「国際看護師になりたいけど、何から始めればいいかわからない」——そう感じている看護師の方は多いはずです。海外で働くためには語学力だけでなく、現地の資格取得・ビザ・就職活動など、クリアすべきステップが複数存在します。何から着手すればよいかが見えないまま時間が経ってしまうケースも少なくありません。
この記事では、国際看護師の定義から具体的なロードマップ、必要な英語力、活躍できる国と収入の現実まで、一気通貫で解説します。まず全体像を把握することで、「自分が今どこにいて、何をすべきか」が明確になるはずです。
監修:海仲由美(HLCA代表・看護師)
看護師として臨床経験を積んだ後、医療英語専門スクールHLCAを設立。海外での医療業務経験も持つ。
この記事でわかること
- 国際看護師の定義と活躍の場
- 国際看護師になるための5ステップ(ロードマップ)
- 目標国別に必要な英語スコア(OET・IELTS・TOEFL)
- 活躍できる国・職場と収入の実態
- よくある疑問(FAQ)
この記事のもくじ
国際看護師とはどんな存在か
「国際看護師」とは、日本国外で看護業務に従事する看護師の総称です。法律上の正式な資格名ではなく、海外の病院・クリニック・NGO・国際機関などで働く看護師を指す通称として使われています。
活躍の場
- 海外の一般病院・クリニック(移民・日系コミュニティ向けを含む)
- 日系企業の医務室・産業看護
- 国際NGO・医療支援団体(例:国境なき医師団)
- 国連・WHOなどの国際機関
- クルーズ船・航空会社の医療スタッフ
- 国際医療施設・リゾート地の病院
日本の看護師との主な違い
| 項目 | 日本の看護師 | 国際看護師(例:英語圏) |
|---|---|---|
| 使用言語 | 日本語 | 英語(現地言語) |
| 必要な免許 | 日本の看護師国家資格 | 日本の資格+現地免許登録 |
| 英語試験 | 原則不要 | OET・IELTSなど必要 |
| 給与水準 | 平均500万円前後 | 国による(後述) |
詳しくは国際看護師の仕事内容・なり方ガイドもあわせてご覧ください。

国際看護師になるための5ステップ
国際看護師へのロードマップは、大きく5つのステップに分けられます。ゴールとする国によって手順の詳細は異なりますが、基本的な流れは共通です。
STEP 1:日本の看護師免許取得・臨床経験を積む
国際看護師への第一歩は、日本国内で看護師として着実にキャリアを積むことです。海外の登録機関が要求する臨床経験年数は国によって異なりますが、最低1〜2年、理想的には3年以上の経験が求められるケースが多数です。
特に急性期病棟・ICU・手術室などの経験は、海外での採用において評価されやすい傾向があります。日本での臨床経験は国際競争力の基盤になるため、まずは専門性の高い環境で経験を積むことを意識しましょう。
STEP 2:英語力を高める(OET・IELTSなど)
英語圏の看護師登録には、公認の英語試験でのスコア提出が必須です。試験の種類と必要スコアは目標国・登録機関によって異なります。このステップは多くの人にとって最大のハードルであり、かつ最も時間がかかる部分です。詳細は後述の「国際看護師に必要な英語力」をご覧ください。
STEP 3:目標国の登録要件を調べる
英語力と並行して、目標国の看護師登録機関(Nursing Board)の要件を調べます。確認すべき主な項目は以下の通りです。
- 必要な臨床経験年数
- 日本の看護師養成課程の認定可否
- 追加で必要な履修科目(コンピテンシー)
- 英語試験の種類とスコア基準
- 申請書類と手数料
国によっては、日本の看護師教育課程が不足単位として認定されない場合もあります。事前に個別確認することが必須です。海外免許の書き換え手続きの詳細は海外看護師免許の書き換えガイドもあわせてご覧ください。
STEP 4:現地の看護師免許を取得する
要件を満たしたら、目標国の看護師登録機関へ申請します。審査・承認後、現地の看護師として正式に登録されます。国によっては追加の試験(例:NCLEX-RN)が必要な場合もあります。アメリカの場合の詳細はアメリカ看護師になる方法をご参照ください。
STEP 5:就職活動・ビザ取得
現地免許が取得できたら、就職活動とビザ申請を進めます。就職のルートは大きく2つです。
- リクルートエージェント経由:海外看護師求人を専門に扱うエージェントを利用する。書類審査・面接対策のサポートが受けられる。
- 直接応募:LinkedIn・Indeed・目標国の病院採用ページから直接応募する。英文レジュメ・カバーレターの準備が必要。
就労ビザは雇用主が手続きを代行するケースが多いですが、国によっては自己申請が必要な場合もあります。

国際看護師に必要な英語力(OET・IELTS・TOEFLの要件)
英語力の証明は、国際看護師になるプロセスで最も時間とエネルギーを要するステップのひとつです。試験の選択を誤ると、スコアを取っても登録機関に認められないケースがあります。目標国ごとに求められる試験と基準を正確に把握することが重要です。
主な英語試験と国際看護師への適用
| 試験 | 特徴 | 主な対応国 | 目安スコア |
|---|---|---|---|
| OET | 医療職専用。ロールプレイ中心で実務直結 | 英国・豪州・NZ・UAE等 | B以上(各セクション) |
| IELTS | 汎用性高い。4技能を均等に評価 | 英国・豪州・カナダ・NZ | 各7.0以上(Academic) |
| TOEFL iBT | 北米で広く使用。大学・資格審査向け | 米国(州による) | 合計83〜100点以上(州によって異なる) |
なぜ「医療英語」の専門対策が必要か
OETやIELTSは一般的な英語学習では対策が難しい試験です。特にOETは、患者への病状説明・服薬指導・退院指導など、医療現場特有のコミュニケーションが採点対象になります。医療英語を専門的に学ぶことで、試験対策と現場実践の両方が同時に身につきます。
OETの具体的な勉強法はOET試験の勉強法とおすすめ参考書をご覧ください。HLCAでは医療従事者専門の講師によるOET・IELTS対策を提供しており、無料カウンセリングでは現在のレベルや目標に合わせた学習プランをご提案しています。

