難易度がどんどん上がっている日本の医学部。
学力はもちろん、学費や倍率を考えると、医学部入学は非常に狭き門です。
そこで最近注目を集めているのが、海外医学部への留学です。
学費面や入試の難易度などを総合的に見て、海外医学部を選ぶ人が増えているのです。
海外医学部の魅力とはどんなものなのでしょうか?
本記事では海外医学部のメリット・デメリットをご紹介していきます!
日本で医師になる方法も解説しますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
この記事のもくじ
海外医学部の卒業者が増加中!
近年、日本の医師の中でも海外医学部卒業者が増加中です。
厚労省の調査によると、海外医学部卒業者で医師国家試験に合格した人は、2018年で95名に上り、2009年の19名から9年連続で増加しています。(参考:海外医学部を卒業した医師の動向)
特にハンガリーの医学部卒業生が急増しており、2008年の受験者21名から、2018年には95名にまで増加。 10年で受験者が約4.5倍増えています。
日本国内の医学部が狭き門となっている今、海外医学部留学も1つの方法となっているのです。
海外医学部を卒業しても日本で医師になれる?
海外の医学部を卒業した人で、医師法で定められた条件を満たす人は、日本の国家試験を受けることができます。
例え現地の医師免許を持っていたとしても、日本の国家資格を取得しなければ日本で医師になることはできないので注意しましょう。
国家試験の受験資格がない人でも、条件を満たせば医師国家試験予備試験を受けることができます。
予備試験に合格することで国家試験の受験資格が得られるので、双方の条件をしっかり確認した上で、進路を決定しましょう。
医師国家試験の受験資格
海外の医学部卒業生で医師国家試験を受けることができるのは、以下の条件を満たしている人です。
- 高等学校卒業以上(修業年数12年以上)
- 6年以上(進学課程;2年以上、専門課程;4年以上)の一貫した専門教育(4500時間以上)を受けていること。ただし、5年であっても、5500時間以上の一貫した専門教育を受けている場合には、基準を満たすものとする。
- 医学校卒業までの修業年限が18年以上(5年制の場合は、17年でも可)
- 医学校卒業から10年以内(但し、医学教育又は医業に従事している期間は除く)
- 大学附属病院の状況、教員数等が日本の大学とほぼ等しいと認められること
- WHOのWorld Directory of Medical Schoolsに原則報告されている
- 医学校卒業後、当該国の医師免許を取得している
- 日本の中学校及び高等学校を卒業していない者については、日本語能力試験N1の認定を受けている
(引用:医師国家試験受験資格認定について)
第一条件として、卒業校の国の医師免許を取得しなければ医師国家試験を受けることはできません。
さらに、専門教育の履修時間が5500時間未満であったり、学校環境が日本の大学に等しいと認められなかったりすると、受験資格を認めてもらえない場合があります。
海外医学部に留学する際は、日本の医師国家試験の受験資格を満たしているか必ず確認するようにしましょう。
これらの条件を満たしていれば、以下の流れで医師国家試験を受験することになります。
現地の医師免許を取得してから書類審査となるので、日本の国家試験の受験は卒業から少なくとも2~3年は先になりそうです。
医師国家試験予備試験の受験資格
国家試験の受験資格がない場合でも、条件を満たせば国家試験予備試験を受けることができます。
国家試験予備試験とは国家試験の受験資格を得るための試験です。
試験に合格し、1年間の実地修練を終えることで国家試験を受験できます。
予備試験受験の条件は以下です。
- 高等学校卒業以上(修業年数12年以上)
- 修業年数が5年以上(専門課程;4年以上) であり、専門科目の履修時間が3500時間以上、かつ一貫した専門教育を受けていること。
- 医学校卒業までの修業年限が17年以上
- 医学校卒業から10年以内(但し、医学教育又は医業に従事している期間は除く)
- 大学附属病院の状況、教員数等が日本の大学より劣っているものでないこと
- WHOのWorld Directory of Medical Schoolsに原則報告されている
- 当該国の医師免許は取得していなくてもよい
- 日本の中学校及び高等学校を卒業していない者については、日本語能力試験N1の認定を受けている(引用:医師国家試験受験資格認定について)
5年制の大学で、専門教育が3500~5500時間の場合は予備試験の対象となります。
現地の医師免許を持っていない人も対象となりますので、卒業後日本で医師免許を取得する予定だった人は予備試験を経て国家試験を受験するのが早いでしょう。
受験の流れは以下になります。
①書類審査(申請締切:7月末又は3月末)
②医師国家試験予備試験受験資格認定
③医師国家試験予備試験(6~11月頃)
③1年以上の実地修練
④医師国家試験 (2月頃)
(引用:医師国家試験受験資格認定について)
予備試験の場合は現地で医師免許を取る必要がない分、日本での実地修練の時間が必要になります。
大学卒業後はできるだけ早く試験の準備を進めるようにしましょう。
海外医学部の卒業者も日本で医師になれる!
