や、英語圏での実務経験が1年以上ある場合も証明として認められます。最新の基準は必ずNMC公式サイトでご確認ください。
受験料の目安は、IELTS(コンピューター受験・アカデミック)が日本国内で29,700円です(2026年9月1日以降の申込分から。それ以前の申込は27,500円)。出典は日本英語検定協会のIELTS受験料ページです。
NMC登録までの流れ
学士号と英語スキルの条件を満たした人は、以下の流れでNMC登録を進めます。
①自己審査
NMCでは、登録申請の前に応募者にオンラインでの自己審査を義務付けています。NMCのサイトで健康状態や人柄、英語レベル、資格に関する質問への回答と、書類提出への同意が必要です。
②能力審査1:CBT(Computer Based Test)
自己審査が通れば最初のテストに進めます。コンピューターでの選択問題で、10日以上間隔を空ければ3回まで受験できます。半年以内に合格する必要があり、間に合わない・不合格の場合は自己審査からやり直しです。
③応募審査
CBTに合格すると、以下の書類の提出が求められます。
- 現在有効なパスポート
- 出生証明書(戸籍謄本)
- 応募条件を満たしていることを証明できるもの
- 自国での資格を証明できるもの(看護師免許など)
- 無犯罪証明書(イギリス在住者はDBS)
(参考:NMC公式ホームページ)
その他指定される書類をサイトからDLし、必要事項を記入してNMCへ送付します。NMCが書類を確認し不備がなければ次のステージへ進めます。
④能力審査2:OSCE(Objective Structured Clinical Examination)

OSCEはNMC登録の最終試験です。イギリスのNMC承認の大学で行われ、アセスメントや看護プラン、看護実施、評価の能力が問われます。こちらも10日以上の間隔を空ければ半年以内に3回挑戦できます。半年以内に終わらなければ自己審査からやり直しです。
⑤看護師登録
OSCEに合格した人は、NMCへの最終申告と登録料を支払い、看護師登録が完了します。詳しくはNMCの公式ホームページをご覧ください。
NMC登録にかかる費用
日本の看護師資格を持つ方がNMCに登録する場合、試験料を含めた費用は次のとおりです(2026年9月時点・NMC公式ページで確認)。
| 項目 | 金額 | 円換算の目安 |
| 資格の評価 | 140ポンド | 約29,000円 |
| CBT(筆記) | 83ポンド | 約17,000円 |
| OSCE(実技) | 794ポンド | 約167,000円 |
| 登録料 | 153ポンド | 約32,000円 |
| 合計 | 1,170ポンド | 約246,000円 |
円換算は1ポンド=210.66円(2026年9月21日時点)で計算した目安です。為替で変わるため、支払い時のレートでご確認ください。
不合格になった場合の再受験料は、CBTが83ポンド(一部のみの再受験はPart A 50ポンド/Part B 70ポンド)、OSCEが397ポンド(不合格が7項目以下の場合。8項目以上は全額794ポンド)です(出典:NMC公式・OSCEのページ)。
NMCの審査にかかる期間
書類と支払いがそろったあと、NMCは30日以内に審査することを目安としており、規定上は申請の受理から3ヶ月以内に結論を出すことになっています(出典:NMC公式・申請の評価について)。
これはNMCの審査にかかる期間で、英語試験やCBT・OSCEの準備、ビザの取得、就職活動にかかる時間は含みません。
イギリスの看護師の給与

では、気になるイギリス看護師のお給料はいくらなのでしょうか。
