オーストラリアで医師として働きたいと考えたとき、最初に立ちはだかるのがAMC試験です。日本の医師免許はオーストラリアではそのまま使えないため、Australian Medical Council(AMC)が実施する試験に合格し、AMC Certificateを取得する必要があります。
この記事では、AMC試験の全体像から、MCQ試験(Step 1)と臨床試験(Step 2)それぞれの具体的な内容、受験料、合格基準、そしてAMC Certificate取得までのロードマップを詳しく解説します。「何から始めればいいのか」が明確になる内容です。
この記事でわかること
- AMC試験の概要とStandard Pathwayの仕組み
- MCQ試験(Step 1)の形式・合格基準・受験料
- 臨床試験(Step 2)のOSCE形式・合格基準・受験料
- 受験に必要な資格と書類
- AMC Certificate取得までの具体的なステップ
この記事のもくじ
AMC試験とは
AMC試験は、Australian Medical Council(オーストラリア医療評議会)が実施する、国際医学卒業生(International Medical Graduates: IMGs)向けの医師資格認定試験です。オーストラリア国外の医学部を卒業した医師がオーストラリアで臨床医として働くためには、この試験を通じてAMC Certificateを取得することが求められます。
AMCには複数の認定ルートがありますが、最も一般的なのがStandard Pathwayです。Standard Pathwayは以下の2段階で構成されています。
- Step 1: MCQ試験(Multiple Choice Questions)— 医学知識の筆記試験
- Step 2: 臨床試験(Clinical Examination)— OSCE形式の実技試験
両方に合格することで、AMC Certificateが発行されます。このCertificateは、Medical Board of Australiaへの医師登録申請に必要な要件の一つです。
AMC MCQ試験(Step 1)の内容
MCQ試験はAMC認定の第一関門です。医学全般にわたる知識をコンピュータベースで問われます。
試験形式
- 形式: Computer Adaptive Test(CAT)
- 問題数: 150問
- 試験時間: 3.5時間(210分)
- 出題範囲: 内科、外科、産婦人科、小児科、精神科、公衆衛生など医学全分野
Computer Adaptive Testとは、受験者の回答状況に応じて次の問題の難易度が変動する形式です。正解が続けばより難しい問題が出題され、逆に不正解が続けば難易度が下がります。これにより、受験者の実力を効率的に測定します。
合格基準
パスマーク(合格点)は250/500です。なお、2026年から合格基準が若干引き上げられたため、より確実な準備が求められます。
受験料
2,920 AUD(2026年3月時点)
受験料は毎年改定される可能性があるため、最新情報はAMC公式サイトで確認してください。
試験準備
AMCは公式の無料準備アプリを提供しており、210問の練習問題に取り組むことができます。実際の出題形式に慣れるために、まずはこのアプリから始めることをおすすめします。
ただし、問題文は全て英語です。日本語で医学知識を持っていても、英語の医学用語や表現に慣れていなければ正しく解答できません。医療英語力の強化はMCQ対策の基盤となります。
AMC臨床試験(Step 2)の内容
MCQ試験に合格すると、次は臨床試験(Clinical Examination)です。こちらはOSCE(Objective Structured Clinical Examination)形式で実施されます。
試験形式
- 形式: OSCE(客観的臨床能力試験)
- ステーション数: 16ステーション + 4休憩ステーション
- 各ステーション: 10分
- 内容: 病歴聴取、身体診察、患者への説明・教育、手技(縫合・カニュレーション等)
各ステーションでは模擬患者(Standardized Patient)を相手に、実際の臨床場面を想定した課題に取り組みます。全て英語でのコミュニケーションが求められるため、医学知識だけでなく臨床英語力が直接試されます。
合格基準
2024年3月から合格基準が緩和され、14ステーション中9ステーション以上で合格点を取ることが求められます(従来はより高い基準でした)。
受験料(2026年3月時点)
| 受験形式 | 受験料 |
|---|---|
| 対面受験 | 3,000 AUD |
| オンライン受験 | 3,400 AUD |
試験会場
対面試験はメルボルンのAMC National Test Centre(NTC)で実施されます。オンライン受験も選択可能ですが、やや高額です。
受験資格と必要書類
AMC試験を受けるには、以下の資格要件と書類が必要です。
受験資格
- 医学部卒業: WHO/WADSに掲載されている医学部(医科大学)を卒業していること
- EPIC登録: Educational Commission for Foreign Medical Graduates(ECFMG)のEPIC(Electronic Portfolio of International Credentials)に登録し、Primary Source Verificationを完了していること
- 英語要件: 以下のいずれかを満たすこと
- IELTS Academic: Overall 7.0以上(各バンド7.0以上)
- OET: 全サブテスト B以上
主な必要書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 医学部卒業証明書(英文) | EPIC経由でPrimary Source Verification必須 |
| 医師免許証明書(英文) | 日本の医師免許の場合、翻訳公証が必要 |
| パスポートのコピー | 有効期限内のもの |
| 証明写真 | パスポート規格 |
| 英語試験のスコア証明 | IELTS 7.0 または OET B以上 |
| Good Standing証明書 | 現在または直近の医師登録先からの発行 |
書類の準備にはEPIC登録を含めて数か月かかることがあるため、早めに着手することが重要です。
英語要件のIELTS対策については、看護師のIELTS対策ガイドが参考になります。医師の方にも共通する勉強法が多く紹介されています。