以上より、海外医学部の卒業者も日本で医師になることは可能です。
おおよその条件を表にまとめてみました!
現地の医師免許 | あり | なし | ||
大学の修業年数 | 6年制以上 | 5年制で専門教育5500h以上 | 5年制で専門教育3500h以上 | 左記いずれにもあてはまらない |
教育環境 | 日本の大学に等しい | 日本の大学に劣っていない | ||
適応受験資格 | 医師国家試験 | 予備試験受験資格 | 受験資格なし |
現地の医師免許があっても国家試験は受験しなければならないので、しっかり計画を立てておく必要がありますね。
詳しくは厚労省のホームページをご覧ください。
海外医学部のメリットとは?
わざわざ日本を離れ、海外の医学部を卒業するなんて大変そうですが、それでも人気が高まっているのはなぜなのしょうか?
海外医学部を卒業するメリットを調べてみました!
①日本の医学部よりも学費が安いことがある
一般的に海外留学は高額なイメージがありますが、医学部留学の場合はそうとも限りません。
そもそも日本の医学部も非常に高額で、私立大だと卒業までに2000万円~4000万円以上する大学もあります。
国立大の場合は卒業までに400万円程度で収まりますが、倍率も偏差値も非常に高く、入学自体が難しいのが現状です。
それに比べて、近年入学者が急増しているハンガリーの医学部は、卒業までにかかる学費が大体1800万円と、日本の私立大よりも割安になっています。
中国の医学部は500万円前後と言われており、日本の国立大とあまり変わりません。
「国立大に入れる自信はないけど、日本の私立大に行く余裕もない・・・」
そんな人にとって、海外の医学部も魅力ある選択肢の1つとなっているのです。
②活躍できる場が広がる
海外の医学部を卒業して、現地の医師免許を取得すると、自然と活躍の場が広がります。
医師免許があれば日本の医師国家試験もスムーズですし、もちろん現地での医師活動も可能です。
ハンガリーで医師免許を取得した場合はEU圏内どこでも医師活動ができるので、ヨーロッパと日本の双方で働けるようになります。
日本に縛られず、自由な働き方ができるのは非常に魅力的ですね。
③入学試験が日本より簡単な場合がある
日本の医学部受験は、基本的に多くの科目で高得点を取らなければいけません。
例えば、千葉大の医学部の受験科目は以下のようになっています。
●センター試験 5教科7科目
【国語】国語
【数学】数IA・数IIB
【理科】物・化・生から2科目選択
【外国語】英・独・仏から1科目選択
【選択】地歴・公民から1科目選択
《地歴》世B・日B・地理Bのどれか
《公民》「倫理・政経」
●個別学力試験 3教科
【数学】数I・数A(場合の数と確率・図形の性質・整数の性質)・数II・数B(数列・ベクトル)・数III
【理科】「物基・物」・「化基・化」・「生基・生」から2
【外国語】コミュ英語I・コミュ英語II・コミュ英語III
【面接】
(引用:大学受験パスナビ)
センター試験の7科目に加え、個別試験では10科目+面接が必要となり、非常に高い能力を求められることが分かります。
もちろん海外の医学部も厳しい入学条件が定められていることがほとんどですが、必ずしもそうではない国もあるのです。
近年人気のハンガリーの医学部は、入学試験が日本より簡単だと言われています。
デブレツェン大学の受験科目は以下です。
一次審査
①書類審査
②筆記審査
1. 生物・化学・物理(2科目を選択)※日本語または英語を選択
2. 英語(リスニング、文法、読解)
③面接審査
二次審査
①筆記審査(英語)
