こんにちは。セブ島の医療英語スクールHLCAの現地インターン生です。
この記事では、セブ島で見聞きした「フィリピンの医療の実態」と、留学を検討する医療従事者の方が知っておきたい保険・現場のポイントをまとめます。
この記事のもくじ
フィリピンの医療の実態
見学実習で目にした現状
以下は、当校の医療英語留学に参加した生徒が、セブ医科大学付属病院での病院見学実習に行った際に見聞きした内容です。(見学の機会や実施条件は時期により異なるため、最新の内容は無料カウンセリングでご確認ください。)
その生徒さんに、見学実習をしていて驚いたことは何ですか?という質問をしたところ、
「病気や怪我で病院に来ても、お金を払えないため治療を受けられない患者さんが度々いること。」
と言っていました。
そのような患者さんはもし何かあっても病院は責任をとれませんよ、という書類にサインをして帰るというのです。
日本の病院では見ない光景だったため、とても驚いたそうです。
私もその話を聞いて驚いたと同時に、「フィリピンの医療保険制度はどうなっているのだろう。保険が適応されればそのようなことは起こらないのでは…?」という疑問がわいてきました。
そして恥ずかしながら、フィリピンの社会保障制度について詳しく知らなかったことに気が付きました。
フィリピンの社会保障制度には、大きく分けて「年金」と「医療保険制度」があります。 今回は、「医療保険制度」にフォーカスして、まとめていきたいと思います!
死亡率
まず、フィリピンの医療的な背景について確認してみたいと思います。
イメージがしやすいように、日本とともにまとめてみました。
(出所:総務省 自治体戦略2040構想研究会(第1回) 2017.10)
フィリピンは出生数が死亡数を上回り続けており、人口増加率はここ数年で落ち着いてきたものの、周辺の国と比較すると人口増加率が高い国です。兄弟が5,6人いるのは普通で、知り合いのフィリピン人の方の中には9人兄弟、13人兄弟もいらっしゃいました。(!)
平均寿命が68歳ということもあり、65歳以上の人口の割合は日本と比較するとかなり低いです。
平均寿命、乳児死亡率(Infant Mortality Rate)、妊産婦死亡率(Maternal Mortality Ratio) 、及び5歳児未満死 亡率(Under-5 Mortality Rate)はいずれも改善傾向にあるとはいえ、近隣諸国と比較しても状況は 悪く、依然、改善の余地があると考えられています。
フィリピンで多い病気
三大死因は、心疾患、血管系疾患、悪性新生物となっており、理由としては食生活が考えられます。
フィリピンの人々は、甘いものが大好きです。学校の講師の方がコーヒーを入れている時も、ブラックでは飲まず、砂糖とクリーマーを何杯も入れている光景を見かけます。
私はコーヒーよりも紅茶のほうが好きなのでよくお店でアイスティーを買うのですが、大抵すでにかなり甘く味付けされています。スパゲティや混ぜご飯のような料理も砂糖を入れるのが普通なので、フィリピンの人々は日ごろから過度な糖分を摂っていることが分かります。
加えて、塩分濃度が高い味付けと、高カロリーかつ栄養価が不十分な食生活の結果として、心臓病、癌や高血圧、糖尿病などの病気になりやすい人が増加しているといいます。
また、フィリピンの人々は、食べること自体が大好きです。当校があるITパークの中だけではなく、どこのショッピングセンターへ行っても、数えきれないほどの飲食店が並んでいます。
街角には屋台もたくさんあり、不衛生な屋台で売られている食べ物や飲み物は、下痢、A型肝炎、E型肝炎、コレラ、食中毒や腸チフスなどの感染症の原因になっています。
フィリピンの医療保険制度
公的医療保険制度を運営しているのは、 フィリピン健康保険公社(Philippine Health Insurance Corporation(PHIC):フィルヘルス)です。フィルヘルスは年金制度を運営している組織と同様に、政府管轄下の機関です。
財源は、労使双方の負担による社会保険料(働いている人と、会社が半分ずつ負担しています)、投資活動による資産運用に加え、公的支出(保健省及び地方自治体)から成り立っています。
会社に勤めた時点で、働いている人の分の保険料は自動的に給料から引かれています。
基本的に、入院医療に係る費用(室料、食費、薬剤費、 検査費、診療料など)及び外来医療(薬剤費、検査費、診 療費、予防サービス、救急・移送サービスなど)に対して保険料が支払われます。
給付は現物給付方式であり、医療費のうち、傷病の程度や医療施設のレベルに基づいて決められた一定額 が、フィルヘルスから医師又は病院に償還払い(費用をいったん全額支払い、その後自治体などに申請して払い戻しを受けること)され、 それを超える部分については患者の自己負担となります。