イギリスの登録看護師(初任〜数年目にあたるNHS Band 5)の給与は、NHS Employers公式の給与表(2025/26年度)で次のように定められています。
NHS Band 5(登録看護師)年収:31,049ポンド〜37,796ポンド(初任〜最終号俸/中間号俸33,487ポンド)
1ポンド=210.66円(Frankfurter(欧州中央銀行基準レート)2026年9月21日時点)で円換算すると、以下のようになります。
- 初任号俸(31,049ポンド):約654万円
- 中間号俸(33,487ポンド):約706万円
- 最終号俸(37,796ポンド):約796万円
以前は円安前のレートで計算していたため、イギリスと日本の看護師の年収は「あまり変わらない」と紹介していましたが、最新の給与表と為替で計算し直すと、イギリスの登録看護師の年収は日本の看護師より高い水準になります。
なお、イギリス全体の平均年収(フルタイム勤務の中央値)は39,039ポンドです(2025年4月時点・出典:英国国家統計局 ASHE 2025)。Band 5の中間号俸(33,487ポンド)は、この全体平均をやや下回る水準です。
参考として、日本の看護師の平均年収は4,727,000円、日本全体の平均年収は4,673,000円です(引用元:看護師の年収、国税庁)。ただし、この日本側の数値は本記事の従来掲載データをそのまま残したもので、今回の更新では再検証していません。物価水準や税・社会保険料の違いもあるため、額面の比較だけで生活水準の優劣を判断しないようご注意ください。
イギリスと日本の看護師の違いを比較
ここまで確認してきたイギリスの看護師の特徴を表でまとめました。
| イギリス | 日本 | |
| 免許 | NMCに登録 | 国家資格もしくは准看護師免許 |
| 免許更新 | 3年ごとに登録更新 | なし |
| 教育 | 大学で3年間の履修/学生時代に専門領域を決める | 専門学校・短大・4年大で履修/学生時代に専門領域は決めない |
| 日勤の長さ | 12時間以上のロングデーシフトも一般的 | 8時間前後が一般的 |
| 夜勤明け | 夜勤明けにまた夜勤が入ることもある | 夜勤明けは休みが多い |
| 残業 | 少ない。記録を次勤務に引き継ぐ運用で、残業代もしっかり支給 | 多め。サービス残業も課題になりやすい |
| 有休 | 法定最低28日(5.6週間)。実務上もほぼ消化できる | 消化できないことも多い |
| 退院のタイミング | 当日午前に決まり午後退院ということもある | 前日までに決まっていることが多い |
| 給与(年収の目安) | NHS Band 5:約654万〜796万円(中間約706万円) | 4,673,000円(全体平均よりやや上) |
イギリスの看護師の勤務体制

イギリスと日本の看護師の勤務体制には、どのような違いがあるのでしょうか。ここでは、実際にイギリスで働いている日本人看護師のブログやYouTube動画などから読み取れる特徴を紹介します。
大きな違いは、上の比較表にまとめた「日勤の長さ」「夜勤明けの扱い」「残業」「有休」「退院のタイミング」の5点です。特に勤務時間については、次のような実際の声があります。
朝8時に夜勤が終わり、その日の20時に次の夜勤がスタートするので、連続夜勤中はお酒も飲まずできるだけ睡眠確保
(引用元:イギリスでナース!)
やり残したことがあっても、基本すべて次勤務帯に引き継ぐため、記録さえ終わっていれば残業することもないです。残業代は必ず支払われます。
(引用元:イギリスでナース!)
イギリスの看護師ってお休みとれるの? ずばり、とれます。年休余るとかありえませんから!