1. 生物(選択問題10問、記述問題2問)※必須
2. 化学か物理のどちらかを重点科目として選ぶ(選択問題5問、記述問題2問)
3. 重点科目として選択しなかった科目(選択問題3問)
②口頭試問(英語)
生物(必須)、化学または物理(選択)に関する質疑応答
(引用:ハンガリー国立大学医学部)
一次審査の筆記審査は全3科目のみで日本語での受験も可能、二次審査も英語とはいえ全3科目のみで、問題数もかなり少ない印象です。
浪人が当たり前という日本の医学部に対し、こうした海外の医学部なら現役合格も夢ではありません。
海外医学部にデメリットはある?
海外医学部の人気が高まっているとはいえ、もちろん良いことばかりではありません。
海外医学部に入学するデメリットをまとめてみました。
①語学習得は必須!
海外の医学部に入学するということは、現地の言語を話さなければいけないということです。
近年人気のハンガリーの医学部も、受験時には日本語OKの科目もありますが、授業は全て英語で行われます。
学費が安い中国の大学も、中国語で授業が行われることがほとんどです。
学力だけではなく、大学でついていけるだけの語学力も身に着けなければいけないので、非常に多くの勉強時間が必要となります。
②入学できても卒業が難しい!
海外の医学部は入学が簡単なことがあるというメリットがありましたが、実は入学できても卒業が難しいという声も聞かれています。
もともと入学時には(日本人が)13人いました。ただ、今3年生にストレートで上がっていった人は4人。
口の上手さがすごく大きくて。
(中略)
試験を受けるのは口語なので、教授に「この子分かってるな」って思わせる喋りをすると受かったりする時もありますね。
(引用:【ハンガリー医学部の光と闇】入学までの流れから留年・進級のリアルまで現役医学部生が全てを語ります。【Part.1】)
ハンガリーの医学部は多くの場合、試験が口頭試問で行われます。
試験官の質問に口頭で正確に答えなければならないため、いかに深く理解し、その場で的確に説明できるかが試されるのです。
13人中4人しかストレートで進級していないということは、約7割の生徒は留年してしまうということなので、決して楽な道のりではないことが分かります。
入学が楽だからといって甘く見ていると、痛い目に遭うことは間違いありませんね。
③学費が安い学校は限られている!
海外の医学部は日本よりも学費が安いことがありますが、そういった大学は中国や東ヨーロッパに集中しています。
多くの場合は日本の私立大並みの学費で、非常に高額です。
最先端医療に力を入れているアメリカは3000万円程度、イギリスは2000万円以上など、決して安くない学費がかかってきます。
もちろん現地の生活費なども必要になりますので、しっかりリサーチしてプランを立てることが大切です。
▼各国の学費など詳細はこちらからもご覧いただけます!
目的を明確にして海外医学部への留学を有意義に!
近年人気の海外医学部への留学には、メリットとデメリットの双方があります。
日本の医師国家試験にも受験資格がありますので、自分が行きたい大学が条件を満たしているかしっかり確認しましょう。
日本よりハードルが低いこともある一方、そうした大学は限られている上、語学力も必要となります。
自身の描くビジョンに反していないか、留学の目的を明確にして検討することが重要です。
綿密にプランニングをして、海外医学部への留学を有意義なものにしましょう!
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