国際看護師が活躍できる国・場所
日本の看護師が海外で働きやすい国として、特に以下が挙げられます。
英語圏(主要4カ国)
- オーストラリア:AHPRA(Australian Health Practitioner Regulation Agency)が管轄。OETまたはIELTS(各7.0)が必要。永住権取得への道が開けており、看護師は不足職種として優遇される傾向がある。
- イギリス:NMC(Nursing and Midwifery Council)登録が必要。OETまたはIELTS(各7.0)が条件。NHS(国民保健サービス)のほかプライベートクリニックでの勤務も選択肢。
- カナダ:州によって登録機関が異なる。OET・IELTS・TELUSに対応。英語力の他、州ごとのコンピテンシー審査がある。
- アメリカ:NCLEX-RN合格が必須。CGFNS認証や州ボードへの申請が必要で手続きが最も複雑。詳細はアメリカ看護師になる方法をご参照ください。
非英語圏・その他
- UAE・中東諸国:英語が医療現場の共通語。OETスコアで登録可能な国もある。給与水準が高く、税優遇あり。
- シンガポール:英語公用語。SNB(Singapore Nursing Board)への登録が必要。アジアの中では最も手続きが整備されている。
- 国際NGO・国際機関:勤務国を固定しない働き方も。英語力と専門臨床スキルが重視される。
収入・待遇の現実(期待値と実態)
国際看護師の収入は国・雇用形態・経験年数によって大きく異なります。以下は目安です。
| 国 | 年収目安(現地通貨換算・日本円) | 主な特徴 |
|---|---|---|
| オーストラリア | 約550〜750万円 | 最低賃金が高水準。公立病院ペンションあり |
| イギリス | 約430〜600万円 | NHS勤務は安定。物価上昇でコスト増に注意 |
| UAE(ドバイ等) | 約550〜800万円 | 非課税。ただし生活費・保険は自己負担 |
| アメリカ | 約600〜1,000万円以上 | 州・雇用形態・専門科で大きく差あり。手続きが複雑 |
現実に直面しやすいポイント
- 生活費の高騰:英語圏主要都市の家賃・物価は日本を大きく上回る。手取り収入が増えても生活水準が下がるケースも。
- 免許取得コスト:申請料・英語試験受験料・書類翻訳費用など、渡航前に数十万円のコストが発生することが多い。
- 英語力の壁:スコアを取得しても、実際の医療現場での英語コミュニケーションに戸惑う人は少なくない。日常会話ではなく医療英語の専門対策が必須。
- 文化・制度の違い:看護師の業務範囲・チーム構成・患者との関わり方が日本とは大きく異なる場合がある。
よくある質問(FAQ)
Q:英語が全くできない状態から国際看護師になるには何年かかりますか?
A:目標国・学習ペース・臨床経験によりますが、一般的には英語学習開始から現地就職まで3〜5年を目安にする人が多いです。臨床経験と英語学習を並行して進めることが最も効率的です。まず自分の現在地を把握するために、HLCAの無料カウンセリングを活用することをお勧めします。
Q:OETとIELTSはどちらを選べばよいですか?
A:目標国の登録機関が両方を認めているなら、医療職にはOETが有利なケースが多いです。OETは看護師・医師・薬剤師など医療職専用の試験で、試験内容が実務直結のため、医療英語の学習と対策が同時に進められます。IELTSは汎用性が高い反面、医療特有のコミュニケーションは問われません。詳細はOET対策ガイドをご覧ください。
Q:日本の看護師免許だけで海外で働けますか?
A:原則として、日本の看護師免許のみでは海外での看護業務はできません。目標国の看護師登録機関への申請・承認が必要です。ただし、NGO活動や短期ボランティアなど、登録を必要としない形態で海外医療に関わる方法もあります。免許書き換えの流れについては海外看護師免許の書き換えガイドで詳しく解説しています。
まとめ
国際看護師になるには、日本での臨床経験・英語力・現地免許登録・就職活動という複数のステップを計画的に進める必要があります。
- STEP 1:日本の看護師免許取得・臨床経験(最低1〜3年)
- STEP 2:英語力を高める(OET・IELTSなど)
- STEP 3:目標国の登録要件を調べる
- STEP 4:現地の看護師免許を取得する
- STEP 5:就職活動・ビザ取得
このプロセスで多くの人が最初につまずくのが英語力です。特にOETやIELTSは、一般的な英語学習とは異なる「医療英語」の専門対策が不可欠です。いつ始めるかより、何を学ぶかを間違えないことが最短ルートへの鍵です。
HLCAでは、医療従事者専門の講師が英語力の現状診断から学習プランの設計まで、無料でサポートしています。「海外で働きたいけど英語に自信がない」という方こそ、まずご相談ください。
監修:海仲 由美(Yumi Uminaka)
HLCA代表/医療英語教育者・カリキュラム開発責任者
医師・看護師・薬剤師など医療従事者向け医療英語教育を専門とし、これまでに延べ3,000名以上の医療従事者への指導・研修を実施。
医療現場で実際に使われる英語表現・患者対応・多職種連携に特化したカリキュラム設計を強みとし、病院・クリニック向け教育プログラムや医療英語教材の開発・監修を多数手がける。
本メディアでは、現場視点と教育専門性の両面から、実践的かつ正確な医療英語情報の監修を行っている。