イギリスの退院や転院ってほんとに急なんです! こちらではほんとその日の午後帰しますからね。手術の翌日とかでも全然ありです。
勤務そのものはハードに感じる場面も多いですが、オンとオフの区切りがハッキリしているのがイギリスの看護現場の特徴と言えそうです。
イギリスの看護現場で使う英語【申し送り・報告・患者対応】
NMC登録という資格のハードルを越えても、本当の勝負は病棟(ward)で英語を使い始めてからです。
イギリスの医療現場では、日本語にすると一言で済む内容でも、英語では決まった「型」で伝えることが求められます。
ここでは、医療英語専門スクールであるHLCAが、イギリスの現場で実際に使われる英語表現を場面別に整理しました。
申し送り(handover)で使う英語:SBARの型
イギリスをはじめ英語圏の看護では、
申し送りや医師への報告に SBAR(Situation/Background/Assessment/Recommendation)という型が広く使われます。
この4ステップに沿うだけで、緊張する英語の申し送りが一気に伝わりやすくなります。
- S(Situation・状況):This is Mr. Smith in bed 4, a 72-year-old gentleman admitted with pneumonia.(4番ベッドのスミスさん、72歳男性、肺炎で入院中です)
- B(Background・背景):He has a history of COPD and was started on IV antibiotics yesterday.(COPDの既往があり、昨日から抗生剤の点滴を開始しています)
- A(Assessment・評価):His sats have dropped to 88% on room air and his respiratory rate is 26.(室内気でSpO2が88%まで低下し、呼吸数は26です)
- R(Recommendation・提案):I think he needs oxygen and a review by the doctor. Could you come and see him?(酸素投与と医師の診察が必要だと思います。診ていただけますか?)
医師・同僚への報告とエスカレーションで使う英語
急変時や判断に迷ったときに、ためらわず助けを求める表現は命を守る英語です。
- I’m a bit concerned about this patient.(この患者さんが少し心配です)
- His NEWS2 score has gone up to 7.(NEWS2スコアが7まで上がっています)※NEWS2はイギリスで標準の早期警告スコア
- Could you bleep the doctor on call, please?(オンコールの先生を呼び出してもらえますか?)※bleep=ポケベルで呼ぶ
- We need to put out a crash call.(急変コールをかける必要があります)
患者・家族への説明で使う英語
処置の前の一言(声かけ)は、患者さんの安心と協力につながります。
- I’m just going to take your blood pressure, is that all right?(血圧を測りますね、よろしいですか?)
- This might feel a little cold / sharp.(少し冷たい/チクッとするかもしれません)
- Take your time, there’s no rush.(ゆっくりで大丈夫ですよ、急がなくて構いません)
- I’ll be back to check on you in a little while.(また少ししたら様子を見にきますね)
知らないと戸惑うNHS特有の英語・用語
イギリスのNHS(国民保健サービス)には、教科書英語には出てこない独特の言い回しがあります。最初に知っておくと現場での戸惑いが減ります。
- obs=observations(バイタル測定)。”Have you done his obs?” は「バイタル測った?」
- A&E=Accident & Emergency(救急外来。アメリカのERにあたる)
- ward sister / matron=病棟の看護管理者(師長クラス)
- bank / agency nurse=院内登録・派遣の応援看護師
- drug round=与薬ラウンド、theatre=手術室、HCA=看護助手
- Band 5=新人正看護師の給与等級(イギリスの看護師は経験でBandが上がります)
HLCAのグローバル看護師育成コースでは、こうした申し送り・報告・患者対応の英語を、知識ではなく実際に声に出すロールプレイで練習します。
「資格は取れても現場の英語が不安」という方こそ、ここが伸びしろです。
英語試験から登録までの流れ:OETとIELTS、どちらを選ぶ?