そのため、大きい手術や高額な医療を受けるときには自己負担がとんでもない額になってしまうこともあるため、富裕層はフィルヘルスとは別に民間の保険に加入している場合もあるそうです。
法律上は、公的医療保険制度に全国民の加入が求められています。しかし実際には十分ではなく、ある文献では加入率は70%との情報もありますが、明確には把握されていないのが現状です。
収入が少ない家庭では、日々の生活で精いっぱいで、保険料を払うことができず加入できません。まず今日を生きることが重要だからです。
フィリピンの貧困層は、保健・医療面において厳しい状況におかれています。所得下位 40%層の貧困世帯による医療機関へのアクセス状況を見ると、全体的に貧困層で医療機関を利用している層は少なく、良くても30%台の後半にとどまっているといいます。
フィルヘルスより「貧困」 の指定を受けた者については、「貧困プログラム(Sponsored Program)」により、保険料を国と地方自治体が分担して払ってくれるという制度もあるそうですが、加入率は変動が大きい上、正確な加入率の把握は十分ではないそうです。
しっかりとこのようなプログラムが行き渡っていれば、生徒さんが病院でみたような光景も起こっていないはずです。
HLCAの先生の知り合いの中にも、父親が医療費を払えず手術を受けられず亡くなった方や、病院で亡くなった家族の遺体を引き取るために、更にお金の支払いが必要だった方などがいたそうです。
せっかく医療保険というシステムがあるのに、それが必要な人々に十分に機能していないという印象を受けます。
留学生・短期滞在者は公的医療保険(フィルヘルス)の対象になるのか
ここまでフィリピンの公的医療保険「フィルヘルス(PhilHealth)」を見てきましたが、医療英語留学でセブ島に来る方からよく聞かれるのが「自分も加入できるの?」という質問です。
フィリピンでは2019年に成立したユニバーサル・ヘルスケア法(Universal Health Care Act/共和国法第11223号)により、原則としてすべてのフィリピン国民が国民健康保険プログラムに加入する仕組みになっています(出典:Republic Act No. 11223)。一方で、この公的保険の対象は基本的にフィリピン国民で、留学などで短期滞在する外国人は対象に含まれないと考えておくのが安全です。自分のケースが対象になるかは、渡航前に必ず最新の公式情報を確認してください。
そのため、医療英語留学でセブ島に滞在する場合は、海外旅行保険または留学保険への加入を強くおすすめします。入院や手術になると医療費が高額になる場合があり、万一に備えて準備しておくことが大切です。本記事の前半でも触れたとおり、フィリピンの病院は前払いが基本で、入院時に前金を求められるケースもあるため、いざという時に立て替えられる手段を確保しておくと安心です。
フィリピンの病院のシステム

フィリピンの病院はオープンシステムという方式になっています。
日本では、全体の受付があり、そこで会計をしたり受診する科を案内されたりしますよね。お会計も受診後にまとめて支払うと思います。
しかしフィリピンは支払い方法が独特で、医師、各種検査室がそれぞれ会計場所を設けており、かつ前金制です。患者さんは受診したい科のところへ行き、診察の前に受診料を医師へ直接支払います。
検査を受けるときは、検査内容ごとにそれぞれの専用会計場所で一つ一つ支払い、検査ごとに先に支払いを済ませないと検査を受けることができません。
まるでショッピングモールのようです。
また、入院となった場合には、入院前に前払いの保証金(約4~10万円程) を支払わなければ入院手続きもできないシステムになっているのです。
そのため、お金を持っていない人は、そもそも検査を受けることも、診察を受けることもできません。病院に行っても、何もサービスを受けることができないのです。
セブ島医療英語留学で知っておきたい「病院見学(オブザーバーシップ)」
ここまで読んで「フィリピンの医療現場を自分の目で見てみたい」と感じた方もいるかもしれません。記事の前半で紹介した病院の様子は、当校の医療英語留学に参加した生徒が現地で見学した際に見聞きした内容にもとづいています。
医療留学では、現地の医療機関で診療・看護の現場を見学し、患者対応や医療従事者同士のやり取り、医療英語が使われる場面に触れられる機会が用意される場合があります。教室で学んだ医療英語が現場でどう使われているのかを感じられる点が、座学だけの学習との違いです。