AMC Certificate取得までのロードマップ
AMC Certificate取得までの流れを5つのステップで整理します。
Step 1: 英語要件をクリアする
IELTS Academic 7.0(全バンド7.0以上)またはOET全サブテストB以上を取得します。これがAMCへの出願の前提条件です。多くの受験者にとって、この英語要件が最初の大きなハードルとなります。
Step 2: EPIC登録と書類準備
EPICに登録し、医学部卒業証明書のPrimary Source Verificationを完了させます。並行して、Good Standing証明書やパスポートなどの必要書類を準備します。
Step 3: MCQ試験(Step 1)を受験・合格
AMCに出願し、MCQ試験を受験します。Computer Adaptive Testで150問に挑み、パスマーク250/500をクリアします。
Step 4: 臨床試験(Step 2)を受験・合格
MCQ合格後、臨床試験に出願します。OSCE形式の16ステーションで臨床能力を証明し、14ステーション中9ステーション以上で合格点を取得します。
Step 5: AMC Certificate発行
両試験に合格すると、AMC Certificateが発行されます。このCertificateをもとに、Medical Board of Australiaへの医師登録(General Registration または Provisional Registration)を申請できます。
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 1 | 英語要件クリア(IELTS/OET) | 3〜12か月 |
| 2 | EPIC登録・書類準備 | 2〜4か月 |
| 3 | MCQ試験受験・合格 | 3〜6か月(準備期間込み) |
| 4 | 臨床試験受験・合格 | 6〜12か月(準備期間込み) |
| 5 | AMC Certificate発行 | 合格後数週間 |
トータルで1年半〜3年程度を見込むのが現実的です。特に英語要件と臨床試験の準備に時間がかかるため、計画的にスケジュールを組むことが大切です。
海外で看護師・医師として働くための免許書き換え全般については、海外看護師免許の書き換えガイドも参考にしてください。
よくある質問
Q: AMC試験は日本語で受験できますか?
A: いいえ、AMC試験は全て英語で実施されます。MCQ試験の問題文も臨床試験のコミュニケーションも全て英語です。そのため、医学知識に加えて十分な英語力(IELTS 7.0またはOET B以上)が前提条件となります。
Q: AMC試験に不合格だった場合、再受験は可能ですか?
A: はい、再受験は可能です。MCQ試験は年に複数回実施されており、不合格後に再度出願して受験できます。臨床試験も同様に再受験可能ですが、受験料は毎回必要です。回数制限についてはAMC公式サイトで最新情報を確認してください。
Q: Standard Pathway以外のルートはありますか?
A: AMCにはWorkplace Based Assessment(WBA)Pathwayもあります。これはオーストラリアの認定医療機関で一定期間の臨床研修を行い、職場での評価を通じてAMC Certificateを取得するルートです。ただし、WBA Pathwayを提供する施設は限られているため、多くの受験者はStandard Pathwayを選択しています。
AMC受験に必要な英語力に不安がある方は、HLCAの無料カウンセリングで、現在の英語レベルに合わせた学習プランを相談できます。
まとめ
AMC試験は、オーストラリアで医師として働くための重要な第一歩です。この記事のポイントを振り返ります。
- AMC試験はStandard PathwayのMCQ試験(Step 1)と臨床試験(Step 2)の2段階構成
- MCQ試験はCAT形式150問・3.5時間、パスマーク250/500。受験料2,920 AUD(2026年3月時点)
- 臨床試験はOSCE形式16ステーション、合格基準は14ステーション中9以上。受験料3,000〜3,400 AUD(2026年3月時点)
- 受験にはIELTS 7.0またはOET B以上の英語要件とEPIC登録が必要
- Certificate取得までの目安は1年半〜3年。早めの計画と英語対策が鍵
医学知識はあっても、それを英語で発揮できなければAMC試験は突破できません。AMC試験に必要な医療英語の具体的な対策は「AMC試験に合格するための医療英語対策」で解説しています。
また、AMC Certificate取得後のキャリアパスについては、専門医を目指す方は「オーストラリアで専門医として働く方法|SIMG・Short Term Pathway」、就職しやすいルートを探している方は「Area of Needとは?オーストラリアで医師として最も就職しやすいルート」も参考にしてください。
AMC受験の第一歩として、まずは医療英語力の現状を把握することから始めてみてください。
オーストラリアで医師を目指すなら、HLCAの医療英語留学
HLCAは、セブ島を拠点とした医療英語専門の語学学校です。医師・看護師をはじめとする医療従事者向けに、臨床現場で通用する英語力を短期集中で身につける留学プログラムを提供しています。
AMC試験では、医学知識だけでなく「英語で臨床ができる力」が問われます。MCQの医学英語読解も、OSCEの患者コミュニケーションも、一般英語の延長では対応できません。HLCAの留学では、医療現場を想定したロールプレイや医学用語のトレーニングを通じて、試験と実務の両方に直結する英語力を鍛えることができます。
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監修:海仲 由美(Yumi Uminaka)
HLCA代表/医療英語教育者・カリキュラム開発責任者
医師・看護師・薬剤師など医療従事者向け医療英語教育を専門とし、これまでに延べ3,000名以上の医療従事者への指導・研修を実施。
医療現場で実際に使われる英語表現・患者対応・多職種連携に特化したカリキュラム設計を強みとし、病院・クリニック向け教育プログラムや医療英語教材の開発・監修を多数手がける。
本メディアでは、現場視点と教育専門性の両面から、実践的かつ正確な医療英語情報の監修を行っている。




