東南アジアの経済の中心地として著しい発展を遂げてきたシンガポール。
観光地としてはもちろん、ビジネスの拠点としても人気です。 そんなシンガポールの看護師はどんな働き方をしているのでしょうか?
日本との違いや、日本人がシンガポールで看護師として働くための手続きなどを徹底解説していきます!
シンガポールで働きたい看護師の方は必見です!
この記事のもくじ
シンガポールの看護師
急速に発展を遂げたシンガポールですが、看護師という職業は元々あまり人気がありませんでした。
多国籍国家ならではの文化の違いに適応する必要があるのも大きな特徴です。
日本の看護師との違いを詳しく見ていきましょう!
【歴史】看護師は不人気な職業だった!
資源が乏しいシンガポールは、戦後の独立以降、積極的に外国人労働者を受け入れてきました。
1990年代から外国人看護師の受け入れを開始しており、2008年から開始した日本と比較すると多くの外国人看護師がシンガポールで活躍してきたことが分かります。
ただし、仕事量のわりに低賃金だったため、看護師の人気は低かったようです。
看護師の仕事が「メイド」のように見えたことや、大学で学位を取得できなかったことも不人気の要因でした。(参考:シンガポールで働く外国人看護師)
現在は給与アップや学位取得が可能になるなど、看護師へのイメージは改善されつつありますが、シンガポールの高齢社会も相まって看護師不足は依然問題となっています。
【資格】看護局への登録が必要!
シンガポールの看護師には国家資格はありませんが、看護局への登録が必要です。
国内で認定された教育機関のいずれかを卒業することで看護局への登録資格が得られます。
シンガポール国内の学校の卒業者は試験なしで登録ができるようですが、更新は毎年しなければなりません。
【看護体制】多様な文化への理解が必須!
多国籍国家のシンガポールは、看護形態も少し特殊です。
言語
シンガポールには様々な民族の方々が住んでいます。
中華系74%,マレー系14%,インド系9%,(2019年1月)
(引用元:外務省)
外務省によると、シンガポールで1番多いのが中華系で、人口の7割以上を占めています。
一言で中華系といっても、全ての人が「標準中国語」を話すわけではありません。
シンガポールで多数を占める華人のほとんどは,中国南部の福建,広東,潮州,海南島から移住してきた移民とその子どもや孫たちである。(中略)これら中国各地の方言と標準中国語は話し言葉では全く異なり相互に通じないため,中国人看護師であっても全くコミュニケーションできない。医療現場では,方言しか話せない高齢者のために身体の様々な部分を描いた「絵ボード」を用意して意思疎通を図ったり,シンガポール人看護師と一緒に看護に当たるなどの工夫をしているという
(引用元:シンガポールで働く外国人看護師 )
同じ中華系の人であっても、方言が強くて意思疎通ができないことも多々あるようです。
このほか、マレー系の人は英語とマレー語を話しますし、インド系の人も英語のほかタミール語などを話します。
フィリピン人などの外国人看護師も多数いるため、シンガポールの看護師は複数の言語に対応する能力が必要です。
患者の食事
シンガポールには様々な国の人が住んでいるため、宗教も多様です。
仏教,イスラム教,キリスト教,道教,ヒンズー教(引用元:外務省)
イスラム教では豚肉を食べることはできませんし、ヒンドゥー教では牛肉が食べれません。
患者の宗教によって食事も分けなければいけないので、日本よりも管理が複雑と言えます。
信仰心の強いインド人、マレーシア人は、牛や豚を食べる人たちと食器を一緒にされるのがとことん嫌なようです。
患者さんが食べ終えたあとの食器は別々に運ばれて行き、別々に洗われます。
そしてまた、別々のカートに別々の食器でご飯が上がってくるんです。
食器の片付けや皿洗いも分けなければいけないとなると、かなり神経を使いますね。
看護業務
シンガポールにも正看護師(=Registered Nurse)と准看護師(=Enrolled Nurse)がおり、患者の直接的なケアはほぼすべて准看護師が行っているそうです。
准看護師がひたすらシャワー介助をしている間、看護師は何をしているのかというと、ほぼずっといすに座っています。(中略)患者さんと直に接するケアは、ほぼすべて准看護師の仕事になっていて、看護師が患者さんと接することはほとんどなし。
准看護師は、シャワー浴、検温、おむつ交換、体位変換、食事介助などを担い、正看護師は医師からの指示や申し送りを受けて各アレンジ・記録を担っているようです。
正看・准看に関わらず患者の介助を行う日本に比べると、シンガポールの正看護師は管理職に近いのかもしれません。
ただし、こうした患者の身の回りの世話も、シンガポールでは患者から言われないと行わないようです。
シンガポールで感じたのは希望は全て呼んで言うべし。(中略)いやほんと…言わないとね…あの看護師さん達バイタルチェックと与薬しかしない!!!(中略)清拭・洗面タオルを貰ったり、洗髪回数、4日間で→0(中略)退院決まってドクターにこの4日間シャワーも洗髪も何も出来なかったからすぐシャワー浴びたい!って言ったら「看護師に言えば良かったのに…」と返されました 全部言わなきゃいけないみたいです。
(引用元:キウイダーリンとはちゃめちゃ海外生活)
日本では看護師の業務を「療養上の世話又は診療の補助を行うこと」と定めており(保健師助産師看護師法)、患者の身の回りの世話は言われなくてもするのが当然です。
シンガポールで看護師になった場合は、日本の業務と大きなギャップを感じるかもしれません。
【給与】日本より低額
低賃金が問題視されていたシンガポールの看護師ですが、現在はどうなのでしょうか?
