
「日本の看護師免許を持っているけど、海外で看護師として働けるの?」——そう思いながらも、免許書き換えの複雑さや英語力の壁を前に踏み出せずにいる方は多いのではないでしょうか。
実は、日本の看護師免許を活かして海外で就労できる国はいくつか存在します。ただし、どの国でも「免許の書き換えや認定手続き」と「一定以上の英語力の証明」がセットで求められます。この記事では、海外就労を目指す看護師が知っておくべき国別の書き換え制度と、英語力の現実をわかりやすく解説します。
監修:海仲由美(HLCA代表・看護師)
看護師として臨床経験を積んだ後、医療英語専門スクールHLCAを設立。海外での医療業務経験も持つ。

この記事のもくじ
日本の看護師免許で海外就労できる仕組み
日本で取得した看護師免許は、そのままでは海外では通用しません。海外で看護師として就労するには、大きく分けて2つのルートがあります。
①免許の書き換え(相互認定・追加試験)
日本の看護師免許を提示し、現地の審査機関に書き換え申請を行うルートです。書類審査だけで認定される場合と、現地の追加試験が必要な場合があります。書き換えが完了すると、現地免許として就労できます。
②職種・ビザ別の就労許可(直接認定)
一部の国や雇用形態(日系クリニック・研修プログラムなど)では、現地免許の取得なしに就労許可が下りるケースもあります。ただしこのルートは業務範囲や在留資格が限定されることがほとんどです。
どちらのルートでも共通して求められるのが、英語力の公式証明です。医療現場で使う英語は日常会話とは異なり、「医療英語」として専門的なコミュニケーション能力が問われます。

日本の看護師免許で働ける国5選

以下では、日本人看護師が比較的アクセスしやすい国を5つ取り上げ、登録・認定機関・必要な英語試験を解説します。
①オーストラリア(AHPRA登録)
オーストラリアは日本人看護師の海外就労先として人気が高く、看護師の需要も旺盛です。登録機関はAHPRA(Australian Health Practitioner Regulation Agency)で、日本の看護師免許を提示して審査を受けます。
- 主な要件:日本の看護師免許、学歴証明、実務経験証明
- 英語試験:OETのB評価以上(全4技能)、またはIELTS Academic 7.0以上(全技能)
- 特徴:書き換えが比較的整備されており、医療英語のスコアが明確に求められる
OETはOccupational English Test(職業英語試験)と呼ばれ、医療従事者専用の英語試験です。AHPRAではOETが特に推奨されており、看護師が受験する場合は「Nursing」科目で受験します。詳細はOET対策の勉強法もあわせてご覧ください。
②カナダ(州ごとに異なる登録機関)
カナダは州ごとに看護師の登録機関が異なります。代表的な州はブリティッシュコロンビア州(BCCNM)やオンタリオ州(CNO)で、それぞれ独自の書き換え手続きがあります。
- 主な要件:日本の看護師免許、学歴・カリキュラム証明、NCLEXの受験・合格が必要な州も
- 英語試験:IELTS Academic 7.0以上(全技能)またはCELP(カナダ医療英語試験)
- 特徴:州によって要件が大きく異なるため、移住先の州の登録機関に個別確認が必要
③ニュージーランド(NCNZ登録)
ニュージーランドの看護師登録はNCNZ(Nursing Council of New Zealand)が管轄します。日本の看護師免許での書き換えが可能で、審査後に追加研修や試験が課されることがあります。
- 主な要件:日本の看護師免許、実務経験、場合によりコンピテンシー審査
- 英語試験:IELTSまたはOET(各7.0/B以上)
- 特徴:移民として働く看護師の需要が高く、永住権へのルートにもなりやすい
④シンガポール(SNB登録)
シンガポールはアジアの医療ハブとして知られ、英語が公用語のひとつです。シンガポール看護委員会(SNB: Singapore Nursing Board)への登録が必要です。
- 主な要件:日本の看護師免許、学歴証明、シンガポール国内での追加研修・試験が課される場合あり
- 英語試験:IELTS 7.0以上(特定の試験の免除規定あり)
- 特徴:日常業務はほぼ英語で行われるため、医療英語の実践力が直接仕事に影響する
⑤フィリピン(日系クリニック・研修目的)
フィリピンは現地看護師免許の取得難易度が高く、日本人が正規ルートで現地看護師として就労するハードルは高いです。ただし、日系クリニックへの就職や語学留学・研修目的での滞在は選択肢に入ります。
- 主な用途:医療英語の現地研修、日系医療機関でのボランティア・研修
- 英語試験:必須要件は施設によって異なる
- 特徴:英語環境に慣れるためのステップとして活用する看護師が多い

各国に必要な英語試験・要件まとめ
| 国 | 登録機関 | 主な英語試験 | 最低スコア目安 |
|---|---|---|---|
| オーストラリア | AHPRA | OET(推奨)/ IELTS | OET B以上 / IELTS 7.0以上 |
| カナダ | 州ごとに異なる | IELTS / CELP | IELTS 7.0以上(全技能) |
| ニュージーランド | NCNZ | IELTS / OET | IELTS 7.0以上 / OET B以上 |
| シンガポール | SNB | IELTS | IELTS 7.0以上 |
| フィリピン | 施設による | 施設による | 施設による |
免許書き換えの共通ステップ

