
「医療通訳士になりたい」「英語と医療の知識を仕事に活かしたい」——そんな思いを持ちながら、何から始めればよいかわからずにいる方は多くいます。
日本では訪日外国人・在住外国人が年々増加し、病院での医療通訳ニーズは急速に高まっています。しかし医療通訳士になる道筋は情報が少なく、「資格は必要か」「英語はどのレベルが必要か」「収入はどのくらいか」といった疑問に答えてくれる情報源が整っていません。
この記事では、医療通訳士を目指す方に向けて、仕事内容・資格取得の4ステップ・試験の概要・必要な英語力・収入と働き方・看護師ならではのメリットまでを体系的に解説します。
監修:海仲由美(HLCA代表・看護師)
看護師として臨床経験を積んだ後、医療英語専門スクールHLCAを設立。海外での医療業務経験も持つ。
この記事の概要
- 医療通訳士の仕事内容・活動場所・需要の現状
- 医療通訳士になるための4ステップ(資格取得→登録→現場→キャリアアップ)
- 医療通訳士認定試験の試験内容・難易度・合格率
- 必要な英語力(TOEIC目安・OETとの関係・医療英語の重要性)
- 収入・働き方(時給相場・在宅・フリーランス)
- 看護師が医療通訳士を目指す3つのメリット

この記事のもくじ
医療通訳士とはどんな仕事か


医療通訳士とは、日本語を話せない外国人患者と日本人医療スタッフの間に立ち、医療的なコミュニケーションを橋渡しする専門職です。単なる言葉の変換にとどまらず、文化的背景・医療用語の理解・患者の心理的サポートまで含む高度な役割を担います。
主な仕事内容
- 外来診察・入院説明での通訳
- 手術・処置前のインフォームドコンセント(同意説明)の通訳
- 服薬指導・退院説明の通訳
- 救急・救命場面での緊急通訳
- オンライン・電話通訳(遠隔医療通訳)
主な活動場所
- 総合病院・大学病院(外来・入院病棟)
- クリニック・診療所
- 保健センター・市区町村の窓口
- 在宅医療・訪問看護の現場
- 医療通訳サービス会社(オンライン勤務可)
需要の現状
厚生労働省の統計では、2023年時点で日本在住の外国人は約340万人を超え、訪日外国人も年間数千万人規模に達しています。しかし医療現場での通訳体制は追いついておらず、医療通訳士の不足は深刻な課題です。政府も「医療通訳の整備」を医療政策に明記しており、今後のニーズ拡大は確実です。
医療通訳士になるための4ステップ

「医療通訳になるには、何から始めればよいか」——まず全体の流れを把握することが重要です。一般的なルートを4ステップで整理します。
Step 1:医療通訳士認定資格を取得する
日本では医療通訳士を名乗るための国家資格は現時点で存在しませんが、業界標準として認知されている民間認定資格があります。代表的なのが一般社団法人日本医療通訳協会(JAMI)が主催する医療通訳士認定試験です。この資格を持つことで、病院や医療通訳派遣会社への登録が格段に有利になります。詳細は医療通訳の資格まとめもあわせてご覧ください。
Step 2:医療通訳サービス会社・病院に登録する
資格取得後は、医療通訳の派遣・登録サービスや病院の通訳者登録リストに登録します。フリーランスとして複数の会社に登録するケースが多く、稼働件数に応じて収入が変わります。
Step 3:現場で実績を積む
最初は付き添い通訳や電話通訳など比較的難易度の低い案件からスタートし、徐々に外来・入院・手術同意など専門性の高い現場へ移行します。現場経験がそのまま専門スキルと評判につながります。
Step 4:専門科・言語を広げてキャリアアップ
内科・外科・産婦人科・精神科など専門科ごとの通訳スキルを磨いたり、対応言語を増やしたりすることで、単価アップ・安定稼働へとつながります。医療英語の深化がここで大きな差別化要因になります。
医療通訳士認定試験の概要

日本医療通訳協会(JAMI)が主催する医療通訳士認定試験は、現時点で医療通訳分野で最も権威ある民間資格試験です。
試験の概要
- 主催:一般社団法人日本医療通訳協会(JAMI)
- 試験形式:筆記試験(知識)+実技試験(通訳実演)
- 対応言語:英語・中国語・韓国語・スペイン語・ポルトガル語など複数言語
- 試験内容:医療用語・医療制度・倫理規範・通訳技術(逐次通訳・要約通訳)
- 受験資格:特定の学歴・資格要件なし(実質的には相応の語学力が前提)
難易度・合格率
医療通訳士認定試験は「語学力」と「医療知識」の両方が問われるため、一般的な通訳試験より難易度は高めです。特に実技試験では、医療現場特有の緊張感のある場面での通訳が求められます。合格率は非公開ですが、指導者やスクールの情報では初回受験の合格率は高くないとされており、計画的な準備が不可欠です。
試験対策のポイント
- 医療用語(英語・日本語)の体系的な習得
- ロールプレイ形式の通訳練習
- 医療倫理・守秘義務・患者権利の理解
- 日本の医療制度・診療報酬の基礎知識
必要な英語力——TOEIC・OET・医療英語の重要性