イギリスで看護師(registered nurse)として働くには、NMC登録の過程で英語力の証明が必要になることは、すでにご紹介したとおりです。
ここでは、証明方法として使うOETとIELTSのどちらを選べばいいかを中心に解説します。
- OET:看護・医療の実務に沿った設問が多く、看護師には取り組みやすいとされます。普段の業務で使う表現がそのまま対策になる点もメリットです。
- IELTS(アカデミック):看護以外の分野でも通用する汎用的な英語試験です。看護以外の進路も並行して検討している場合に選ばれることがあります。
どちらもNMCの要件(前の見出しの表)を満たせば有効です。迷ったら、実務に近い内容で対策できるOETから検討するのがおすすめです。
英語試験に合格したあとは、前述のNMC登録の流れ(自己審査→CBT→応募審査→OSCE→看護師登録)に進みます。
対策の進め方はOET試験の勉強法とおすすめ参考書で詳しく解説しています。
海外で看護師になる全体像は国際看護師になるには、英語を活かした働き方は英語が話せる看護師の仕事15選もあわせてご覧ください。
イギリスで働く日本人看護師についてよくある質問
Q. イギリスで看護師として働くには、どのくらいの英語力が必要ですか?
A. NMC登録には、IELTSアカデミックでListening 7/Reading 7/Writing 6.5/Speaking 7、またはOETでListening・Reading・Speaking B以上/Writing C+以上が目安として求められます(2026年9月時点のNMC公式情報)。
加えて、現場では申し送り(SBAR)や患者対応など「使う英語」が必要になるため、試験対策と並行して実践的な医療英語を身につけておくと安心です。
Q. OETとIELTS、看護師はどちらを受けるべきですか?
A. どちらでもNMCの要件は満たせますが、OETは設問が医療・看護の実務に沿っているため、看護師には取り組みやすいとされます。
普段の業務で使う表現がそのまま対策になる点もメリットです。
Q. 現場で日本人看護師が一番つまずく英語は何ですか?
A. 多いのは「申し送り」と「急変時の報告」です。
落ち着いているときは話せても、忙しい場面で要点を英語で組み立てるのは難しいもの。
SBARの型を覚え、声に出して練習しておくことが有効です。
Q. NMC登録にはどのくらい時間がかかりますか?
A. 英語試験・CBT・OSCEの準備状況によって個人差がありますが、英語力の証明が最初の大きな関門です。
早めに英語対策を始めることが、結果的に登録までの近道になります。
Q. イギリスの看護師の年収はどのくらいですか?
A. イギリスの登録看護師(NHS Band 5)の年収は31,049〜37,796ポンド(2025/26年度・NHS Employers公式給与表)です。2026年9月時点の為替(1ポンド=210.66円)で換算すると、約654万〜796万円になります。
イギリスの看護師の歴史

「近代看護教育の母」といえば、ナイチンゲール。看護師でその名を聞いたことがない人はいないでしょう。
そのナイチンゲールが看護師として勤務していたのがイギリス・ロンドンの病院でした。
ナイチンゲールはクリミア戦争でイギリス従軍看護婦として従事したり、イギリスの病院分析に初めて統計学を用いるなど、看護学を確立させた人物です。
ナイチンゲールがクリミアで「クリミアの天使」と呼ばれたことが看護師の「白衣の天使」という呼び名の語源にもなっています。
そのナイチンゲールが活躍したイギリスは、私たちが行っている看護の始まりの地とも言えるのです。ここまで読んで、イギリスの看護師の「今」がイメージできたところで、最後にこの歴史を知っておくと、現場の制度がより腹落ちするはずです。
まとめ|イギリスでも日本人看護師は働ける。まず自分の状況を確認しよう
イギリスでは、学士号と英語スキル(IELTSまたはOET)の2つが揃えば、日本人看護師もNMCへの登録申請に進めます。勤務時間は長めですが、残業が少なく有休もしっかり消化できるなど、オンとオフの区切りがハッキリしているのがイギリスの看護現場の特徴です。
最新の給与表で計算すると、イギリスの登録看護師(NHS Band 5)の年収は約654万〜796万円と、日本の看護師の平均年収より高い水準になっています。
とはいえ、資格の条件を満たすだけでなく、病棟で実際に使う英語まで含めて準備しておかないと、現場に出てから苦労しがちです。HLCAのグローバル看護師育成コースでは、医療英語を学び、それを実際の医療現場を想定したロールプレイで練習できます。
「まず自分がどのルートに当てはまるか整理したい」「英語対策をどこから始めればいいか相談したい」という方は、無料カウンセリングでお気軽にご相談ください。
イギリスで看護師登録をするにはOETまたはIELTSのスコアが必要です。OET試験の勉強法とおすすめ参考書で対策方法を確認できます。
海外で看護師になるための全体的な流れは国際看護師になるにはを、英語を活かした働き方は英語が話せる看護師の仕事15選をご覧ください。
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