国によって細かい手続きは異なりますが、日本の看護師免許を海外で認定・書き換えする際に共通して必要なステップは以下の通りです。
- 渡航先の登録機関を調べる:国・州によって異なるため、公式サイトで最新情報を確認する
- 日本の看護師免許の公証・翻訳を取得:公証役場での認証(アポスティーユ)と英訳が必要な場合が多い
- 学歴・カリキュラムの証明書類を準備:卒業証明書・成績証明書(英語)を看護学校・大学から取得
- 英語試験のスコアを取得:OETまたはIELTS(Academic)で規定スコアをクリアする
- 登録申請を提出・審査を待つ:書類審査後、追加試験・研修を求められる場合もある
- 登録完了・就労許可取得:ビザ・就労許可も並行して申請が必要
書類準備から登録完了まで、数ヶ月〜1年以上かかることも珍しくありません。早めの準備がカギです。また、国際看護師として働く方法については別記事でも詳しく解説しています。

最大のハードル:英語力——一般英語では通用しない理由

多くの看護師が免許書き換えで最大のハードルと感じるのが、英語試験のスコア取得です。IELTS 7.0やOET Bは、TOEICで言うと900点前後に相当する高水準です。しかも、医療の現場で求められる英語は「医療英語」という専門分野であり、日常英会話やビジネス英語とは別物です。
OET・IELTSで何が問われるか
OET(医療従事者専用英語試験)は、医療現場のシナリオに特化したリスニング・リーディング・ライティング・スピーキングで構成されています。たとえばスピーキングでは、看護師として患者に服薬指導を行うロールプレイが出題されます。患者の不安への共感・正確な医療情報の伝達・確認質問——これらは医療英語の訓練なしには身につかないスキルです。
IELTSは一般的な学術英語試験ですが、看護師が受験する場合でも、メディカルな語彙や患者対応の文脈が頻出します。スコア7.0を安定して取るには、医療分野に特化した語彙力と読解力が必要です。
なぜ一般英語の勉強では不十分なのか
- 語彙が専門的:一般英語教材に「tachycardia(頻脈)」「anticoagulant(抗凝固薬)」などの医療用語はほぼ出てこない
- コミュニケーション様式が違う:患者中心のコミュニケーション(informed consent・teach-back等)は医療特有のスキル
- 試験形式が職種依存:OETは職種別(Nursing・Medicine等)でシナリオが異なり、看護師として訓練する必要がある
海外就労を目指す看護師にとって、医療英語フレーズを体系的に学ぶことは試験対策であると同時に、現地で即戦力になるための準備でもあります。
アメリカを目指す場合は
アメリカの看護師登録(NCLEX-RN)については要件が複雑で、免許書き換えとは別の審査ルートがあります。詳しくはアメリカで看護師として働く方法をご覧ください。

よくある質問(FAQ)
Q: 日本の看護師免許だけで海外で働けますか?
A: 日本の看護師免許だけではそのまま海外で就労はできません。どの国でも免許の書き換えまたは現地試験の合格と、英語力の証明(IELTS/OET等)がセットで必要です。
Q: 免許書き換えにどのくらいの費用がかかりますか?
A: 国によりますが、書類審査・試験受験・ビザ申請等を含めると50〜150万円程度が目安です。オーストラリアやカナダは比較的費用が高く、中東諸国は雇用主負担の場合もあります。
Q: 何歳まで海外で看護師として働けますか?
A: 年齢制限は国やビザの種類によって異なりますが、30代後半〜40代でも海外就労を実現している看護師は多くいます。臨床経験が豊富なほど評価される場合もあるため、年齢よりも英語力と専門性が重要です。
まとめ:免許書き換えの先にある「医療英語力」が鍵
日本の看護師免許で海外就労を目指す場合、大きく3つのことが求められます。
- ①書き換え手続きの準備:公証・翻訳書類、学歴証明など
- ②英語試験のスコア取得:OETまたはIELTS Academicで各国規定スコアをクリア
- ③現場で使える医療英語力:試験合格だけでなく、実際の医療コミュニケーションに対応できる力
多くの看護師が「英語試験に合格できるか」を不安に思いますが、最大のポイントは「一般英語ではなく医療英語に特化して学ぶこと」です。医療英語を専門的に学ぶことで、試験対策と現場力を同時に高めることができます。
HLCAでは、海外就労を目指す看護師のために医療英語の個別指導・OET対策を提供しています。「どこから始めればいいかわからない」という方も、無料カウンセリングで現状とゴールを整理するところから始めましょう。
監修:海仲 由美(Yumi Uminaka)
HLCA代表/医療英語教育者・カリキュラム開発責任者
医師・看護師・薬剤師など医療従事者向け医療英語教育を専門とし、これまでに延べ3,000名以上の医療従事者への指導・研修を実施。
医療現場で実際に使われる英語表現・患者対応・多職種連携に特化したカリキュラム設計を強みとし、病院・クリニック向け教育プログラムや医療英語教材の開発・監修を多数手がける。
本メディアでは、現場視点と教育専門性の両面から、実践的かつ正確な医療英語情報の監修を行っている。