「英語に自信がないと現場での学びは難しいのでは」と不安に思う方もいますが、HLCAの受講生は約7割が初心者からのスタートです(出典:HLCA公式FAQ)。医療英語の基礎を学んでから現場に臨むことで、初心者の方でも現場から学べることがあります。患者さんとの基本的なやり取りに不安がある方は、外国人患者とのコミュニケーションで使える医療英語もあわせて確認しておくとよいでしょう。
見学の機会や条件は時期によって変わるため、最新の実施状況は無料カウンセリングでご案内しています。
フィリピンの医療現場を体験して感じたこと(現地スタッフ・受講生の観察より)
HLCAのスタッフやインターン生、現地の医療現場に触れた受講生から聞いた、フィリピンの医療を体験して印象的だったポイントを紹介します。
多くの人がまず印象に残るのが、支払いが難しい場合に、必要な検査や治療を受けられないケースがあるという点です。記事の前半で紹介したとおり、前払いができないために治療を受けられず帰っていく患者さんを見かけたという話があり、日本の医療制度との違いを実感したという感想を聞くことがあります。
一方で、医療従事者として現地の現場に触れることで、「医療英語を学ぶ意味」をあらためて感じたという声もあります。患者さんの背景や事情を英語でくみ取り、限られた条件の中でどう対応するか――そうした場面に触れる経験は、日本国内で外国人患者に対応する際にも生きてきます。HLCAでは看護師をはじめとする医療従事者の方にも受講いただいています。
「現場でどんな英語が必要なのか、もっと具体的に知りたい」という方は、看護師が押さえておきたい医療英語のグループ別整理や、効率よく医療英語を身につける方法をまとめた最短で医療英語を身につける学習法もあわせて読んでみてください。
フィリピンの医療〜実態や医療保険制度、病院のシステムを解説〜のまとめ
フィリピンの医療・留学に関するよくある質問
Q. フィリピン留学に保険は必要ですか?
A. 海外旅行保険または留学保険への加入を強くおすすめします。留学などで短期滞在する外国人はフィリピンの公的医療保険(フィルヘルス)の対象に含まれないと考えておくのが安全で、入院・手術になると医療費が高額になる場合があるためです。学校によっては保険加入が必須または推奨されることがあります。
Q. 病院見学は英語初心者でも学びになりますか?
A. HLCAの受講生は約7割が初心者からのスタートで、医療英語の基礎を学んでから現場に臨みます。見学の機会や条件は時期により変わるため、最新の実施状況は無料カウンセリングでご案内しています。
Q. 日本とフィリピンの病院の違いは何ですか?
A. 大きな違いは支払い方式です。日本は受診後にまとめて会計するのが一般的ですが、フィリピンの病院は診察・検査ごとに前払いで支払うのが基本です。入院時には前金を求められることもあります。
Q. フィリピンで医療費が高額になることはありますか?
A. 入院や手術になると高額になる場合があると案内されています。金額は症状・医療機関・時期により大きく異なるため、海外旅行保険で備えておくことが大切です。
・フィリピンの三大疾患は、心疾患、血管系疾患、悪性新生物であり、食生活が関連している ・フィルヘルスという機関が公的医療保険制度を運営しているが現状把握が不十分で、カバーしきれていない ・フィリピンの病院は部門ごとに前払い制で、お金がないと医療が受けられない現状がある。
フィルヘルスや年金を運営している政府団体のHPを見ると、財源も安定しており、しっかりとしたシステムができているような印象を受けます。
しかし実際にはセブの中心地などの経済の発展が目覚ましい一方で、スポットライトが当たらない部分も多く存在していることが分かりました。
セブ島で看護医療英語学校HLCAに留学していると、多様な環境やそこで暮らす人々のことについて考える機会が多くあります。
アンテナを常に張って、色々なセブの面を知っていきたいと思います。
なお、本記事のフィリピンの医療制度に関する記述は2019年成立のユニバーサル・ヘルスケア法(RA11223)など公的情報を踏まえて整理していますが、保険の適用範囲や医療費は変わることがあるため、渡航前には必ず最新の公式情報をご確認ください。
フィリピン・セブ島で医療英語を学びたい方は、医療英語留学とは?一般の語学留学との違いや看護師のセブ島短期語学留学のメリットもあわせて参考にしてみてください。現場で使える医療英語を体系的に学びたい方は、最短で医療英語を身につける学習法も役立ちます。
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