医療通訳士(英語)を目指す場合、どのくらいの英語力が必要なのでしょうか。
TOEIC目安
派遣会社や病院の登録要件として、TOEIC 800〜900点以上を求めるケースが多く見られます。ただしTOEICは「ビジネス英語」の試験であり、医療通訳に直結するスキルを測る試験ではありません。スコアはあくまで入口の目安であり、現場では別のスキルが求められます。
医療英語力の重要性
医療通訳で最も重要なのは医療特有の英語表現・用語・コミュニケーションスタイルの習得です。たとえば:
- 「informed consent(インフォームドコンセント)」の場面での患者への説明英語
- 症状・検査・薬剤名などの専門用語の正確な運用
- 患者の不安・感情に寄り添いながら通訳する共感的コミュニケーション
これらは一般英語の勉強では習得できません。医療英語を専門的に学ぶことが、医療通訳士としての競争力の核心です。
OETとの関係
医療従事者向け英語試験OET(Occupational English Test)は、医療現場のロールプレイを通じて英語コミュニケーション能力を評価する試験です。OETで高いスコアを持つことは、医療通訳士としての英語力の証明として非常に有効です。OET試験の勉強法と対策もあわせて確認してみてください。
収入・働き方


時給・報酬の相場
| 働き方 | 報酬目安 |
|---|---|
| 病院常勤・雇用 | 月給20〜30万円程度 |
| 派遣・登録制(対面) | 時給2,000〜4,000円程度 |
| 電話・オンライン通訳 | 1分30〜60円(1時間換算1,800〜3,600円) |
| フリーランス(専門科特化) | 1件5,000〜15,000円以上も |
報酬は言語・専門科・実績・地域によって大きく異なります。英語は需要が最も高い言語ですが、競合も多いため、医療英語の専門性が単価差別化の鍵です。
在宅・フリーランスは可能か
電話・オンライン通訳サービスを活用すれば、在宅でのフリーランス医療通訳も十分可能です。子育て中の看護師や、地方在住の医療従事者にとっても参入しやすい働き方です。看護師の在宅ワーク全般については看護師の在宅ワークと医療英語もご覧ください。
看護師が医療通訳士を目指す3つのメリット
医療通訳士を目指す人の中でも、看護師や医療従事者は特に有利な立場にあります。
メリット1:医療知識がそのまま強みになる
医療通訳で最も難しいのは「医療内容を正確に理解したうえで通訳する」ことです。看護師はすでに診断・治療・処置・薬剤に関する知識を持っているため、一般の通訳者が何年もかけて習得する医療知識のアドバンテージが最初からあります。
メリット2:患者コミュニケーション経験が活きる
看護師は患者の不安に寄り添い、わかりやすく説明する経験を日常的に積んでいます。この共感的コミュニケーション力は医療通訳の質に直結します。「英語で何を言うか」だけでなく「どう伝えるか」のスキルが最初から備わっているのです。
メリット3:副業・転職・海外キャリアへの展開
医療通訳士の資格と英語力を組み合わせることで、看護師としての本業を持ちながら副業として医療通訳を行うことも、国際的なフィールドで働くことも可能になります。英語力が伸びるほど選択肢が広がるのが医療通訳のキャリアの魅力です。
よくある質問(FAQ)
Q:医療通訳士になるには大学の語学学部を出ている必要がありますか?
A:いいえ、必須ではありません。医療通訳士認定試験の受験資格に学歴要件はなく、医療現場でも「英語力」と「医療知識」が評価基準の中心です。看護師・医師・薬剤師などの医療資格保持者が英語力を高めて参入するケースも多くあります。
Q:英語力がTOEIC700点台でも医療通訳士を目指せますか?
A:700点台は「スタート地点」として十分です。医療通訳士の登録要件を満たすTOEIC 800〜900点台は、正しい学習方法で半年〜1年程度で到達できます。ただし医療英語に特化した学習が重要で、一般的な英語学習だけでは現場で通用する力は付きません。まずは医療英語学習の方向性を専門家に相談することをおすすめします。
Q:フルタイムで働きながら医療通訳士の勉強はできますか?
A:可能です。オンライン学習・電話通訳からのスタート・副業としての段階的参入など、現職を続けながらキャリアを作る方法があります。HLCAでは働きながら医療英語を学ぶ医療従事者を多数サポートしており、個別のカウンセリングで最適なプランを提案しています。
まとめ
医療通訳士になるには、英語力・医療知識・通訳技術という3つの柱が必要です。国家資格こそないものの、JAMI認定試験を軸にした資格取得→登録→実績という明確なルートが確立されています。
特に看護師をはじめとする医療従事者は、医療知識という最大のアドバンテージをすでに持っています。あとは医療英語の専門的なトレーニングを加えることで、医療通訳士としての競争力が一気に高まります。
HLCAでは医療英語に特化したカリキュラムで、医療通訳を目指す医療従事者を多数サポートしてきました。「自分の英語レベルから医療通訳士を目指せるか」「どんな学習プランが最適か」——まずは無料カウンセリングでお気軽にご相談ください。
監修:海仲 由美(Yumi Uminaka)
HLCA代表/医療英語教育者・カリキュラム開発責任者
医師・看護師・薬剤師など医療従事者向け医療英語教育を専門とし、これまでに延べ3,000名以上の医療従事者への指導・研修を実施。
医療現場で実際に使われる英語表現・患者対応・多職種連携に特化したカリキュラム設計を強みとし、病院・クリニック向け教育プログラムや医療英語教材の開発・監修を多数手がける。
本メディアでは、現場視点と教育専門性の両面から、実践的かつ正確な医療英語情報の監修を行っている。