日本の看護師とシンガポールの看護師の給与を比較してみました。
シンガポールの看護師の月収中央値:4,079シンガポールドル≒309,836円
シンガポール全体の月収中央値:4,437シンガポールドル≒337,030円
シンガポールで公表しているデータは中央値のみだったので、日本の平均値とシンガポールの中央値で比較しました。
これらを単純に比較すると日本の看護師の方がやや高いと言えそうです。
とはいえ、シンガポールの看護師の月収は2001年では2000シンガポールドル以下(シンガポールで働く外国人看護師より)だったそうなので、かなり給与が上がったことが分かります。
日本との違いを比較!
ここまで述べてきたシンガポールと日本の看護師の違いを表にまとめてみました!
シンガポール | 日本 | |
外国人看護師 | 1990年代から受け入れ開始 | 2008年から受け入れ開始 |
資格 | 看護局へ登録 | 国家資格もしくは准看護師免許 |
免許更新 | 1年に1回 | なし |
言語 | 中国語、マレー語、タミール語、英語など様々な言語への対応が必要 | 基本的に日本語のみ |
患者の食事 | イスラム教、ヒンドゥー教など多様な宗教に対応した食事を提供 | 基本的に献立はみな同じ |
看護業務 | ・患者の身の回りの世話は准看護師が行い、正看護師は各管理を行う
・患者の身の回りの世話は患者に言われなければ行わない |
・患者の身の回りの世話は正看護師も准看護師も行う
・患者の身の回りの世話は看護業務として言われなくても行う |
給与 | 約309,836円 | 389,4000円 |
シンガポールの正看護師は患者のケアをあまりしない傾向にあり、日本の看護師とは業務に大きな差がありそうです。
国籍や宗教が多様なので、患者それぞれのバックグラウンドへ柔軟に対応できる人が重宝されるでしょう。
シンガポールで看護師になるには?
積極的に外国人看護師を受け入れてきたシンガポールなので、日本人も看護師になることが可能です。
どのような手順を踏めばシンガポールで看護師になれるのか、具体的に解説していきます!
①シンガポールの看護学校を卒業する
シンガポール国内で看護資格を取得するには、以下の学校を卒業する必要があります。
正看護師になれる学校は以下の4つです。
学校 | 得られる学位 |
National University of Singapore | Bachelor of Science (Nursing) |
Nanyang Polytechnic | Diploma in Nursing |
Ngee Ann Polytechnic | Diploma in Health Sciences (Nursing) |
Parkway College of Nursing and Allied Health | Diploma in Nursing |
日本で4年大を卒業した際に得られる「学位」はBachelorといい、シンガポールではNational University of Singaporeでのみ修得できます。
准看護師の教育が受けられるのはITE College Eastのみで、技術訓練の修了者に与えられるNITECが修得可能です。
学校を卒業したのち、看護局へ申し込みをすれば登録が完了します。
②日本/海外の看護師資格を使う
シンガポール以外の国で看護師資格を取得している場合、その資格を使って看護師登録が可能です。
ただし、それには以下の条件を満たさなければなりません。
- 受けた看護教育がシンガポールの看護教育と同等であると看護局に認定されること
- 看護教育を受けた国で看護師登録がされていること
- 現在有効な看護師免許を所有していること
- 5年以内に本国で臨床経験をしていること
専門学校などを卒業して学士号を持っていない場合や、臨床経験が5年以上前の場合は、シンガポールで追加の教育を受けることがあります。
上記の条件を満たす人は、働きたい病院からの推薦を受けて看護局の登録に進むことができます。
申込みには以下の書類が必要です。
- パスポートもしくはNRIC(国民カード)
- 婚姻証明
- 看護教育の受けた機関の成績証明書
- 卒業証明書
- 登録証明書
- 過去に勤務した職場からの推薦状
書類の提出のほか、資格試験(Licensure Examination)に合格することで晴れて看護局への登録が可能となります。
Licensure Examinationとは
Licinse Examinationとは、外国人看護師がシンガポールの看護局へ登録するための試験です。
正看護師の試験はNanyang Polytechnic学校で行われ、准看護師の試験はCurtin Singapore学校で行われます。
参考書や携帯、カメラ、バッグは試験会場への持ち込みが禁止されており、厳しく管理されているようです。
試験日程や持ち物などをしっかり確認して試験に臨みましょう。
まとめ:シンガポールでも看護師になれる!多国籍文化を理解しよう
シンガポールでは戦後に独立してから外国人労働者の受け入れに力を入れており、看護師としても多くの外国人が働いています。
日本人でも、シンガポール特有の多様な文化へ柔軟に対応できれば、シンガポールで看護師になることが可能です。
ぜひ英語などの外国語を習得し、シンガポールで働いてみてはいかがでしょうか?
HLCAでは海外で働きたい看護師を応援すべく、医療英語留学や、実際に海外の医療現場を体験できる場を提供しています。
「海外で看護師として働きたいけど医療英語を話せる自信がない」
「海外の医療現場にいきなり飛び込んでいくのは不安」
そんな方はぜひお気軽にお問い合わせください!